【完結】もし衛宮士郎がメディアリリィを拾ったらというお話 作:ふりかけ@木三中
「さて、これからのことについてですが……」
家に帰るキャスターがそう切り出してきた。
元々アーチャーやバーサーカーの助力を得て、セイバーを解放する予定だったがそれができなくなった以上計画を練り直す必要がある。
「ギルガメッシュにとって残った敵サーヴァントはわたし1人……ですが、おそらくすぐには攻めてきません」
「ふむ、その根拠は?」
奴の支配下にあるセイバーを除けば、もはや障害はキャスターのみだ。
さっさと俺たちを始末してこの聖杯戦争を終わらせるのが普通では無いだろうか。
「ギルガメッシュはイリヤさんを攫っていきました。それはおそらく彼女を聖杯の鍵として使うつもりなのでしょう」
イリヤが聖杯の鍵……アーチャーもそんなようなことを言っていたな。
「桜さんが聖杯と繋がってその力を得ているという話はしましたね?あれは埋め込まれたかつての聖杯のかけらによるいわば不正アクセスですが、逆に言えば正規のアクセスキーも存在します。イリヤさんはおそらく此度の聖杯の鍵なのでしょう」
キャスターから聖杯に関する詳しい説明を受ける。いままで聖杯というのはぼんやりと伝承に登場するような金の杯のようなものを想像していたが実際はそうではないらしい。
大聖杯と呼ばれる巨大な術式とそれを起動させるための小聖杯と呼ばれるものがあり、その小聖杯がイリヤ自身なのだと言う。
「聖杯を起動させるためにイリヤさん自身のチューニングも必要なはず……これ以上サーヴァントの魂を取り込めば、取り回しも悪くなりますしまずはそちらを優先させるはずです」
なるほどキャスターを倒してその魂を聖杯へ注ぐ前に、まずはその器を整えるだろうと言うことか。
「とは言え、それもそう長い時間がかかるわけでは無いと思います。残された僅かな時間でできることをしなくては……」
そう言ってキャスターは考え込むようにジッと視線を向ける。
「ギルガメッシュを倒すにはあまりにも戦力が足りなさすぎます。街中から魔力をかき集める……いえそれでも足りませんね。シロウ様の投影を今から鍛えてもセイバーさんに白兵戦で勝てるとは思えませんし……罠を仕掛けてそこに……」
ブツブツと案を出しては、自らそれを否定してキャスターは顔色を悪くしていく。
「それならさ……」
そんなキャスターに向けて俺は短く呟く。
「今からデートしないか?」
俺の言葉にキャスターはパチパチと目を瞬かせて、それからガッとこちらに詰め寄ってくる。
「何言ってるんですか!まさかギルガメッシュに勝てないから諦めちゃったんですか!残された短い余生をわたしと過ごしたいってことなんですか!それはかなり嬉しいですけど、セイバーさんはシロウ様を待ってるんですよ!なのにデートだなんて……!!」
う〜、と唸るようにしてキャスターが言葉を捲し立てる。今のセリフがまるで俺が現実逃避でもしているかのように聞こえたのだろう。
「いや、別に諦めたわけでもないし、ふざけて言ったつもりもない。本気でこれが今できる最良のことだと思ってるよ」
「はぁ……わたしとのデートがですか?」
キャスターが胡乱げな目を向けてくるが、構わず言葉を続ける。
「ギルガメッシュがいつ攻めてくるかは分からないが、それまでの短時間で劇的なパワーアップを求めるのは流石に都合が良すぎるだろう。かと言って魔力を集めたり何か罠を張ったりだとか小手先の戦法を用いてもそれが通用する相手じゃない」
ギルガメッシュには未来を見通す千里眼とあらゆる状況に対応できる無数の宝具がある。そこにさらに白兵戦において無類の強さを誇るセイバーもいるのだから生半可な策など用意するだけ時間の無駄だ。
「付け入る隙があるとすればアーチャーも言っていたようにギルガメッシュとセイバーの間にはコンビネーションが無いことだ」
正規の主従である俺たちと無理やりにセイバーを従わせているギルガメッシュ、俺たちに有利な点があるとすれば唯一その点だけだろう。
「付け焼き刃の作戦なんか立てても意味ないよ。それより、キャスターとの信頼関係を深める方がずっとギルガメッシュには効果的だと思う」
「なるほど、理屈は分かりましたが……しかしデートとは……」
「時間があれば、一緒にじっくり特訓したりだとかそういう手も取れたんだろうけどさ。そこまで余裕があるわけでもない。なら、デートでもした方が俺たちの仲を深められると思うんだ」
いまだ難色を示すキャスター、その瞳を俺はジッと覗き込む。
「キャスターは……嫌か、俺とデートするの?」
「っ〜〜もう、そういう聞き方は卑怯ですよ!」
顔を真っ赤にするキャスターから承諾の言葉を引き出して、こうして決戦前のデートが始まることとなったのだが……
さて……ここで一つ問題がある。
それは、俺が今までデートなんてものをしたことがないと言うことだ。
自慢じゃないが今まで彼女もいなかったわけだし、そんな浮ついた経験はしたことがなかった。
とはいえギルガメッシュとの戦いに備えてキャスターと急速に仲を深める必要があるし、それに……実のところこの機会にキャスターに現代のこの世界を楽しんでほしいと言う気持ちもあった。
聖杯戦争だなんて物騒な殺し合いに参加しているわけだけれど、だからこそキャスターには少しでも幸せな経験をして欲しかった。
◇
「さて、とりあえず色々ありそうな新都にやってきたけれど……」
家にいたところで何も始まらないので様々なお店が立ち並ぶ新都へとやってきた。キョロキョロと周りを見渡せば若者向けのオシャレな店などもいくつもあり、そこに並んでいるカップルの姿が見受けられる。場違いに感じてしまうが……今は俺たちもカップルなんだよな。
デートプランを練っている時間など無かったが片っ端からキャスターの好きそうな店に入ってみる事としよう。
「じゃ、行こうかキャスター」
「はい……シロウさま」
そうしてそっとキャスターの手をとって歩き出す、緊張で体温が上がっていることがバレないかと心配だったがキャスターの手はそれ以上に温かく彼女もこのデートにそれなりの心持ちで挑んでいることが見て取れた。
それからキャスターといくつかのお店を見て回った。
服屋ではキャスターが服を試着して見せてくれた、可愛らしい服はともかく露出の際どい服まで見せられた時は目のやり場に困ったが……
次に行ったぬいぐるみショップではふわふわの動物のぬいぐるみたちをキャスターは目を輝かせて可愛い可愛いとぬいぐるみを撫でていた、俺はといえばそんなキャスターの姿を可愛いなぁと思いながら眺めていた。
昼食をとったレストランではキャスターが思案するような顔をしてデザートの苺ケーキを見つめていた、今度作ってくれるつもりなのだろうか。
そんな風に俺とキャスターはそれなりにこのデートを楽しんで、さて次はどこに行こうかと街通りを歩いている時だった。
「ん……どうしたんだあれ、何かあるのか?」
道路の途中で不自然に人だかりができている場所があり、何かあったのかと覗き込んでみる。
「何してんだあれ……危ないだろ」
人だかりの原因は道端の電柱、そのうちの一つによじ登ろうとしている小太りな男がいたことだった。
安全帯もなにもなく柱にしがみついてよろよろと登るさまは素人のそれで、電気会社の作業員か何かというわけではなさそうだ。グラリと体が揺れて落ちそうになるたびに下で見ているギャラリーからハラハラとした雰囲気が流れる。
「おいおい、落ちたり感電したらどうするんだ。まだ日も沈んでないっていうのに酔っぱらってるのか?」
「いえ……そうではなさそうですよ。電柱のてっぺんを見てください」
キャスターに言われて電柱の先端に目を凝らせばそこには1羽の青い鳥がちょこんと座っている。美しい毛並みの小鳥……鳥の種類に詳しいわけではないがおそらく本来は海外に生息しているような種類だろう。
その小鳥に向けて必死に手を伸ばしている男をよく見れば胸に犬の形をした可愛らしいネームプレートを付けており、おそらくペットショップか何かから逃げ出した小鳥を店員が必死に捕まえようとしているところなのだろう。
「おい!そんな電線に近づいたら感電するぞ、降りたほうがいい!」
「バカ言え!この鳥は売れば大金になる貴重な品種なんだ、みすみす逃がせるか!」
男に向かって叫んでみるがまるで聞く耳をもたない、そんな珍しい鳥ならむざむざ諦めるのは惜しいのは分かるが電柱にしがみついた不安定な体勢で手を伸ばす姿は今にも事故が起きそうだ。
「落ちた時用に下にマットでも敷くか?いや、そのまえに電線にでも触れて感電しそうだな……俺が登って引きずりおろすか……って、キャスター?」
思案する俺の横をキャスターが一歩前へ出て、それからそっと手を虚空へと差し伸べる。
「…………おいで」
小さく……しかし優しい声音を含んだキャスターの呟き、その声に惹かれるように今までジッと電柱の先に止まっていた小鳥がパタパタと翼を羽ばたかせて指先へとやってくる。
「いい子ね……」
そんな小鳥をキャスターは優しい瞳で見つめそっと撫でる。
俺はと言えばそんなキャスターの横顔に思わず見とれてしまっていた。
「おおっ、お嬢さんありがとう、捕まえてくれたんだね」
そうしていると電柱から降りてきた男がキャスターの方へとやってきた。
「さっ、その小鳥をこちらに……」
ぎらついた眼で男はそのままキャスターの手に止まる青い小鳥へと手を伸ばし……
「あっ」
思わず出た声は誰のものだったか、キャスターの手からひらりと抜け出ると小鳥はそのまま空高くへと飛んで見えなくなってしまった。
「ごめんなさい……わたしがちゃんと捕まえていなかったから」
「いや……気にしないでくれ。そもそもあの鳥を逃がしたのは俺のせいだ、騒ぎにしてすまなかったな」
男はキャスターにそう告げながらも、高値の品種だったのに…と小さく呟きトボトボとした足取りで去っていった。商品である鳥に逃げられたことは気の毒だがあのままだと怪我してそうだったし、なにもなかっただけ幸運と思うべきだろう。
集まっていた野次馬も事態が収束したと見てこの場から離れだし、それを確認してから俺はキャスターにそっと問いかける。
「あの小鳥……もしかして、わざと逃したのか?」
男が手を伸ばした一瞬、キャスターが小鳥を手放したように見えた。
そんな俺の問いかけにキャスターは薄い笑みを浮かべてこちらを振り向く。
「……シロウ様は、人に飼われる籠の中の鳥を幸せだと思いますか?」
キャスターの青い瞳がこちらを見つめる。どこまでも揺蕩う海のような青い瞳だ。
「鳥は、空を自由に飛び回ることのできる翼を持っています。なのに狭い鳥籠に閉じ込められて窮屈なんじゃないかって……そんなふうに思ってしまったんです」
キャスターの寂しげなそんな言葉が、広がる空へと消えていく。
「ですが……改めて考えると酷なことをしてしまったかもしれませんね。きっと、人に飼われていれば餌に困らず外敵の脅威に怯えることもなく暮らしやすい環境で過ごすことはできたのでしょう。反対に、外に出て自由に飛べたとしてもあっさり外敵に襲われて死んでしまったり、餌にありつけずに飢えてしまうかもしれません」
それは……確かにそうだろう、あの鳥はおそらく日本に生息してるような種類じゃないし環境が合わずに死んでしまう可能性や餌がなく餓死する可能性は高い。
「それになにより……空を自由に飛び回る喜びを知らなければ、そもそも鳥籠の中を不幸だと思うこともなかったでしょうに……」
その言葉にハッとする。
かつて夢で垣間見たキャスターの記憶。
自らの国に籠り、小さな箱庭の中で慎ましい幸せを享受する少女。
そうしてその幸せを捨て去った果てに裏切りの魔女と呼ばれた女の光景が頭をよぎる。
あの小鳥を逃したのはきっと単に哀れに思ったからだけではない、そこに自らの姿を重ねてのことなのだろう。
「キャスターは……まだ、故郷に帰りたいと思ってるのか?」
生前に戻ることのできなかった故郷に帰ること、それがキャスターが元々持っていた聖杯にかける願いだ。
だが、初めに会った日に俺に助けられたキャスターはその願いよりも俺に聖杯を授けることを優先すると語り、迷いのない口ぶりに俺もそんなものなのかと深く考えないでいた。
けれども、先ほどの小鳥を見つめる優しげでそして悲しげな表情を見るに、何の未練もないわけではないのだろう。
そう考えて問いかけたのだが、キャスターは力なく首を横に振る。
「もちろん未練はあります。かつて捨て去った祖国、切り捨てた家族、過ぎ去った幸せ……もう一度戻りたい、やり直したいという気持ちはありますよ、けど……ダメなんです」
僅かに震えたキャスターの声。
話す内容は過去のやり直しを否定するものだがそれは未来を肯定する前向きな気持ちからくるものではない、それはきっと……
「わたしは裏切りの魔女だから、きっとあの時に戻れたとしてもまた全てを壊して台無しにしてしまう。だから……もう戻らない方がいいんです」
まただ……
キャスターの悲しげな全てを諦めたような笑み。
自らを裏切りの魔女と卑下するそんな表情をいままでも何度か見てきた。
誰かに裏切られ、誰かを裏切り続けてきた彼女の生涯。
他人を……そして何よりも自分を信じられず、裏切りの魔女として全てを壊してしまうのではないかという恐怖がキャスターの根底には常にある。
俺はそれをどうにかしてやりたい、キャスターが自分自身のことを信じられるようになって、幸せになることを恐れないで欲しい。
「なぁ、キャスター……俺の夢が正義の味方になることだってのは前に話したよな」
ポツリと俺は自らのことを語り始める。
「はい、聞きました。とても素晴らしい夢だと思います」
「ありがとう、けど……実はそれ、そんな褒められたもんじゃないんだ。キャスターもいつか言ってたな、俺の夢は過去に植え付けられたものだって、あの時はカッとなって否定したけど……うん、今にして思えば割と図星だったと思うんだ」
キャスターは以前俺の夢を、かつての火災で全てを失った俺に切嗣が植え付けた歪なモノだと指摘した。
切嗣のせいにするつもりは毛頭ないけれど、真っ当な夢でないことは俺だって自覚していた。
「かつて……あの火災の中で俺は、助けを求める数多の声から耳を塞いで逃げ出した。そうして切嗣に助けられて……助けた側の切嗣の安堵した顔を見て、俺もこうなれば救われるんじゃないかと、耳を塞いで逃げ出した罪が消えるんじゃないかとそんな風に思ったんだ」
何か高潔な正義感や奮い立つような勇気から俺は正義の味方になりたかったわけじゃない。
俺自身が救われたくて、かつての罪から逃げ出したくて正義の味方を目指した。
浅ましくどうしようもなく汚れていて、だからこそ綺麗な理想に憧れた。
どう言い繕っても、きっとそれは一つの事実だ。
「どうして……」
キャスターの困惑した声。
「どうして……そんなことを今わたしに話すんですか?シロウさまにとっても語りたい話ではないでしょうに」
その言葉に思わず小さく笑ってしまう、かつて俺に黙ってさまざまな暗躍を重ねたというのに変なところでキャスターは遠慮がちだ。
俺がいまこんな自分語りをした理由。
それは一つは不公平だと思ったからだ。
俺はかつてキャスターの真名を令呪を使って無理やりに暴いた、そうして彼女が触れられたくないであろう過去の記憶まで夢を介して一方的に覗いてしまった。ならば俺も自らの醜い部分を曝け出さなければ対等とは言えず、対等な関係でなければ言葉も響かないだろう。
そしてもう一つの理由は……
「人間、そんな綺麗にはできてないってことを言いたくてさ」
正義の味方だなんてご大層な夢を掲げていても、その実は浅ましいものだ。これは別に俺が特別なわけでもなく、大抵の人間は汚れた部分を心の内に抱えて生きているはずだ。
そしてそれは、決して悪いことではない。
「誰しも大なり小なり心の内にやましいものはある……けど、それだけってわけでもないはずだ。同じくらいキレイなものも持ってるんだろう」
正義の味方になるという俺の夢は過去のトラウマに起因するモノなのかもしれない。
けれど、それでも人を助けたいと思った気持ちは本物だ。
俺の夢は確かに歪なモノなのかもしれないが、それ自体はきっと間違いなんかじゃない。
「正義だとか悪だとか綺麗だとか汚いだとか、そんな簡単に割り切れるほど人間ってのは単純なモノじゃないよ。もっと歪で複雑にできているんだと思う」
善しかなさぬ聖人も悪しか犯さぬ罪人もいない。
どちらもあるのが人間で、その葛藤の中で生きていくしかない。
「キャスター……メディアは裏切りの魔女と呼ばれていて、実際そう呼ばれるだけの罪を犯したのかもしれない」
俺の口から発せられた魔女という言葉にキャスターの瞳が揺れる。
生前のキャスターの犯した罪。
祖国を裏切り、愛したはずの男を捨て、自らの子まで殺めた。
それらを神の呪いのせいだと擁護することは簡単だ、けれどきっとそれではキャスター自身が納得しない。
キャスターはかつて罪を犯した。
それはどうしようもない事実なのだから。
でも……
「でも……俺にとってはキャスターは裏切りの魔女なんかじゃない、ただの可愛らしい女の子だ」
キャスターと出会ってからこれまでの日々の記憶が脳裏を走る。
雨の中力なく倒れ一人にしないでと、涙を流すキャスターの姿。
魔力供給のためにと床を共にした時に見た艶やかなキャスターの姿。
制服姿で学校に潜入し自慢げにひらりと回って見せたキャスターの姿。
討伐令を出され、それでも彼女の手を取った時の驚くキャスターの姿。
ギルガメッシュの攻撃で死にかけた俺を見て慌てふためくキャスターの姿。
おにぎりを握って塩の分量を間違える意外と抜けたキャスターの姿。
俺に好きだと告白されて耳まで真っ赤にするキャスターの姿。
そうして先程見せた、小鳥を慈しむキャスターの姿。
「キャスターは裏切りの魔女だなんて呼ばれていて、確かにそう言われるだけの事をしたのかもしれない……けど、それだけじゃないのは俺が一番よく知っているよ。聖杯戦争に巻き込まれて……決して長い期間とは言えないけれどずっとキャスターの横にいたんだから良いとこも悪いとこも知ってるつもりだ」
そこで一度言葉を切って、俺はキャスターを見つめる。
「俺はそんなキャスターのことを全部ひっくるめて好きになったんだから。キャスターがその手を血に染めた罪人だというなら、共に罰を背負いたい。キャスターが孤独を恐れるいたいけな少女だというなら、共に幸せを分かち合いたい。キャスターの過去を抱き締めて、キャスターの未来を見据えて、キャスターと共に……今を歩きたい」
「……シロウさま」
俺の言葉にキャスターはよろめくように僅かにその小さな肢体を傾けて、そうしてジッと俺の顔を覗き込んでくる。
「…………」
そうして、しばしの間互いの瞳を見つめ合い、ゆっくりとキャスターが口を開く。
「シロウさまの瞳は本当にお綺麗ですね……炎のような熱い激情と鉄のように固い意志が込められています」
そっと白く細い指が俺の頬をなぞる。
「……シロウさま、私はかつて2度あなたにサーヴァントとしての忠誠を誓いました」
初めに出会ったその夜に聖杯戦争へと参加するため俺とキャスターは主従となった。
だが、その時はまだ正式な魔力パスも通していない形だけのものだった。
その後、討伐令を出されて逃げる中でなし崩し的に彼女とパスを繋げた。
けれど、その時はまだ互いの心は通じ合っていなかった。
「今、ここで3度目の誓いを行います。あなたと……共に歩むために」
キャスターの小さな手がそっと俺の手のひらに添えられる。
「キャスターのクラスで召喚されしサーヴァント、その真名はメディア……マスターの杖となり、アナタと共に歩む道を照らしましょう」
「なら……マスターとして俺も誓おう。キャスターが俺の杖だというのならば、俺……衛宮士郎はキャスターの剣となり、キミと共に歩む道を切り開こう」
杖と剣。
裏切りの魔女と呼ばれた少女に正義の味方を目指す青年。
正反対で……けれどきっとどこかよく似た俺たちの主従関係が結ばれる。
「俺たち二人ならきっとどんな困難でも乗り越えられる、そのためにまずは……」
そう言って俺はゆっくりと後ろを振り返る。
先程から近づいていた隠す気もない魔力と殺気。
その根源を睨みつける。
「まずはお前から倒させてもらうぜ……ギルガメッシュ!」
金の髪を揺らし、赤い瞳で俺達を見下す男がそこに立っていた。