「さ、さ。ここに座って。今お茶持ってきますから。」
「あ、ありがとう…。」
「お邪魔します。」
弓道場の隅に備え付けられた卓袱台とそれを囲むように置かれた座布団の上に腰掛ける。ちらほらと弓を弾いている空母もいる。
「加賀もやってみたら?」
何気なく言うと少しうれしそうな顔でこちらを見た。
「いいんですかね?」
「大歓迎よ~。」
お茶をたてた鳳翔さんがお盆から卓袱台に置く。
「では失礼します。」
ふんふんと鼻を鳴らして少し興奮気味に向かっていく姿は子供の様で少しほほえましく見えた。
「曙ちゃんもお茶どうぞ。」
「あ、頂くわね。」
一口飲むと、緑茶の匂いと特有のクセのある味が広がって、勝手にほっと溜息が出た。安心するようなどこか懐かしさを感じる味わいだった。
「お気に召したようで何よりです。」
私の表情から全てを察しているのか、はたまた心が読めるのか言葉を交わさずとも理解してくれる。
「あなたたちってお友達なの?」
「どういうこと?」
「あ、別に言いたくないならいいのよ?でも…あんまり近くにいるものだから…。ここではあまり見ない組み合わせっていうこともあるし…。」
「そうだったの。ま、友達ってほど浅くないとだけ言っておくわ。」
「あらあら。」
口元に手を当て、ふふふと笑う彼女は余裕を醸し出し、全てを受け入れてくれるような安心感がある。
「それにしても…本当に楽しそうに弓を射るのね。あの子。」
「あらかたあたしにいいとこ見せたいってとこじゃないかしら?」
「仲良しねぇ。」
「あげないわよ?」
「誰もとりません。」
「わかんないわよ?結構可愛いとこあるんだから。」
「どの辺り?」
「夜なんて…」
そこまで言いかけたところで横槍が入った。
「鳳翔さん?あそこに私が見えるのですけど。一体いつ着任したんです?それに、曙はいつここにきたんですか?空母ではありませんよね?」
髪の毛をサイドで纏め、青色の襷をかけて、周りの空母に比べると少し背の低い青のスカートを履いた艦娘。加賀だった。
「加賀さん?二人ともお客様よ?威嚇しちゃダメ。」
なんだか機嫌が悪そうな加賀はどうやらここに所属しているらしい。穏やかな鳳翔さんとは対照的に攻撃的な性格らしい。こういう加賀もありかもしれない。ふんと鼻を鳴らして歩いて行った。
「ごめんなさいね?普段はいい子なんだけれど…。」
「別に構いやしないわ。ほんのちょっと面食らっただけだから。」
少し冷めたお茶を飲み干して加賀の方に目をやると、どうやらここの加賀に詰められているらしい。同じ顔が並んでいるはずなのに、その二人は全く異なる表情を見せている。方や威圧感のある顔。方や怯えながら後ろに下がろうと少しすり足でいる。
「いいわね…。」
「早く助け舟を出してあげないと!」
「待って。あともう少しだけ。」
「んもう!」