※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

140 / 263
小宴会

「…一杯酒でも呑まないとやっていられないな。」

武蔵がぼそりと呟く。司令官が少し嬉しそうに顔を上げた。

「今日は呑みますか?」

「いいのか?」

「ええ。いっそみんなで呑みましょう。蓄えていてもどうせ呑みませんから。」

「ほんと!?やったー!」

「流石に気分が高揚します。」

「司令官は呑んじゃダメよ。」

「あたし呑めるかしら…」

「いいですねぇ!私も参加します!」

「では各々食事を済ませ次第司令室に集合ということで。」

あれよあれよという間に決まっていく。私と司令官の時間が減るのは癪だけれど、良い方向に進んでいる様な気がする。司令官が私を引き上げて、浴場を後にする。

 

「さてさて…準備しますか。」

「どんなの出すの?」

司令官は少し考えた後、大きなボトルを取り出した。中身は赤紫色で、ラベルには英語が連なっている。注ぎ口はコルクで閉められたそれはワインだった。

「私は呑みませんけど、勿体無くて持っていたんですよ。そこそこ高級なやつですから、皆さん満足するはずです。」

他にも日本酒だったりビールだったり…本当に溜め込んでいたのがよくわかる。

「先に一杯呑んでみては?」

「いいの?」

「構いませんよ。味見です味見。」

そう言ってコップにワインを注ぐ。ぱっと見はジュースの様で、口元に運ぶとなんとも言えない香りが鼻腔をくすぐる。一口呑んでみると、葡萄の香りと味が広がる。これが上品な味というやつかもしれない。

「美味しいですか?」

「うん。私結構好きかも。」

「それは何より。」

廊下からパタパタと小刻みな足跡が聞こえる。

「来たわよクソ提督!」

「お待たせしました。」

「うわ!色々ある〜!」

「ふむ…呑めるのか?」

「いえ?私は呑みません。」

「なんですそれは…。」

ぞろぞろとみんなが集まり、机に並べられたお酒に視線が集まる。

「霞はもう呑み始めているな…。なら私たちも呑もう。」

「そうねえ。じゃ、私これ。」

「なら私も。」

曙と加賀は二人とも日本酒を手に取った。注がれるその液体は透明で照明の光を反射していた。

「青葉はこれにします!」

それは私が一番最初に呑んだジュースに似たお酒で、司令官が一口目で酔ったもの。

「私はこれで良いか。」

武蔵は…よくわからない。麦色なのにビールとは違う様な入れ物だった。コップに注いだ後に炭酸水を入れた辺り、普通のお酒ではなさそうに見える。

「私どうしよっかな。」

瑞鶴は決めあぐねている様で、じっくりと観察している。結局選んだのは青葉と同じものだった。

「では乾杯。」

さらりと乾杯の挨拶を済ませ、みんなが改めて呑み始める。司令官はお酒ではなく、緑茶を飲んでいる。

「あ、これ結構いけるわね。」

「…なるほど。」

曙は結構好きそうで、逆に加賀は好みではなさそうだった。二人とも適度に呑めるクチらしい。

「むむ!これは美味しいですよ!」

「ね!」

青葉と瑞鶴は気に入ったみたい。缶を開けて豪快に呑んだ。頬が少し赤い辺り青葉の方はお酒に弱いらしい。

「これはなかなか…」

武蔵は、少し表情が読み辛い。けれど、お酒を見る目はどこか楽しそうに見える。もしかしたら気に入ったのかもしれない。また一口呑んで司令官を見ると、穏やかに微笑んでいた。

 

「んぁ〜、かがぁ〜。いる〜?」

「ええ…居ますけど。」

「曙よわいねぇ〜。あはは。」

曙は意外にもお酒で酔えるらしい。加賀は見た目通りというか、まあ、あまり酔っていない。瑞鶴は頬が赤いけれど、まだまだ意識ははっきりしている。けど、笑いがずっと止まらないのはお酒のせいなんだろうか。

「すぅ…」

青葉はぐっすり眠っている。武蔵の腕に抱きついている辺りさすがと言ったところだろう。

「うむ…やはり酒はいいな。美味い。」

武蔵はずっと最初に選んだお酒を継続して呑んでいる。酔っている様子はないから、お酒には強いらしい。

「霞はやっぱり酔わないみたいですね。」

「そんなことないわよ?ちょっとぽかぽかするし。」

嘘は言っていない。酔いにくいだけだと思う。

「そろそろ私は帰ろう。青葉も寝てしまったしな。」

「では私たちもこれで。」

「かがぁ〜つれてって〜。」

「任せてください。」

「私はもうちょっと飲もっかな。楽しいし。」

武蔵と青葉、曙と加賀が帰る。瑞鶴は少しはだけつつもお酒を呑むのをやめない。

「霞、私は呑んじゃダメですか?」

「絶対ダメ。」

「そんなに言われるなんて何やらかしたのさ〜。」

「すぐ寝ちゃったのよ。それも一口目で。」

「あはははは!弱すぎでしょ!あははごほっごほっ!あー…むせちゃった。」

「そんなに面白かったですか?」

「いやねぇ。こんなにお酒溜めこんどいて飲まないなんておかしくってさぁ。の割に霞はびっくりするほど強いし…。ふぁ…」

「眠いなら寝ないとダメですよ。ほら、帰りなさい。」

「えー?まだ呑みたいんだけど〜。」

「もう終わりです!」

文句を言う瑞鶴が背中を押されて部屋を出る。

「元気なのは良いんですが…ああいうところは困りますね。」

「いいじゃないの。仲良くするのも大切よ?」

あまり散らかっていない部屋を適当に片付けて、私たちも部屋に戻る。

「…随分遅い時間ですね。」

「そうね。今日は…別に良いわ。でも、えい。」

布団に座る司令官を抱きしめる。司令官は腕を宙でばたつかせた後、私の背中をキュッと抑えた。

「こうして寝ましょ。」

「構いませんとも。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。