【完結】もし衛宮士郎がメディアリリィを拾ったらというお話 作:ふりかけ@木三中
「はぁ……はぁ……♡」
部屋の中をキャスターの荒い息が響く。
どれほどの時間が経ったかも分からなくなるくらい幾度となくキャスターの中に精を吐き出して、俺もキャスターもすっかり体は茹で上がっていた。
汗や愛液のせいで布団はジットリと湿っており、先ほどまでの行為の激しさを物語っている。
「流石に疲れたな……ちょっと休むか……」
「はい、私ももう限界です……」
火照った体を冷ますようにパタパタと手で自らの顔を仰ぎながらキャスターがそう答える。
「ほら、水とタオルだ」
「ありがとうございます」
キャスターが汗でへばりついた髪をタオルで拭い、こくこくと小さく音を鳴らしてペットボトルの水を飲む。
女性特有の色っぽさと少女らしいあどけなさを残したその仕草に思わず視線を向けてしまう。
「…………」
「なっ……なんで、そんなジッと見てくるんですか……」
そんなキャスターをぼんやりと見ていると、こちらに気がついたのか恥ずかしげに顔を伏せてしまう。
「いやぁ、なんでって言われても……キャスターが可愛いなぁって思って」
「もう、さっきからそんな好きだとか可愛いだとかいっぱい言い過ぎですよ……」
そんな風に正直に気持ちを吐露すれば、キャスターはますます顔を赤らめてしまう。どうにも彼女は直接的に気持ちをぶつけられることに弱いらしい。
自分でもちょっと好意を明け透けにしすぎかとも思うがキャスターにはきっとこれくらいでちょうどいい。
エロースの矢。
結局のところ、その効果でキャスターが俺のことを好きになったのかは不明なままだ。
だが、もしキャスターの気持ちが植え付けられた偽物だというなら本物にしてしまえばいいだけのこと。
キャスターが俺のことをエロースの矢だとか関係なく好きになってもらえるようにまずはこちらから好意を伝えなくては。
「もう……シロウ様がいきなりグイグイ来るからわたしも流されてしまいましたが今は絶体絶命の大ピンチなんですからね!」
照れにより視線を逸らしながらも、キャスターが俺を諌めるようにそう言ってくる。
だが、俺とてギルガメッシュにセイバーを奪われた今の状況がピンチだと言うことを忘れたわけではないし、何も考えずに呑気にキャスターのことを抱いていたわけではない。
ピンチのこの状況だからこそ、きっとキャスターとの信頼関係は今後の戦いでより重要になってくる。
わだかまりを解消するためにもこうしてキャスターに気持ちを伝えたことは必要だったと思っている。
「セイバーにつけられた首輪自体はキャスターの宝具で破壊できるとはいえ、問題はそれをどう当てるかだよな……操られたセイバー自身の抵抗も考えないとだし」
少し真面目なトーンでキャスターに今後の話を振る。
相手は白兵戦において無類の強さを誇るセイバーと数え切れぬほどの宝具を放つギルガメッシュだ。
キャスターは体術においてほぼ素人に見える……そんな彼女が攻撃を掻い潜ってあの小さな短剣をセイバーに当てることが出来るとは思えない。
「なんとか動きを止められたらいいのですが……セイバーさんには対魔力がありますからねぇ」
「通常の魔術じゃ足止めは無理か……バーサーカーとの戦いの時に使ったあの黒い影の力はどうだ?」
かつてキャスターが見せた黒い影の力。
汚染された聖杯に由来するあの力なら、セイバーを拘束することやギルガメッシュを打倒することも可能かもしれない。
もっともあの力を使えば桜に負担になるし、魔力を補うためにまた街の人々から生命力を吸わなくてはならない。
そんな力を使うつもりはないが、なにか状況を打開する光明になりはしないかとそうキャスターに問いかけてみる。
「そうですね……決まれば確かに、セイバーさんやギルガメッシュにも有効でしょうが、アレは発動までの隙が大きいですからね」
確かに……桜の肉体を中継して聖杯の力を使う影響や、街中から魔力をかき集める都合上あの力を使うにはそれなりの時間が必要だ。
理性のないバーサーカーには当てることができたが、ギルガメッシュがむざむざその隙を見逃すと考えるのは希望的観測が過ぎるだろう。
「直接、あの泥をわたしが取り込むことで汚染された聖杯とリンクを繋ぐという手もありますが……これは流石にリスクが大きすぎますね。おそらく精神が保たずに崩壊してしまうでしょう」
あの聖杯の泥を取り込む……あの呪いの塊を……。
確かに、それで聖杯と繋がることができるというなら桜を中継する必要もなくなるしうまくいけば聖杯の魔力を使用することで魔力量の問題も解決できるかもしれない。
だが、聖杯を汚染しているそれは『この世全ての悪』と呼ばれるような代物なのだ。
そんなものと繋がって力を行使すればまずタダではすまないだろう。
元々使うつもりは無かったが聖杯の泥を使った戦法は却下だな……。
「なら……令呪をセイバーに使うのはどうだ?まだ2画残っている」
そう言って自らの左手に浮かぶ刻印に視線を向ける。
ギルガメッシュにセイバーを奪われてしまったが、マスター権自体を奪われたわけではない。セイバーに対する令呪もまだ有効なはずだ。
「あの首輪はかなりの強制力があるようなので令呪で『こちらに戻ってこい』などのファジーな内容を告げても効果はないでしょう。しかし、『その場で止まれ』などの瞬間的かつ限定的な効果ならあるいは受け付けるかもしれません」
効果を狭めることで首輪の強制力を上回ると言うことか。
令呪の力でセイバーの動きを止め、その隙にキャスターが宝具で首輪を破壊する。
だが、それではできる隙は一瞬……キャスターがその隙をつけるかは分からないし、そんな見え見えの手を使えばギルガメッシュも妨害してくるだろう。
穴だらけの作戦だが……現状ではそれが一番成功率の高い作戦か……。
「あとは、ギルガメッシュを引き付ける別の役もいた方がいいな……」
ギルガメッシュの持つ無数の宝具を展開されてしまえば、もはやセイバーに近寄ることは叶わないだろう。
誰かがギルガメッシュの攻撃を受け止めている間に俺とキャスターでセイバーを解放するというのが妥当なところか。
「アーチャーにも協力してもらうつもりだけど、やっぱりもう少し戦力が欲しいか」
「……………バーサーカーですか」
キャスターが苦々しげにかつて相対した巨人の名前を口に出す。
もはや俺たちとアーチャー以外で残っているサーヴァントはバーサーカーのみだからな、消去法でそうなるだろう。
「バーサーカーには人外じみた怪力と宝具による再生能力がある。ギルガメッシュの攻撃を受けるにせよセイバーの動きを封じるにせよきっと役に立ってくれるはずだ」
敵としては恐ろしい相手だったが、味方にすればこれほど心強い相手もいない。ギルガメッシュの存在はイリヤ達にとっても脅威だろうし、共闘を取り付けられる可能性は十分にあるはずだ。
「個人的にヘラクレスのことは少し苦手なのですが……そうは言ってられませんものね」
キャスターはふぅ、とため息をつくとちょいちょいと宙で指を動かして見せる。
「イリヤさんの居場所を既に把握済みですが……ここからかなり離れた森の中に拠点を構えていますからね。まずは赴く前にこちらから一報入れておきましょう」
そう言うと、パッとモニター画面のようなものが空中に映し出される。
フラフラと視点が揺れながら薄暗い森の中を進む、チラチラと蝶の羽のようなものが見切れて見えるがおそらくキャスターがあらかじめ街中に放っていた蝶型の使い魔の1匹をイリヤのところに向かわせているのだろう。
「さて……イリヤは気まぐれなところがありそうだからな、こちらの交渉に乗ってくれるかどうか……」
イリヤとどう交渉するか言葉を纏めている間にも画面の中で景色は進み、森を抜けたその先に西洋風のお城が見えてくる。
冬木には古い建物も多いがこんなお城なんてあったのか……
「……妙ですね」
興味深げに城を見ていた俺をよそにキャスターが警戒するような声音でそうポツリと呟く。
「何かあったのかキャスター?」
「いいえ、何もありません……それがおかしいんです。使い魔1匹とは言え自らの拠点にこうも近づかれれば何かしらのアクションがあって然るべきなのに」
確かに……キャスターは使い魔の気配を特別消しているわけでもないようだしイリヤもその存在に気付いているはずだ。
ならば敵視して迎撃してくるにせよ友好的に歓迎してくるにせよ何らかの動きがあるはずだろう。
だというのに、それがない。
いや……もしかしたら、できない状況にあるのか……?
「……とりあえず、使い魔を城の中に入れてくれ」
嫌な予感を覚えながらも確認のためにも使い魔を突入させる。
緑豊かな庭園、石造りの廊下を奥へと進むが人の影は見えない。
「イリヤはどこに……」
しばし辺りを探すがこの地の城主であるはずの白い少女はその姿を現さない。
そうして、城の中央の大きな広間に到達した時についに人影が見えた。
「あれは……!!」
そこには倒れ伏す鈍色の巨人とそれを不安げな表情で見つめるイリヤ
そして、それに対峙するように立つギルガメッシュとセイバーの姿があった。
「ギルガメッシュ!もうイリヤ達と戦ってるのか……!」
聖杯を満たす為には他のサーヴァントを倒さなければならない。
故にギルガメッシュが残りのサーヴァントの排除に動くのは当然の流れだ。
だが、奴の傲慢な言動から予測するにもう少し猶予があると思っていた。それがこうも早く行動に移すとは……読みが外れたか。
「ギルガメッシュはセイバーさんに執着していましたし、しばらくはそちらにかまけていると思っていたのですがね。それがこうも早く前線に出てくるとは……」
キャスターも悔しげに歯噛みする。
くそっ、バーサーカーがもしここで倒されてしまえばセイバーの奪還はますます難しくなる。
「ギルガメッシュ……!」
思わず虚空に向かって奴の名を叫ぶ。
画面の中でやつはニヤニヤと笑みを浮かべて地面に伏せるバーサーカーを見下している。その出立ちは以前会った時のような鎧は纏っておらず、現代で手に入るような黒いライダージャケットを身につけている。
ポケットに深々と手を入れリラックスした様子で立つその様子を見るに、バーサーカーとの戦闘に直接的に手を出すつもりはないようだ。
「…………」
今度はギルガメッシュの前に立つセイバーに視線を向ける。
いつもセイバーが身につけていた青のドレスと銀の鎧、だがそこにさらに下品に光る金色の首輪がつけられており、その姿はギルガメッシュの所有物であるということを示しているかのようだった。
「くっ…………」
悔しげに眉間に皺を寄せながらもセイバーがバーサーカーに剣を向ける。おそらく首輪の効果で無理やりバーサーカーと戦わされているのだろう。
「そら、来るぞ。右に避けろ」
地面に伏していたバーサーカーが跳ねるようにその巨体を突き動かし、大剣がセイバーに振るわれる。
その切先がもう少しで触れる……というところでセイバーの体が何かに引っ張られたかのような不自然な動きで右に動く。
「左、右、後ろ、右、右、前、左下、前、下、右、左」
ギルガメッシュの淡々とした指示が響き、それに釣られるようにセイバーの体が動く。
その動きは本来のセイバーの無駄のない洗礼された動きとは違う、出来の悪い操り人形のような硬い動きだ。
にも関わらずバーサーカーの凄まじい速度で振るわれる大剣をすんでの所で全て回避している。
「あいつ、バーサーカーの動きを予測してるんだ……」
狂戦士のクラスであるバーサーカーの動きそれ自体はそう複雑ではない。だが、超越的な身体能力から繰り出される攻撃を全て避けるとなれば至難の技なはずだ。
しかもそれを、まるでレスポンスの悪い格闘ゲームでもするかのようにセイバーに指示を出して避けさせているのだ。数手先のバーサーカーの動きを正確に読み切っていなければこんな芸当はできないだろう。
『ーー全知なるや全能の星』
ギラリと、奴の赤く光る双眸が使い魔越しにこちらを睨む。
その視線に思わず体を強張らせてしまう、アイツ……俺たちが見ていることに気づいているのか。
「我は地上を治める王として特別な眼を神々から授けられていてな」
ギルガメッシュがニヤリと笑みを浮かべながら自らの顔をそっと撫でる。
赤い……鮮血を思わせるその瞳は遥か彼方を見ているように感じられた。
「万象を見通し、未来を示す千里眼……バーサーカーの動きなぞ手に取るように分かる。我としては神々から与えられたこの力はあまり好かんのだがな、余興として使うにはちょうどいい」
千里眼……『王の財宝』だけでも手に負えないっていうのにそんなモノまで持っているのか……。
しかも余興とは、圧倒的な力を誇るバーサーカーとの戦闘さえ奴にとっては余興に過ぎないのか。
「セイバーよ、貴様のマスターはせっかくの献身も無駄にして相変わらずコソコソとネズミのように這い回っているようだぞ、それでもキサマはあの雑種のことを未だマスターと認めるのか?」
「当然だ、首輪による支配は受け入れたが心までキサマに売り渡したつもりはない。私のマスターは変わらずシロウのままだ」
首輪による支配から苦痛に顔を歪ませながらも、セイバーが強い口調でそう断言する。その姿に思わず胸の内に熱いものが込み上げてくる。
「ふん、かような雑種のどこが良いのかは知らんが。それならば我もあえてサーヴァントとしてではなくマスターの真似事をしてやろう。さすればあの雑種がいかにマスターとして不甲斐ないかも分かると言うもの」
バーサーカーに対してギルガメッシュが直接手を下さないことを不審に思っていたが、奴はセイバーのマスターとして一歩引いてこの戦闘を行うらしい。そうすることで、俺よりもマスターとして己の方が優れているのだと証明するつもりなのだ。
「◾️◾️◾️◾️!!」
そんなセイバーとギルガメッシュに対して、バーサーカーは一際大きな雄叫びを上げる。
「…………サーヴァントの中には『冠位』と呼ばれる者がいる」
だが、そんなバーサーカーの殺気を浴びてもギルガメッシュは涼しい顔をして話を続ける。
「獣を撃ち倒す超克者……英雄と呼ばれるサーヴァントの中でもさらに選ばれしものだけがつける頂だ。その条件はいくつかあるが……『魔術師』の『冠位』、その条件は遥か彼方を見渡す千里眼を有していることだ」
『魔術師』の『冠位』……グランドキャスター……。
その言葉に思わず横に立つキャスターに視線を向ける。
彼女の青い瞳は見惚れるほどに美しいが、残念ながら千里眼を有していたなどという逸話は聞いたことがない。
キャスターほどの魔術師でも有してないその瞳で、ギルガメッシュは未来を見透かしているのだと語る。
「この瞳を使ったのは分かりやすく証明する為だ。有象無象の雑種とは格が違うと言うことがよく分かるだろう?マスターとしても魔術師としてもな……」
奴の瞳が僅かに妖しく光る。
バーサーカーの動きを読んでいるのもその千里眼によるモノなのだろう。
マスターとしての俺の戦術眼よりも。
キャスターとしてのメディアの魔術よりも。
自らはより高みにいるのだと知らしめるようにその能力を使用している。
「……右だ」
バーサーカーが地面をはぜるように蹴ってその巨体を弾丸のように突き進ませる。
だが、そんな音速レベルの突進はギルガメッシュの指示によってあっさりと躱される。
それも単に回避しただけじゃない、僅かにセイバーの体に攻撃が掠めるほどの、ダメージにならない刹那のタイミングを見極めてギルガメッシュは指示を飛ばしている。
「!!!!」
ギリギリまで引きつけられた上で攻撃を避けられたバーサーカーはバランスを崩したようにタタラを踏む。
「そらそこだ、聖剣……解放!」
そうして無防備な隙を晒したバーサーカーに、ギルガメッシュが嘲笑うかのようにトドメの指示を下す。
「約束された……」
本来、セイバーの意思によってのみ振るわれる気高き剣が。
ギルガメッシュの指示によって無理やりに振るわれる。
「……勝利の剣!」
セイバー本人の意思が介在していようがしていまいがその威力に変わりはないらしい。凄まじい熱量がバーサーカーの巨大を焼き尽くす。
「バーサーカー!!」
イリヤの悲痛な叫び声が響く。
いかにバーサーカーに再生能力があるとはいえ、セイバーの宝具をこうも至近距離で浴びては……
「……終わったな」
ギルガメッシュの冷徹な声が響く。
果たしてその言葉通り、聖剣の光が消え去るとそこにはもはやあの巨人の姿は見えなかった。
バーサーカー……ギリシャ神話最強の英雄であるヘラクレスはギルガメッシュの操るセイバーによってここで討たれたこととなる。
「さて、その娘には聖杯の鍵として役立ってもらう必要がある。とりあえずは生け取りに……」
そうしてギルガメッシュが視線をイリヤに向けた瞬間、僅かに奴の目が細められた。
「後ろだ、弾け」
キンッと甲高い音が響く。
何事かと目を凝らして見れば、セイバーがヒラリと翻るように剣を振るい自らの背後から飛来した投擲物を撃ち落としていた。
なんだ?攻撃?一体、誰が……
「フェイカーか……」
ギルガメッシュがポツリと呟き、柱の影に視線を向ける。
「……完璧なタイミングでの奇襲だったと思うのだかね」
そうして、柱の影から苦い顔をしたアーチャーが姿を現す。
あいつ……遠坂のところにいるって話じゃなかったのか。
いや、それよりもマズいぞ……
「ふん、確かにバーサーカーを倒したこのタイミングでの奇襲、ここまで気配を悟らせない潜伏スキルは大したものだが……我の瞳に死角はない。残念だったなぁフェイカー」
アーチャーの不意打ちは気取られるような落ち度はなかった。
だが、それだけではギルガメッシュの未来を見通す千里眼を出し抜くことはできない。
そして、奇襲がバレて姿を晒してしまった以上はアーチャーでは勝ち目はない。
「シロウ様!わたし達も加勢に向かいましょう!」
画面を食い入るように見ていた俺にキャスターが叫ぶ。
そうだ……バーサーカーが倒された上にアーチャーまで消えてしまえばいよいよセイバーを取り戻すのは不可能になる。
まだ、何の準備もできていないがここはアーチャーに加勢するしかない。
俺の家からギルガメッシュ達の戦う城まではかなり距離があるが……それまでなんとか耐えてくれよ、アーチャー……。
ギルとセイバーのえちえちエピソードも考えてたんですけどね…
それやると裏でキャスターとえっちしてる士郎最低すぎるなってなりましてね…
そういわけでこの話ではセイバーさんの純潔は守られています
IFルートとかでそのうちエッチな目にあうセイバーは書きたいですね