「曙…本当にやるの?」
「きっと喜んでくれるわよ?」
彼の軍服を制服の上から羽織り、帽子をかぶせられる。だぼだぼで彼との対格差が顕著にわかる。確かに今の私はこの服を存分に堪能している。袖が余って地面に向かって垂れ下がっているのがすごく唆る。
「じゃ、後1分くらいらしいから。頑張って待っときなさい。」
「あ…え…?」
「加賀の様子見に行かなきゃいけないの。ごめんね。」
そういって玄関に私を一人置き去りにした。あと1分?さっきちょっと話すので時間使ったから…40秒くらい?バクバクと心臓が跳ねてうるさい。ただ、足がすくんで動くことができない。ギイと扉が鳴いて、光が差し込んでくる。ゆっくりと輪郭をはっきりさせ、それに比例するように私の鼓動が勢いを増していく。
「ただいま戻りまし…た?」
「あ…ちが…これは…」
彼が目を見開いて私のことを凝視している。その視線の動きは頭から足先までをじっくりと見やり、同時に私の羞恥心を増幅させる。
「これはいったい…」
遂に彼が口を開いて、私に確認する。
「あの、曙がね、きっと喜ぶって言って…」
「なるほど…。3日程休暇と好きなだけボーナスをあげましょうか。」
「え?」
「ああ、こちらの話ですから。あまり気にせずに。」
そう言って私のことをそっと抱き上げ、自室へ向かう。
「あの…ごめん…。あんまり…」
「大丈夫。あなたをできる限り愛で尽くすだけですから。」
ベッドに腰掛け、私を膝の上に座らせる。彼が私を抱き締め、頭を撫で始めた。帽子越しに伝わる刺激が心地よく、なんとも言えない気持ちになる。羞恥心もあるけれど、同時に強い満足感もある。たった1日会えなかっただけでも、やっぱり彼も心細かったんだろう。そして、彼の少し汗をかいたと思われるニオイが鼻の中に侵入し、軍服からもほぼ同じものを感じ取ることができる。
「司令官、私も…抱きしめたいの。ダメ?」
「…だめじゃないです。」
そう言って私の身体を半回転させ、向き合う形にする。彼の背中を抱く感覚は、やはり心地よかった。それと同時に涙が溢れて、止まらなくなった。やっぱり私も参っていた様で、先ほどまではわからなかったこの気持ちが、今は痛いほどに突き刺さる。そっと撫でられる背中の感覚はきっと忘れることはないだろう。やがて涙も止まって、気分も落ち着いた頃。
「霞のこと、大好きなんですよ。」
「知ってる。」
「ですから、さっきあなたのその姿を見た時は驚きましたよ。」
「どういうこと?」
「あんまり可愛かったので…」
顔が熱くなってくる。彼が私の顔をそっと覗いてくる。薄く笑みを浮かべて、私の額に唇を当てた。唇の柔らかさが額に強く残って、熱が籠る。
「ずるい…」
「そんなことありません。恨むんなら、私に惚れられたことを恨みなさい。」
「…むり。」
彼は満足そうに頷いて、撫でるのを再開した。この人に撫でられると、全身の力がすぐに抜けて、強い脱力感に襲われる。それと同時に変な気持ちがどんどん強くなって、物足りなくなる。下半身が熱を持ち始める。
「司令官…あの…変な気分になっちゃって…」
「ん、ならもう少し我慢してください。」
「うぅ…」
この会話の最中も彼の腕は動き続け、私を焦らし続ける。今は腰のあたりを義手がやさしく包むように抑え、右手で私の頬をつんつんと刺している。指先ではなく、指の腹…柔らかい部分で押されるので痛くはない。しかし、そればかりでは私も嬉しくない。もう少し強くしても構わないのに。
「うぁっ?」
突然身体を抱き寄せられ、彼との密着度が急激に高まる。縋るように私の身体に絡みつく彼の腕が愛おしい。腕に力が込められ、ほんの少しの痛みと多幸感に包まれる。そして、近くなったおかげで彼の香りが鼻腔に飛び込んで、その勢いのまま彼が私とベッドに寝転んだ。