演習風景を見に、鎮守府を出て海へ向かう。加賀に見つかると文句を言われそうなので、木陰に隠れる。案外しっかりやっているようで、瑞鶴に的へ艦載機を正確に飛ばす訓練をしているらしい。確かに水上では足場が少々不安定で、かつ敵も動き続けているから、そういう意味でも大切なんだろう。青葉と武蔵は霞に扱かれているようで、離れたところに水柱が上がっている。
「皆さんすごいですよね。」
「なんであんたいるのよ。仕事は?」
いつの間にか隣に立っていたクソ提督をぎろっと睨む。それを一瞥したと思えば、なんともないかのようにけろりと、
「私って変に優秀なんです。お仕事なんて、ちゃっちゃと済ませれるんですよ。だからあの艦に乗って出撃したり、釣りをする時間があったんですよ。」
別に聞いてもないことまで言ってくる。
「そういうのは私じゃなくて霞と話してなさいよ。」
「霞とは話せないようなことを話したいんですよ。お互いの恋人のことについてとか。」
「…お互い止まらなくなるわよ?」
「面白そうじゃないですか。」
そう言って義手をよく見えるように動かしながら鎮守府へ誘われた。面白そうだし、乗ってやるとしよう。
「お先にどうぞ。」
「あら、いいの?」
加賀の魅力を話せばキリがないだろうけど、この場においてそんなことを考えるのは野暮って物。
「一番あたしが好きなとこっていうのは決めれないんだけどね。でも、加賀の性格とかは結構好きかも。」
「どういったところが?」
「ほら、加賀って繊細じゃない。あたしがいないとすぐ泣いたりするし。そういうとこかもね。あとは…身体があたしより大きいじゃない?抱きつかれる時に安心感っていうのかしらね。そういうのが大きいわ。」
「なるほど。私の知り得ない情報ばかりのようで大変興味深いです。」
顎に手を当て、ふむふむと頷く。
「では私の番でよろしいですか?」
「ええ。早くしなさい。」
「では僭越ながら…なんといっても愛くるしさですよね。あの子、すごいんですよ。ピュアさ加減がもう…かと思えばこの前にも感じたんですけど、包み込むような優しさというか、包容力っていうんですかね。そういうギャップがいいですね。」
「わかってるわよそんなん。」
「でしょうね。なんてったって日頃貴方たちに見えるようにしていますから。」
「ああいうの、やめた方がいいとは思うわよ。」
「善処しますが…霞のことを嫌いにならない限りは起こり得ませんね。」
「なら一生無理ね。」
クソ提督はけらけら笑って、随分楽しそうにする。あたしもそれに釣られて思わず吹き出してしまった。
「あの子、私が抱きつくと私の手に被せるようにしがみつくんですよ。もうそれが辛抱たまらんという感じで。」
「あたしもそれしてるんだけど。加賀もそうなのかしらね?」
「さあ?私は加賀ではありませんから。しかし、好意的に感じているはずですよ。」
「そういえば加賀って寝起きが悪いのよ。だから、その時だけ見れる特別な姿があるのがいいわよね。」
「わかります。霞は朝も夜も無理なんです。それに、よく昼寝もしますから、そういうタイミングは結構あるんです。」
…と、このように会話が弾む。お互いの恋人を好きなように言い合うだけの時間が結構楽しい。あっという間に夕方。もうそろそろ帰ってくるはずの時間。港まで迎えに行ってやるか。