「瑞鶴、大本営まで着いてきてくれます?」
「いいけどなんで?」
「霞の腰が砕けました。」
「ええ…」
大本営からの連絡によると、今回の大規模作戦の最終確認とかいうことらしい。大体の方針は聞いていたが、このタイミングでその全容がわかるらしい。
「あぅ〜…腰痛い〜。」
「湿布貼っときゃ治るわよこんなん。まったく…少しくらい節度をもちなさいよ。」
「まあまあ曙ちゃん、そう言わないでおきましょうよ。」
「私も司令官と行きたい〜!」
「ダメ。寝てなさい。」
大本営へ向かう車の中、瑞鶴は色々話しかけてくる。やれ景色がどうだとか雲が鳥みたいだとかそんな他愛もないことばかり。ここらで少し気になっていたことを聞いてみよう。
「瑞鶴。」
「ん?どうしたの?」
窓に向けられた目線はこちらを振り向き、少しの戸惑いが混ざる瞳が見えた。
「あなた、何か隠し事でもしていないですか?」
「…なんでそう思ったの?」
「いえ…ただの勘です。しかし、私は何か知りたいことには首を突っ込みたくなるんですよ。大規模作戦前にこんな気持ちのままでは、艦隊指揮にも影響しますから。」
「…運転手さんが聞いちゃうじゃん。」
「ということは、私以外に誰もいない場でなら教えてくれると?」
「…それなら…まあ。」
「決まりですね。帰ってから楽しみにしておきます。」
瑞鶴はそれ以降特に何も言わず、かと言って拒絶する風なことを言うわけでもなく、ただただ漫然とすぎる景色に目を置いて、大本営への到着を待った。
「おお。」
「いつ見てもでかいですね。」
「そうだねえ。」
各鎮守府から召集された提督たちが導かれるようにして大本営に吸い込まれていく。そして、その波の中に私たちも混ざり、内部へと進む。軍曹によるツマラナイ挨拶と、どの海域を中心に攻めていくのか、また、各鎮守府の出撃する際の細かな指令を告げていく。うちの鎮守府だけは特別で、他と違ってうちが攻めていくわけではなくて、いずれかの鎮守府に艦隊の派遣をして…いわばお助け役といった立ち位置らしい。あと、なぜか提督さんだけ指を指して呼び出されてた。
「お帰り〜。」
「面倒な爺さんですよまったく。霞がいない理由ばかり聞かれても困ります。」
「腰砕けなんてそうそういえないよねぇ。」
必死に自分を取り繕う。正直今の私はかなり動揺していて、平常心からは大分かけ離れてる。隠せてたと思っていたけれど、どこかで違和感を感じる程度にはそういうのを出してたみたい。
「帰りは速いですから。とりあえず心の準備頼みます。」
「…うん。あと、一応言っとくけど、大して面白くないよ?」
「聞くことに価値があるので。」
そのまま、表情をぴくりとも動かさずに告げる提督さんは少し不気味に見えた。
「…ロリコンのくせに。」
「聞こえてますけど。」
「聞こえるように言ってんの。」