「はいみなさん。今日は彼の鎮守府に行きましょうね。演習ついでに実践もこなせるように手配してくれていますから。」
「ありがたいわね。」
「あたしたちはもうやったけどね。」
「やりました。」
「向こうに取材させてもらえるのが楽しみです!」
「艦載機何載せようかな。」
「存分に主砲を撃ちまくってもいいんだよな提督?」
「構いませんが…程々にね。」
簡単に今回の編成を伝える。と言っても旗艦が霞ということを伝えただけではあるが。しかし、曙や加賀はまだしも、他の3人が旗艦について物申さなかったのは意外だった。全員が納得した様子である。
「提督。貴様は霞の強さを知っているか?」
「ふむ…そういえばあまり理解していませんね。教えていただいても?」
「ああ。先日の演習だが、あれでは新建造組とそれ以前の艦にわかれての実践訓練を行ったのだ。その際だが、霞は大和型戦艦たる私に傷を負わせながらこの場の誰からも攻撃を受けることなく、それでいて完璧な指示を続けていた。」
「ほう…」
「武蔵…そのあたりでやめ…」
「あの動きは、並の艦ではできないだろう。恐らくだが、霞の実力と、先の対戦で旗艦を務めた経験もあってのものだろう。」
「なるほど。」
「ね、もういいでしょ?ほら、はやく…」
「霞、ますます期待しています。これからも精進してくださいね。」
「う…うん。」
顔が真っ赤になった霞は顔を手で覆ってしゃがみ込んだ。
こんな状況でも惚気るとはまさに天性のバカップルというわけですか…。
「あー、霞ちゃんも言っていた通りにもう出発しませんか?先方を待たせるのは良くありませんから。」
「あなたがもっともらしいことを言うとは。」
「あ、バカにしてます?」
「まさか。ありのままの真っ当な意見ですよ。」
失礼な物言いは少し鼻についたけれど、それを飲み込んで司令官に着いていく。
「先輩は何気に初めて来ましたね。この前は曙や加賀が遊びに来ましたけど。」
「へえ…迷惑をかけましたかね。」
「いえ。そんなことはありませんよ。」
「ふむ、まあいいでしょう。今日はよろしくお願いします。演習と、出撃。とにかく厳しくしてあげてください。」
「もちろんです。」
「で、結局我々は遠くで見ているだけですか。」
「仕方ありませんよ。」
執務室内で少し不満気に腕を組む先輩を宥める。やはり不安なのだろう。
「新しい3人はなかなか強そうでしたよ。」
「そりゃそうですよ。なんてったって昨日は一日中演習してましたから。」
「やはり霞が?」
「ええ。あの子の演習は日が沈むまで止まりません。」
「スパルタにも限度がありますよ。」
「仕方ないでしょう。初回があれですから。多勢に無勢。かつ実力も足りていない。あんなに歪んだのはひとえに我々の責任です。その責任を、君も取らなければなりませんよ。」
「そうですか…。まあ僕の艦隊もその分練度が上がりますからいいですけどね。」
そう言うと先輩は面白くなさそうな顔で頭を掻いた。
「ところで…君と赤城の関係はどうなりました?流石にもうやりましたよね?」
「…はい。」
「よかったです。」
「あんまり言わないでもらえると…僕にも立場というものが…。」
「ぴしっと胸を張っておけばいいんです。赤城だって、案外乗り気だったでしょう?」
「それは…そう…ですけど。」
「なら問題ありません。むしろ、みんなほっとしたんじゃないですか?この鎮守府で唯一のケッコン艦と、それにベタ惚れな提督…。もはやさっさとおっ始めろって思ってる子も居たはずです。」
「ベタ惚れって…。」
「ならそれ以外の子に指輪、渡せますか?金剛に大和にあなたのところの加賀、道ゆく駆逐艦はみんな90後半。軽巡重巡も相応に高い。妙高型や球磨型なんかもみんな限界でした。ほら、贈るならよりどりみどりです。」
「そんなことできませんよ!」
「ほらベタ惚れじゃないですか。ちなみに私はできません。」
「はあ…負けました。」
「なんの勝負かは知りませんけど私の勝ちということで。」
困った人だ。初めの印象よりだいぶ人間らしくなったから構わないけれど、少し危ない予感もする。