「結構早いんですね。」
「あまり離れていないからね。この船ならあっという間だよ。」
「加賀はいつまで私の手握ってんのよ。」
「そう言いながら君も握っているように見えるけど?」
「目の錯覚よ。」
数十分程度海を滑ると呉鎮守府に着いた。かなり大きく、ちらほらと艦娘もいることが確認できる。
「お帰りなさい。あなた。」
「あ、赤城。」
「あんたなんも言ってなかったの?」
「少しお話がありますので…あなたたちは金剛に案内してもらってくださいね。では、行きましょうか、提督?」
「やめてくれ赤城!そんな目で見ないでくれ!」
巨大な柳田提督がまるで小動物のように錯覚するほどの赤城の迫力に気押される。連れて行かれる彼を見届けると、正門から金剛が走ってくるのが見えた。
「お二人ともー!いらっしゃいデース!」
「お出迎えありがとね金剛。今日はよろしく。」
「よろしくお願いします。」
「二人とも仲がいいんですネー。」
「そうかしら?」
「なかよし…いい響きです。」
「ウフフ。仲が良いのは良いことデース!」
「さて、どこから案内しましょう。」
正門を潜って鎮守府に入ると、ザワザワと大勢の艦娘の話し声が聞こえた。
「随分賑やかなんですね。」
「そうですかー?これがいつも通りだと思いますけれど…。」
「うちはみんな集めてもクソ提督、霞、私、加賀、間宮さんと妖精さんくらいだからね。そりゃ多く感じるってものよ。」
「よく運営できてますネ…。」
「案外回るもんよ。」
雑談をしながら廊下を進む。扉が多く、その名札のところには『駆逐艦』やら『倉庫』やらそれぞれの用途に合わせて細かく分けられているらしかった。
「あ!曙ちゃんに加賀さん!お久しぶりです!」
「吹雪じゃないの。元気だった?」
「ええ!おかげさまです!」
「あの時はごめんなさいね。あまりに楽しかったもので…。」
「いえいえ!お気になさらず!では!私は行きますね。」
「うん。また。」
そう言って吹雪が少し駆け足であたしたちの反対方向に走った。
「あの子も元気よねぇ。」
「ええ!うちの鎮守府では元気がモットーですから!」
「うちは…何かしらね。いかに楽できるか?」
「あのストイックさで何言ってるんデス…。」
「あ、空母の部屋ってあるの?」
うちの鎮守府は加賀以外に空母がいないし、空母向けの訓練できるような施設が設置されていないので、加賀が自主練できるようなタイミングがほぼないし、あたし自身他の加賀を見て見たいというのもある。
「もちろんデース!早速弓道場にgoデース!」
「ほら加賀。あんたも行くのよ。」
「あ…。」
加賀の手を握り、一緒に向かう。握った手がいつもより熱いような気もしたが、きっと気のせいだろう。
「むむ!ぼのたん発見ですぞ!」
「はぁ?何言ってんのよ。」
「あ、ほんとだ。曙ちゃんが加賀さんの手を握ってる…。」
「潮まで…あたしはここにいるでしょうが。」
「じゃあ見間違いってことかな?」
「そんなことあるのかなぁ?」
「なんにしてもこの漣、気になったことはなんでも知りたくなっちゃうんだなぁこれが。」
「良いからさっさと演習場行くわよ。」
「早く来ないと置いてっちゃうよ〜。」
「ああ!みんな置いてく!七駆の友情はそんなものですかぁ!?」
「うっさい。」
「ここが弓道場デース!私は出禁だから出口で待ってマース!」
「出禁って…一体何したのよ。」
「鳳翔と緑茶か紅茶のどちらが美味しいかで論争していたら空母の方々が牙を剥いてきまして…流れで出禁に…」
「くだらないわねぇ。」
「そんなこといいんですよ!ほら、ノックして静かに入るんデス!」
扉が開いて、仲から髪を一つに纏めて赤色の着物と紺色のスカートを履いた背の低い女性が険しい表情で顔を覗かせた。
「金剛さん。出禁だと言ったでしょう。お静かにお願いします。ってあら?」
「どうも。お邪魔してるわよ。」
「…お邪魔します鳳翔さん。」
「まあまあ。加賀さんと曙ちゃん。ぜひ上がっていって。」
加賀と私を見てすぐににこやかな表情になり、奥の方へ案内してくれた。