朝の日差しが瞼を撫でる。腕を揺らして日を遮ろうと動いてみる。目を細めて目の前に何があるかを確認する。そこにはまだ眠っている彼の姿がある。私の方に対して身体を向けている。彼の方にはぎりぎり日差しは注がない様で、心地良さそうに眠っている。
「しれーかん…?」
「…」
返答はない。どうやら本当に眠っているらしい。ぽすんと彼の胸に顔を埋める。そうすると彼のニオイが私の中に呼吸するたびに入ってくる。私の好きなそれは妙に安心する。先ほどよりも更に思考力が落ちた気がする。
寝たふりは霞に有効らしい。しかし、この反応は少々予想外だった。鼻息が荒く私の寝巻きを力一杯握りしめている。ここで何か一言喋ってしまうのも面白そうではあるが、余りにも幸せそうな彼女を止めてしまうのは今の私には不可能だった。
「ん…しれいかん…」
何かを探る様に布団の下をもがく霞は可愛らしいと言う他なかった。そろそろ起きてあげよう。
「霞、おはようございます。」
「あ…お、おはよ。」
パッと離れて顔を赤面させる。少し名残惜しそうな顔の霞を撫でる。「ん」と喉から声が漏れ、満足そうな顔が見れる。
「頭痛い…」
「大丈夫ですか曙。」
頭がガンガンと響く。加賀がコップ一杯分の水を持ちながら心配そうに見つめてくる。
「ありがと…」
しかし今は水一杯すら飲めそうにない。なかなか美味しかったけれど、こうなるならもう勘弁だ。
「加賀はほんとになんともないの…?」
「ええ。」
済ました顔でいつも通りの様子でそこに正座している。その姿が今の自分とは全く違うことと、今の体調からくる苛立ちで余計に頭痛が強くなる。ぐらつく視界を無理をして固定させる。時刻は6時くらいらしい。今日は余り動く気にもならないし、食欲もわかない。
「ごめん加賀、今日は一人で食べてきて…」
「…わかりました。」
「武蔵さん!おはようございます!」
「む…青葉か。」
「ええ、今日も訓練ですか?」
「ああ。1日でも休めばそういう癖がついてしまうからな。」
「しかし…今日は霞ちゃんからの演習があるのでは?」
「そうだな。だが、だからと言って休んでも良いわけではない。」
武蔵さんは常にこんなことを考えています。ストイックといえば聞こえはいいですが、私からすればそれは余り良いものであるとは思えません。けれど、私の目に映る彼女はとても爽やかな笑みを浮かべていて、どうにもその人の思想を口で否定することができません。
「…わかりました。」
故にこうして彼女を肯定して、無理にでも理解する必要があります。