「しかし軍曹の艦隊は素晴らしいものだったんですね。深海棲鬼らが多数いる群れを相手に損害こそあれど全員が生き残るとは。なかなかです。」
「あり得ない話ばかりでまだ信じられないわ…。あの人怖いし…。」
「そうでしたか。」
「ところで、大事な話ってなんだったの?」
「あれは、私たちにはまだ少し早いものでしたよ。まあそのうちわかります。」
大本営を後にし、鎮守府へ着いてから、どっと疲れが襲ってくる。怯える霞が珍しくて楽しかったというのは内緒である。
「あなた、心なしか楽しそうじゃなかった?」
「そんなわけありませんよ。あんなとこは二度と行きたくないと思っていましたし。」
「とりあえず間宮さんのところで何かいただきに行きましょうよ。」
「はあ…なんか奢ってくれるの?」
「もちろん。」
食事処は暗く、間宮さんの姿が見られなかった。立て札には、
〈現在閉鎖中。御用の方は裏の畑まで〉
「畑?そんなものありましたかね。」
「なんで把握してないのよ。とりあえず探してみましょうよ。」
鎮守府の裏手側には立派な畑が広がっており、そこには様々な植物が植えられており、農作業をする間宮さんがいた。
「精が出ますね間宮さん。」
「あら提督さん。いらしてたんですね。すみません。何も言わずに。」
「いえ。できれば私たちもお手伝いしましょうか?」
「あら、宜しいんですか?」
「ええ。ですよね?霞。」
「まあ構わないけど…何をすればいいの?」
「うーん。とりあえず、この子達にお水をあげてもらえますか?」
「了解です。」
ジョウロに水をため、サラサラと水を与えながら歩く。霞は間宮さんと一緒に野菜の様子を見ている。真剣な表情で覗き込む霞は眩しかった。
「ふむ、このくらいで宜しいでしょうか間宮さん?」
「ええ!バッチリです。それじゃ、何かお作りしますね!」
おはぎやら団子やら、とにかく色々な甘味が次々投入される。勢いが収まり、間宮さんも座り、3人で机を囲みながら味わった。途中妖精さんも参加し、一時パーティのような雰囲気となった。
「久々に騒ぎましたねぇ。腹の具合的には十分です。間宮さん。ご馳走様でした。」
「ご馳走様。」
「お粗末さまでした。美味しかったなら何よりです。」
「そういえば、何やら大きな荷物が提督さん宛で届いていましたよ。」
「ふむ。それは今どこに?」
「司令室に置いてあります。」
「ありがとうございます。」
早速その大荷物とやらの中身を確認する。中身は大量の資源と駆逐艦用の装備が予備の予備まであるんじゃないかと思うほどの物資の山に手紙が同封されていた。
『君が鎮守府に着いてからこの手紙を開いていることだろう。私は君のような人を気にかけたくなるんだ。電報については特に何をいうつもりもない。きっと君はこちらでその旨を話してくれるだろう。一応、開発資材は同梱させているが、君は使うつもりはないだろうな。きっとそんな気がする。そのほかの資源は、私からのほんの気持ちだと思ってほしい。私がその鎮守府にいた頃は碌な補給もされなかったんだ。あまり必要ないと思っているが、資源はあるに越したことはあるまい。鉄鋼、弾薬、燃料、ボーキ、全て1000個ほど送らせてもらった。老人の道楽というやつさ。こうして若い世代の成長を見届けるのが趣味なんだ。秘書艦の練度を早く99にしてあげなさい。私からは以上だ。』
「全て見透かされているようで嫌ですねぇ。まあ受け取れるものは受け取りますが…開発資材はいりません。廃棄しましょう。」
「何してんの?開発資材捨てちゃダメでしょ。」
結局開発資材は霞によって使用され、新たな艦娘が入ってくることとなった。
「霞ィ。こんなことして、私は新しい艦娘なんて建造しないと言ったでしょうに…!」
「なんで怒るのよ。別にいいじゃないの。」
「よくありません!霞がいるだけでいいんです私は!そこにどなたか別の方が現れてもその方に対してうまく接することができるとは思いません!」
「そんなのあなた次第じゃないの!ほら、しゃんとしなさいよ!こんな口論してる間に建造終わったらしいわよ!迎えに行きなさい!」
「うぐぐ…。」
「特型駆逐艦曙よ。って、こっちみんな!このクソ提督!」
「曙、曙ですか…。」
「さっきから黙りこくって何してんのよ!」
「あなたはうちで2番目の艦娘となります。初期艦の霞と仲良くしてあげてくださいね。」
「あっそ。ところであんた、その腕どうしたのよ。」
「これですか?なにって」
袖をひらりと持ち上げいう。
「もげてるんですよ。」
曙の目がさっと暗くなったのを確認すると、自然と笑みが溢れ、曙からはそんな私を不快なものを見る目である。
「霞〜!」
「そんな大声で呼ばなくても聞こえるわよ。」
「曙にここの説明をしてあげてください。」
「いいけど…まさか変なことしてないわよね?」
「そんなまさか、変なことなんて…ねえ?」