※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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走考

流れる液体が汗か雨かもわからないが、体力の続く限りは走る。この艦隊の唯一の戦艦として、大和型の名に恥じない活躍を見せるためにも、そして、今以上の強さを得るためにも、体力作りは欠かせない。それに、こうして走っていると思考がすっきりして、落ち着く。体温も上がり切る前に雨が攫って行く。眼鏡に水滴が貯まる。視界は悪く、足元も滑りやすい。だからこそ訓練になるというものだろう。そう言えば、青葉は今何をしているだろうか。そう、こうして青葉のことをよく考える様になった。理由はわからない。きっと思い違いだろう。心なしか青葉は私によく懐いている様な気がする。

「…ふう。」

足を止め、少し休憩する。喉の渇きを潤すため、外に取り付けられている蛇口を捻る。髪の先から雨水が垂れ、着ていた服がより身体に密着する。今朝風呂に入った意味はなかったかもしれないな…

 

雨が止み、再び走り出す。だだっ広い運動場の中を私だけが一人存在している。途中、視線を感じた気がしたが、私に止まっている暇はない。すぐにでも霞と同程度の強さを手に入れなくてはならない。仮にもこの艦隊での最高火力なのだ。砲雷激戦でいの一番に切り込むのだ。こんなことをしても実際の戦闘で役に立つかはわからない。しかし、少しでも自分を奮い立たせるために私は走る。既に改装は済ませ、以前よりも更に強くなった。だが、それでも足りない。いざとなれば私が艦隊の盾…或いは囮となって皆を護らなければならない。結局のところ、私は何をどう頑張っても私の想像する活躍未満のことまでしかできないのだ。対空は私は少し劣る。その為に青葉や霞や曙に頼らざるを得ない。航空戦は、加賀や瑞鶴に甘えているだけ。二人のおかげで私の水偵が飛ばせるのだ。そして、いざ航空戦が終われば、私が初陣を切る。この砲撃が、恐らく最も大切であろう。次に続く青葉たちの士気高揚にもつながるのだから、当てねばならない一撃だ。私の一撃なら、大体の敵は沈められるか、大破まで追い込めるのは確実だ。だが、この一撃を終えると、私の主砲の再装填のために時間がかかる。その間は私は木偶の坊だ。速力があるわけではないのだ。むしろ、この艦隊の中では最も遅い。装甲が硬くとも的となるなら意味がない。囮には喜んでなるが、的になるのはごめんだ。ずっと、走る。もう二度と沈まないため。敵の的となるだけで終わるなど、もう、二度と。

「武蔵さーん!」

玄関の方から、元気のいい声が聴こえる。そちらへ首を向けると、青葉が手ぬぐいを持ってこちらに駆け寄ってきた。

「どうした?」

「どうしたじゃありませんよ。風邪引いちゃったらどうするんですか?」

「…すまないな。」

手ぬぐいを受け取り、青葉をもう一度見る。私は、弱い。だが、この弱さは悪くない。

「もう一度お風呂に入ってきたらどうです?」

「そうだな…青葉も来るなら考えよう。」

「ええ!?」

頰を朱色に染めながら手を握っては緩め握っては緩め…。観念した様に首を縦に降る。

「ふ…可愛いやつめ。」

「かわい…」

衝動的に頭を撫でると恥ずかしそうにしながら逃げられてしまった。

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