「またあんたらの世話になるとはねぇ。とにかくありがと。」
「どうもありがとうございました。」
「別に構わないわよ。しっかし結構近いわねぇ。」
「たまに来てみようかな?」
「朧ちゃんダメだよ…。」
「夜だってのに安心できる海ですなあここは。」
日が沈んで間もなく鎮守府に着いた。七駆の方々が親切に護衛してくれたおかげで安全に帰ることができた。あちらの提督の愚痴だったり面白かったことだったりを聞いて退屈もしなかった。
「じゃあねあんたたち。また行くかもしれないけどそん時はよろしく。」
「うむ!」
「じゃあね!」
「ほら曙もなんか言わないと…あ、ありがとうね!」
「…ふん!」
「あたしってめんどくさいわね。」
「そうでもありませんよ。」
「聞こえてるわよ!」
夜も更け、足元が暗く見づらい。月明かりと鎮守府の窓から漏れる灯りが私たちの行く道を照らしている。正門をくぐり、石畳の道を歩く。曙の方を見てみると夜の闇の中に特徴的な紫の髪色がよく映えていた。今の季節は春。清少納言によれば明け方が良いらしいが、今の私にはこの夜こそが素晴らしいものだと思う。隣には小さいながらも力強さを持つ少女が三つ編みと鈴を揺らしながら歩いている。
「ん?何見てんのよ。」
「いえ…何もありません。」
暗くてあまりよく見えないけれどおそらく今の曙は私のことを疑り深い目で見ていることだろう。
「帰ったわよ〜。」
「お二人とも。お帰りなさい。ちょうど晩御飯が出来上がったようですよ。」
「了解です。曙、早くいきましょう。」
「手洗ってからね。」
今日の晩御飯はカレーだった。温かく食欲を刺激する香りが私の中に入ってくる。「いただきます」の一言を言うことすら憚られるほどの魔力がそれにはあった。間宮さんの料理はなかなかに恐ろしく、そして美味しい。私たちが食事しているタイミングに提督が話しかけてきた。間の悪い男だ。
「曙。明日建造をお願いしてよろしいでしょうか。大規模作戦にあたって戦力増強しておきたいのです。」
「構わないけど…本当にいいの?これ以上受け入れる余裕ここにあるの?」
すると提督は腕を組み、眉間に皺を寄せた。
「私としては確かに現状が1番良いと思うのですがねぇ。今回のようなことが今後起こらないとも言い切れません。その都度大本営などから応援の要請をするのはなかなか無駄ではないか…と思うのです。ならば建造して艦娘に着任してもらった方が良い。」
「まあ何が言いたいかはわかるわよ。別に建造が嫌なわけじゃないしね。」
「…お話は終わりですか?」
「ええ。お邪魔してしまってすみませんね。」
「加賀?一応あいつは上官だからね?そういうのはやめた方がいいわよ?」
「…善処します。」
「よろしい。ほら、早く食べてお風呂入るわよ。」