「加賀ー。大丈夫?」
「二人とも!喧嘩はダメです!」
「「喧嘩?」」
二人が一緒にきょとんと呆けた顔でこちらを向いた。
「あれ?口論してたんじゃないの?」
「いえ…弓の射る姿勢を教えてもらっていただけです。」
「じゃああの顔は?」
「顔?」
「怒られて怯えてたんじゃないんですか?」
「鳳翔さん…私ってそんなに怒っているように見える顔ですか?」
「私表情を作るのが苦手で…。」
つまり、ただ教えてもらっていただけらしい。後ろに引いたのも射ち方の手本を見せてもらおうとしていたらしい。とんだ勘違いである。
「ごめんなさいね私ったら…。」
「教えてもらうってんならあたしにかっこいいとこ見せてよね。」
「も、もちろんです!」
「ほら、私。さっさと始めますよ。」
そこからは嘘のように静かな時間が流れた。加賀は的を狙いながらも隣の加賀から技術を見て盗んでいる。あたしと鳳翔さんは二人の矢を射るところを静かに見守った。どすっと真ん中に命中させる加賀と、ギリギリ的に当たるものの中心とはかけ離れたところに命中する加賀。後ろからだと表情も息遣いも考えていることもわからないけれど、今はあの二人にしかわからない時間が流れている。それからどれくらいの時間が経ったか。二人が腰に手を当て、一息ついた。
「まあ、これくらいでいいでしょう。これからも慢心せず、日々励むように。」
「ありがとうございました。」
「終わったみたいよ?」
「加賀さんたち随分楽しそうだったわねぇ。」
突然鳳翔さんが訳のわからないことを言い出した。あたしには緊張していてとても楽しそうには見えなかった。二人からは鬼気迫るような圧を感じた。同じ空母として通じるところがあるのかもしれない。
「加賀、終わったならここでるけど。どうしたい?」
「私は…曙についていきます。」
「そ、じゃあ出るわよ。」
「二人とも、ありがとう。」
「精進しなさい。」
「失礼しました。それと、ありがとうございます。」
弓道場の扉を開け、外で待つ金剛に合流する。
「お二人とも〜。長いデース。」
「案外楽しくてね。」
「やりました。」
「ま、いいですけどね。さ、次行きますよ!」
「提督?なぜ断りも無しに外出したんですか?心配したんですよ?」
「申し訳ない…。」
「謝罪の言葉が聞きたいわけではないんですよ?」
こうなってしまった赤城は止まらない。もっとも僕が悪いので何も言えないわけだが。
「あなたはこの鎮守府において最高位の方なんですよ?そういった軽率な行為は控えていただかないと…って、聞いてますか?」
「ああもちろん。愛している人の言葉を聞き流すなんてこと、あるわけないだろう?」
「んな…!調子いいことばかり言ったってお説教は終わりませんからね!」