「さてこれから鎮守府正面海域へ出撃します。駆逐艦くらいしか出ませんが、お二人は初めての実戦ですので、私も同行します。では!let's goデース!」
「なんか緊張してきたわ。」
「曙、いざとなれば私を頼ってください。」
「あたしの方が練度自体は上よ。」
初めて深海棲艦との戦闘をする。加賀は前の記憶があるらしいけど、実際戦闘は今の身体になってからは初めてだからどうなるかは未知数。金剛が手助けしてくれるらしいからその辺りは心配しなくてもいいのかもしれないけれど、やはり不安は残る。
「お二人とも〜。そろそろデース!気を引き締めてくださいネー!」
「加賀、艦載機よろしく。」
「了解しました。正面、駆逐イ級1。可動機発艦始め。」
矢を射るとそれが艦載機になって飛んでいく。いつ見てもその瞬間は心躍る。エンジンが唸りを上げてイ級に突っ込み、爆撃を行う。イ級は一機も落とすことなく沈んでいった。
「やりました。」
「はー。なかなか強いのね空爆。」
「曙の実践経験は積めませんでしたネー。」
「次はあたしがいくわ。やってみたい戦法もあるし。加賀は金剛の近くで見といて。」
「わかりました。」
「さて!羅針盤を回しましょう!」
金剛の掌の上に乗っている大きな羅針盤ががらがらと音を立てる。妖精さんがその動きを止め、方向を示す。
「ふむ。ボスマスではありませんか…。」
「ボスマス?何それ。」
「主力艦隊のことデス。深く考えない方がいいですよ。テートクが言ってたことデスカラ。」
金剛が迷いなく羅針盤によって導かれる。それに続いて私たちもその場所へ向かう。
「あ!見えましたよ!駆逐イ級2デス!」
「じゃあ行ってくるわ。あと、くれぐれも邪魔なんてしないでよ?」
「?わかりました。」
念押ししてから敵艦隊の方に向かう。少し昂る気持ちを抑えて深呼吸し、最大船速で突っ込む。向こうもこちらに気づいたようで、口のような部位から主砲を出した。打ち込まれるであろうその瞬間に足の艤装の可動を停止させ、海の中に潜る。水中電探の反応を見つつ再起動させて奴らの方に向かう。前の演習の時よりも少し深めに潜って軌道を読まれないようにする。あちらはどうやら困惑しているようであまり動いていない。音がくぐもって聞こえにくいが、主砲はすでに打たれたらしい。
(この辺りかしら…。魚雷発射!)
4連装酸素魚雷が勢いよく突っ込む。進んでいた方とは逆方向に行き、爆風から逃れる。海から上がり、奴らの思考を妨害する。やはり動きが止まり、その瞬間に魚雷が命中する。ズドンと大きく爆破し、二隻とも沈んでいく。初めて実戦で行うにしてはうまく行ったと思う。
「曙!なんなんですか今の戦法は!危険すぎデス!」
「なかなか有効でしょ?」
「そう言う問題ではありません!駆逐艦は駆逐艦らしく主砲を撃ち込んだり魚雷を敵の軌道上に海上から打ち込むんです!海中からの魚雷は潜水艦の仕事デス!」
ものすごい剣幕で迫られる。金剛のこんなところは初めて見たけれど、この怒りはあたしを心配して言ってくれることだとわかる。
「…わかったわ。ただ、この選択肢がなくなったわけじゃないってことは理解しといてほしいわ。」
「…まあいいです。とりあえず早く戻りましょう。お風呂に入って身体を温めないと風邪をひいてしまいますカラ。」
「なあ君ら。なんか距離感おかしいんと違うか?一応客人としてうち来とるんやけど…」
「そうですかね?」
「いやだって霞の目ぇ見てみいや。ハートになってんで。うちの方なんて全く見とらんし。」
「目の錯覚でしょう。」
「司令官…放置しないで?私の方見て…?」
「ほれ!そういうとこや!」
「はて…全くわかりませんが。」
「とぼける必要ないやろ!」
お楽しみ中になぜか来た龍驤を招き入れた矢先にこの文句である。
「めんどくさそうな顔すんなや!今日は色々言伝貰ってきとるんや!」
「言伝ぇ?また面倒くさそうなことを…。」
「いいから聞けぇ!」
ええか?暫くしたら大本営が深海棲艦を一気に叩きに行くんや。所謂大規模作戦やな。深海棲艦が蔓延っとる海域を取り返しに行くで。そんときに全鎮守府に協力を要請させてもらう。それはここも例外やない。何が言いたいかっていうと、心の準備しとけってことやな。みんな練度は高めやし少し不安な加賀も後方から艦載機飛ばすのに専念してれば足引っ張ることもないやろしな。
「ですって霞。深海棲艦と戦うみたいですよ。」
私の方に身体を擦り付けていた霞が動きを止めてゆっくりと顔を上げ、龍驤の方に顔を向けた。
「…本当なの?」
「うちは嘘はつかへんよ。」
「司令官本当?」
「まあそうなるでしょう。私も流石にこういう大規模作戦には逆らう気になれません。」
霞が不安気な顔を見せながら私に抱きつく。
「やだ…。」
「嫌って言ってもなあ。うちに言われても困るわぁ。軍曹さんに直接お願いしなあかんよ。それでも、許可はされんと思うけどな。電も出るらしいで?」
「霞、諦めも肝心です。」
「司令官まで酷いこと言うの…?」
「私だって嫌ですよ霞にそんな危険なことさせるなんて。」
「もちろんキミも指揮とるんやで。」
「やっぱりやらなきゃダメですか…。」
「当たり前やろ。だってここの提督さんはキミやろ?あ、例の戦艦は使ったらあかんで。あくまで後方で指揮するのに専念するんや。」
「私前線指揮のブランクありすぎてもう何してたか覚えてませんよ?大体現役でもなんとなくでやってただけですし。」
「…とりあえず決定事項やから。まあ軍曹さんに文句言いや。うちからもちょっとばかしフォローは入れたるわ。」
「私霞の相手しかしませんよ?それでいいですか?」
「良い訳ないやろ。ちゃんと仕事しんと即除籍されてまうで?」
「それは流石に無視できませんねぇ。私ここ以外でやっていける気しませんから。まあ、やるとなったらやらせていただきます。」
「そかそか。ならよかったわ。じゃ、うちはもう行くわ。」
「司令官。続きしよ?」
「キミら昼間っからお盛んやなぁ!」
「霞、龍驤が帰ってからですよ。」
「夜にやれや!とりあえず伝えたからな!心構えしときいや!」