「今からここについて説明していくから、よく聞いておいてちょうだい。」
「わかったわ。」
「この鎮守府は、すでに制圧された海域にあるの。深海棲艦らは基本来ないと思ってほしいわね。」
「え?」
「しょうがないじゃない。あの提督が軍曹から直々に言い渡されたんだもの。」
「じゃ、じゃああたしたちはあのクソ提督を介護しなきゃいけないっていうの!?冗談じゃないわ!」
「私と同じこと言ってるわね。まあすぐなれるわよ。あと、たまに演習や周辺海域の警備もするからね。」
「部屋は私と同じところ。ほかのところを使いたいなら掃除と備品の取り替えが必要になっちゃうから。」
「そこは別に文句ないわ。」
「あと、ここには浴場があるの。私は提督のサポートで一緒に入るから、嫌ならタイミングをずらしなさいな。」
「…え?あんた自分で何言ってるかわかってんの?」
「もちろんよ。」
「なんで一緒に入るのよ。理解できない。」
「あんたねえ、提督だって人間よ?毎日風呂に入るし、そこくらいしか汚れは落とせないの。それなのにあんな腕じゃどう考えたって洗えないでしょ。ここにいる以上は私たちの上に立つものとして身なりは整えてもらわないと。」
なんでこうも風呂だけでこんなに争えるのかは私が男だからわからないのだろうか。
しばらくの口論の末、曙が先に入ってから我々が入るということになった。
「曙。釣りでもどうです?私の趣味なんです。付き合っていただけますか?」
「なんであたしが付き合わなきゃいけないわけ!?迷惑だわ!」
「では私のみで行かせてもらいます。」
「待ちなさいよ!行かないとは言ってないでしょ!どのポイントで釣るの?」
「今は少々遅いですが、まあ堤防あたりで探照灯でも照らしながら釣りしましょう。」
「で?あたしを誘うってことは釣竿は2本あるのよね?」
「ええもちろんですとも。コレクションを貸しますよ。」
「会ったばかりなのに、あんたらもう仲良くなったのね。」
「もちろん霞も行きますよ!」
「はいはい。」
堤防に着くと、波は変わらず穏やかで、釣りには最適だった。そのまま気の済むまで釣り糸を垂らしていた。
「曙は大量ですね。」
「あんたは1匹も釣れてないじゃないの。」
「こんな日もあります。今日はお開きにして、間宮さんのところで歓迎会でもどうです?」
間宮さんに事情を説明すると、
「今日は嬉しいことがいっぱいだわ〜♪」
と言ってぱたぱたと厨房に入っていった。
「曙ちゃんの釣ったお魚たち、使わせてもらいますね〜。みんな生きがいい子ばかり〜!」
「あんなに楽しそうな様子は初めて見ますねぇ。」
「ええ。よっぽど嬉しいとみたわ。」
大量の魚料理が運ばれ、若干引き気味な曙をよそに食べ始める。
「やはり間宮さんの料理は格別ですね。曙の釣り上げた魚、なかなか立派ですし。」
「そりゃそうでしょ?あたしにじゅーぶん感謝しなさい!このクソ提督!」
嬉しそうに罵倒する曙に複雑なものこそ感じるものの、曙は前の鎮守府からずっとこうだったということを思い出した。
「霞、曙。明日は演習がありますよ。前回同様、あなた方の満足いくまで演習して良いとのことです。」
「了解したわ。じゃあ曙。明日はさっきの通り演習があるから準備は怠らないようにしなさい。」
「わかったわ。でも、気の済むまでってどういうこと?」
「それは私から説明しましょう。私の後輩が親切で計らってくれた演習です。前回は霞が何時間と続けていましたが、それでもずっと付き合っていただけました。今回は2人ということで旗艦が重要となります。霞、よろしくお願いします。」
霞はこくりと頷く。
「でもここはあまり資源がないでしょ?消費した弾薬や燃料の補給はどうするのよ。」
「なんとそちらも相手側の負担です。ありったけ戦って、資源を枯渇させるほど演習してあげてください。」
「悪い笑顔ね。」
「まさか。あちらの好意にあやかっているだけです。私は別に、なーんにも悪いことはしていません。」
「碌でもないクズ提督ね。」
「私はそれにあやかってた側だから特に何も言えないわ。」
そんなことを話しているうちに料理は机から消えた。
「「「ご馳走様でした。」」」
「はーいお粗末さまでした。」
「じゃあ曙。先に風呂に入ってきてください。着替えはおそらく脱衣所にあると思いますので。」
「言われなくても入るわよ!ぜっっったい!覗くんじゃないわよ!」
「今の私は霞に夢中なのでそんなことしませんよ。」
「なっ!///」
顔を赤面させる曙とやれやれといった表情を浮かべる霞の対比が面白かった。