「曙。今日は何するんですか?」
「特に何も考えてないのよね。加賀は何かある?」
「いえ、私も特には…」
本を読む曙になんとなしに聞いても返ってくる返事は期待とは違う。ご飯は既に頂いたので食べると言う選択肢もない。釣りはあまりする気はなさそうで、何度か読んだ本もすぐに机に置いてしまう。
「んー。暇なら柳田提督のとこでも行ってみる?もしかしたら行けるかもしれないし。」
「柳田…逞しい肉体美のあの方ですか?」
「そうそう。遠出したことないでしょ。連絡入れてみるわ。」
「赤城、今度の作戦についてなんだが。」
「ああ、軍曹殿の仰っていた例の作戦ですか?」
「そうだよ。これには、是非赤城が旗艦となって欲しいんだ。」
「私が…いえ。全力で参ります。」
「ありがとう。編成については…金剛と大和は確定で。他の娘については赤城が選んで欲しい。」
「了解です。早速編隊してきますね。」
丁寧なお辞儀を僕に見せて、執務室を後にする赤城はまさに大和撫子と呼ぶに相応しいと思った。まだ机の上に残っている書類を手に取り、面倒な執務を進めようとしたまさにその時。机の上の固定電話が鳴り出した。受話器を手に取り、誰からなのかを知ろうとする。
「はいもしもし。こちら呉鎮守府所属柳田ですが。」
「もしもし柳田提督?今って時間大丈夫かしら?」
電話の主は曙だった。しかし、僕と面識があってかつ僕にこれほどフレンドリーに話しかけれる曙は先輩のところ以外ないだろう。
「あぁ、まあ忙しいってほどでもないよ。何かな?演習でもするのかい?」
「違う違う。そっちに今日お邪魔してもいいかしら?」
「見学ってことかい?」
「まあそうなるわね。私と加賀がいかせてもらいたいんだけれど。」
「うん…まあ構わないよ。それほど遠い距離でもないしね。なんなら迎えに行こうか?多分その方が早い。」
「あら、そんなのまでしてもらっちゃっていいの?」
「もちろんだよ。少し待ってて欲しい。」
「了解。ありがと。」
受話器を置いて、しばらくいなくなる旨を紙面に書いて執務机の上に置いておく。
「じゃあ加賀、"外で"待っときましょ。」
「なぜです?」
「二人のあんな声聞かせらんないでしょ。」
「え?声なんてしませんけど…。」
「違うの。あの人規格外だから。人間として見ちゃダメよ。」
曙に促されるまま外に出る。二人で波止場に並んで立つと、曙と私の体格差がはっきりとわかる。目の前の視界いっぱいに広がる海が太陽光を反射し、私たちにキラキラと水面の輝きを届ける。
「加賀、あんたそういえば艤装持ってる?」
「えぇ。一応はありますけど。」
「ならいいわ。多分海の上を行くことになると思うから。」
水の上を滑る音が遠くから聞こえ始めた。私たち艦娘の艤装と似ているそれは段々と大きくなって近づいてくる。
「例の人ですかね?」
「多分そうよ。」
私たちの立っている波止場に寄せて止まり、中からのっそりと大男が出てくる。
「やあ。」
「案外普通の登場ね。てっきり海の上を走ってくるかと思ったわ。」
「まだそこまでは行けないよ。」
「いかなくていいのよ。」
「本日はよろしくお願いします。」
「うん。じゃあこの船についてきて欲しい。あ、艤装はあるかい?」
「もちろんよ。ほら、ちゃんと誘導してくれるんでしょ?」