※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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悪戯

弓道場は結局使えなかったので、自分たちの部屋に戻る。自室ではなく司令室だが、昼はここの方が落ち着く。雨は止みはしたが、依然として重い雲が重なっている。太陽を拝めそうにない空と、走る武蔵が見えた。朝からずっと走っているのか、それとも今出てきたのか。距離があるためそこまで正確に把握することは難しい。

「ねえ、どこ見てるの?」

霞の方に目をやると不満そうに頰を膨らませている。可愛い。

「別に何も見てませんよ。えい。」

指先で頰を突くと、ぷひゅると空気が抜ける。そして、恥ずかしそうに笑いながら私の身体に腕を回す。

「それ好きですねぇ。そんなに見せられたら押しちゃいますよ。」

「司令官だから押していいの。」

「わお嬉しい。」

頭をまた撫でる。すると満足そうな表情になる。やはり他の霞とは似ても似つかない。前に務めていた鎮守府でも、それ以外の場で見た霞も、みな厳しい発言が多い事で評判だった。基本的には好かれてはおらず、一部の物好きくらいしか肯定的でなかったと記憶している。しかし、今ではその物好きの枠に私も入っていることに気づいた。ちらと目を向けると、顔を赤く染めながら前髪を少し上げ、額をこちらに見せている。

「…どうしました?」

「あ、えと…」

もじもじと言葉をつまらせながら、それでも目線は私を…もっと詳しく言えば私の口元を見ている。

「…綺麗な肌ですね。」

「そ、そうじゃなくて…」

「あ、熱でもありますか?」

「ちが…」

わかってはいる。揶揄いたいのだ。この可愛らしく柔らかい存在を愛でていたい。

「おでこに…その…」

言い淀んでいる間にそっと唇を触れる。鳩が豆鉄砲を食ったような顔で一瞬こちらを見て、状況を理解したのかすぐに顔が赤くなった。

「あ、これじゃありませんでしたか?」

「そうだけどそうじゃなくて…」

「まあ、いいです。これから私は少し寝ます。起きるまではここに来た他の子の相手をしてあげてくださいね。」

「そんないきなり…」

「ではおやすみなさい。」

もちろん本当に寝るわけではない。暫く密着しながら霞の行動を観察したいのだ。

「ちょ、司令官?…本当に寝ちゃった?」

 

司令官が目を閉じて大体五分。規則的な呼吸で眠っていることをアピールして来る。いまの格好は、正直他の子に見られたくない。後ろから司令官が抱きついて、私の肩に頭を乗せている。けれど、乗せると言っても頭の重みが直接来ているわけではない。額だけ器用に机の上に乗せているので、私に負担はあまりかかっていない。なんと言うか、凄く包まれているような、そんな体勢。ついでに司令官の両腕は私の身体に巻きついている。10分程経過しても、まだ起きる様子はない。こうされると私は一切動けない。机の上に丁寧に整理された書類を読むくらいしかやることもない。ペラペラめくってみても特に面白いものもなく、ただ時間は過ぎて行く。眠った司令官の腕が突然、私のお腹をそっと撫で始めた。少し驚いて司令官の方を見ると、まだ眠っていた。くるくると回すような手つきで私のことを撫で続ける。結構くすぐったくて少し笑いが込み上げる。

「司令官?起きてる?」

「…」

返事は無く、呼吸だけ聞こえる。すすすと腕が上の方に来て、私の胸の辺りをなで始めた。特に何も感じないというか、制服に加えて下着まで着ているので、司令官の手の感覚は思ったより届かない。しかし、今この現場を誰かに見られるのはまずい。色々説明が面倒臭くなる。

「司令官、そろそろ起きないと。ね?」

隣に置いてある司令官の頭をぽんぽん叩く。すると、少し物足りなさそうな顔を持ち上げた。

「おはよ、司令官。」

「ええおはよう。」

その時の司令官の目は、黒く濁っていた様な気がする。

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