一応姉さんには瑞鶴の部屋で過ごしてもらうことになった。けれど、今日だけは私と眠ることになってしまった。司令官と一緒にいられる時間が減ってしまうのは、いくら姉妹といえど気持ちの良いものではなかった。
「どうしようかしら…」
「荒潮は単純にあなたが心配なんですよ。そのせいで、余り私のことを知らないのも相まって警戒されているだけです。暫くすれば収まりますよ。きっと。」
そう言って頭を撫でられる。胸の奥の方に突っかかっていたなにかがそれによってすっと消えた。
「明日から一緒の部屋で過ごす荒潮です〜。よろしくお願いしますね〜。」
「あ、うん。よろしく。」
えらくおっとりした駆逐艦が来た。確か大規模作戦の時にうちに所属した子だったかな。丁寧なお辞儀があんまり綺麗なものだからこちらまで丁寧に下げてしまう。
「ところで〜、司令官と霞ちゃんはどこまで進んでるのかしら〜。」
目から光が消えて、威圧感をこちらに向けてくる。
「んーと、私からはあんまり踏み入ったことは言えないかな。あと、あんまり圧かけられても困っちゃうからね。」
「…そうですか〜。」
さっきまで少しでもこちらの対応を間違えば命はないとまで言いたげな空気だったのに、いつの間にか普通の女の子のような可憐な雰囲気を纏い出した。
「荒潮はどうしてそこまで霞にこだわるのさ。いくら姉妹艦とはいえ、結構過保護みたいな感じだよね。」
「…霞ちゃんを一人にしちゃったらだめなのよ〜?」
「それなら、あんまり気張らなくても提督さんがいるじゃん。二人ともケッコンしてるんだしさ。」
「そういうことじゃないんだけれど〜。」
首に手をあてがいながら、30°くらい首を傾ける。朝潮型に何があったのかはよく知らないけれど、私から言った以上踏み入る質問はできない。ま、いいか。
「あ、そうそう。」
「?」
「この鎮守府、成り行きだけどみんなでお風呂に入ることになってるよ。なんでだろうね。あと、言っとくけど提督さんも一緒だから。」
「…本当?」
「つまらない嘘は嫌いだけどつまらない現実は好きだよ私。」
「郷に入ってはなんとやらってやつかしら〜。」
「そんな感じだよ。ま、なんでも慣れ慣れ。」
少し肩を落としている荒潮が、背伸びしている女児の姿に見えてしまって、ついつい頭を撫でてみたくなる。
「おいで荒潮。緊張ほぐしたげる。」
「遠慮しておきます〜。」
にっこりと笑ってバッサリと切り捨てられる。ほぼノータイムで拒否られれば流石の私も傷つく。
「そっかぁ…。妹ができたみたいで嬉しかったんだけどね、嫌なら別にいいや。」
「じょ、冗談よぉ。お言葉に甘えさせてもらうわねぇ。」
そう言って、私の前にぺたんと座る。そして、すこし両腕を開いて、私の入れるスペースを作り上げる。