「先輩、ここでいちゃつくのは遠慮してもらえますか?」
「水を指すのが得意ですね君は。そういうことですから、霞もそろそろ離れてください。」
渋々と言った様子で霞が離れる。
「では…柳田君には世話になりますねぇ。」
「別に、構いませんよそれくらい。お気をつけて。」
頭を下げて帰路につく。青葉の肩を武蔵が支え、瑞鶴は皆の一歩後ろを、曙と加賀はピッタリくっつき、霞と私は手を繋いでいる。今日は良くも悪くも色々あった。疲労も溜まったことだろう。明日は休みにしようか。
夜になりたてと言った時間にようやく鎮守府に着く。遠いわけではないが、何となく歩数が多かった気がする。玄関を開け、見慣れた内装に気分が落ち着く。
「ただいま戻りました。」
「青葉疲れました!」
「皆さんお帰りなさい!ご飯できてますよ!あと、新しい子が来ています!」
「新しい子?」
「ええ。ささっ、早く来てください!」
食堂の調理場にはもう一人の影があった。こちらに気づいたようで、その影の主が深いお辞儀をする。
「なんと!伊良湖ちゃんです!」
「お世話になります。給糧艦伊良湖です。間宮さんと一緒にみなさんのご飯をお作りしますね!」
確かに間宮さんの食事作りは最近忙しそうだと思っていた頃だ。恐らくは軍曹殿が粋な計らいで寄越してくれたのだろう。
「ええ。宜しくお願いします。」
「美味しいですよ曙。ほら、あーん。」
「はいはい。」
「青葉、食べれるか?」
「流石に食べれますよ…ちょっとですけど。」
「あ、お味噌汁美味しい。」
調理場の二人は楽しそうに、それでいて恐ろしいスピードで提供していく。机の上の料理はなくならない。
「…私はここらで満腹ですかね。ご馳走様でした。」
「私も。」
「「お粗末様でした〜!」」
「じゃあ皆さん。今日と明日、ゆっくり休んでください。」
「ん。じゃあね。」
「明日は休めるんですか…?」
「またね提督さん。」
「霞、行きましょう。」
「うん。」
食堂を抜けると先ほどまでの賑やかな空気から一変して穏やかな時が流れた。二人分の足音がこだまする廊下を進む。
「どうします?先にお風呂入りますか?」
「そうしましょ。汗かいちゃったし。」
自分たちの部屋から着替えを持って脱衣所に向かう。今日の昼は情けないところを見せてしまったし、見られてしまった。でも、それが嫌だったかといえばそういうわけではない。むしろ、司令官の温もりが感じられたからどちらかといえばよかったかもしれない。それを抜きにしても今日の出撃はかなり身になった。
「私先入ってるから。」
「了解です。」
シャワーからお湯を出そうと蛇口を捻ると冷水が出て来た。お湯になるまで半歩分離れる。ふと、鏡に写った自分を見た。身体のラインが…なんというか変わった。もっというと、最初の頃よりも凹凸がわかるようになったような感じ。少しは成長したということかな?床に打ち付ける水が湯気を立て始めたのを確認してから身体を洗い始める。浴場のドアが開いて、見知ったシルエットが入ってくる。
「今日はお疲れ様でしたね。お昼の約束通りたくさん構ってあげられますからね。度がすぎなければある程度お願いも聞けますし。」
「…お風呂上がったら楽しみにしてなさい。」
「ふふ。怖いですねぇ。」