「あれ!なんかいっぱいいるよ!翔鶴姉も!」
「本当だな…大和までいるじゃないか。一体何が…?」
「ふむ…何やら面白そうなことが起こってますねぇ…。」
「まだ演習は終わってないわよ?」
「まあまあ霞ちゃん。一旦中止してもいいんじゃないかしらぁ。」
「曙、タオルいります?」
「ありがとうだけど今じゃないわよねそれ。」
「皆さんお疲れ様です。山城が建造した大和、長門、伊勢、金剛、翔鶴、扶桑です。」
「こんなに受け入れられないでしょ。何人かは別のところに異動してもらったら?」
そう曙に言われると司令官が得意気に胸を張って、自信たっぷりに言って見せた。
「そこはご心配なく。妖精さんに既に話を通してありますから。」
「んー…。それはいいけど、部屋割りはどうなるのよ。」
彼女から言い放たれたその一言で場の空気が少しひり付いた気がする。
「私はテートクとがイイデース!」
「私は翔鶴姉と!」
「武蔵!一緒のお部屋にしてもらいましょう!ね!」
「私は霞ちゃんとがいいわ〜。」
「曙、お風呂に行きましょう。」
「あんたマイペースよねぇ。」
「誰にも私の姉さまは譲らないわ!!」
「山城?少し落ち着いて…?」
「…伊勢、私と相部屋でもいいか?」
「構わないわよ。」
ギャアギャアと喚く一部のせいでやかましいったらない。
「えー…皆さん落ち着いてください。部屋割りは私が決めておきましたから。」
「早いわね。」
「提督…わかっていますよね?」
「武蔵!一緒になれるといいですね!」
「ああ…。そうだな。」
「えーまず。扶桑と山城。」
「当然ですね!」
「そうねぇ。よかったわね山城。」
「次に曙と加賀。」
「もう居ないわよ。」
「お風呂みたいねぇ。」
「翔鶴と瑞鶴。」
「やったね!」
「よろしくね瑞鶴。」
「青葉と荒潮。」
「荒潮ちゃん…ですか。」
「あら〜私じゃ不満かしら〜?」
「大和と武蔵。」
「よかったな大和。」
「ええ!ええ!大和、嬉しい!」
「長門、伊勢、金剛はそれぞれ一人部屋でお願いします。」
「了解した。」
「まあ、そうなるか。」
「おや?霞はどうするデスカー?」
「私と相部屋ですよ。当たり前でしょうが。」
「えぇ…?」
あの金剛が言葉を失うほどの衝撃だったらしい。司令官のことを信じられないものを見るような目で凝視しているので、どうやら司令官への思いは潰えたらしい。
「はい。では妖精さんの指示に従ってそれぞれの部屋に行ってください。私、曙と加賀、瑞鶴、青葉の部屋は変わらないので同室の方はその人から案内を受けてくださいね。では解散。」
パチンと手を叩いて、簡易的な会議を終了させる合図を鳴らした。皆それぞれが妖精さんに導かれて行く。司令官は動く気はないようで、その場に腰掛けている。私も司令官の上に腰を据えて、いつも通りの体勢になる。
「大分艦娘も増えましたね。これから管理が忙しくなりますよ。多分。」
「そうかしらね。案外、何人かは別のところに行っちゃいそうだけど。長門も、伊勢も、金剛も。」
「そうなると、本当に思いますか?」
「ええ。ここには過剰な戦力よ。最初にあなたからも聞いたし、実際に私がここで暮らして、わかったもの。ここは、今の戦争している現実と比べても異常に平和なの。深海棲艦の一隻すらもここで確認できていないのに、戦艦や空母があんなにいるなんて、あり得ないわ。」
キラキラと太陽を反射する海を見つめながら言う。実際、この前の大規模作戦も、私たちは他の鎮守府への派遣ばかりで、自分たちで出撃はしていない。司令官は私の頭を撫でながら告げた。
「確かにそうですね。あなたの言う通り、ここには過剰戦力ですし、不要なほどに充実しています。彼女らも、そのうち自分から異動を強請るかもしれません。ですが、それでいいんですよ。」
「…どういうこと?」
「前の作戦である程度は深海棲艦へ牽制はしましたが、それでも勢いは衰えていないらしいです。それに、他にも鎮守府は出来上がっていきます。そんな時に、ある程度育っていて、かつ強力な戦艦が居たなら、そこに行って貰えばいいんです。彼女らからすれば、戦闘に没頭できる。私や霞からすれば、無駄に心配する必要もなくなる。」
「そういうことじゃ…」
「そうなんですよ。戦争とは、そういうものです。適材適所。私だって、この腕だからここにいるわけですから。」
「…」
「まあ、身も蓋もないことを言って仕舞えば、ここは"都合が良い"。それも、大本営にとっても、他の鎮守府からしても。いつでも呼び出せて、ある程度戦力になる艦娘が多い。いざとなればここに貯蔵してある資源を開放して、分け与えれば、ちょっとした出撃も少しなら賄えます。」
「そう、だけど…」
司令官がそう考えるなら、私はそれ以上反論できない。ここの最高責任者である司令官がそう言うなら、私たちは従う他ない。そして、司令官の少し悲しそうで、諦めの籠った声色は、私のことを縛って、そこに留めるような雰囲気があった。
「安心してください。私は、霞も、曙も、加賀も、他の皆さんも、別の鎮守府に異動させるなんてこと、する気はありません。もちろん、彼女たちの意見は尊重するつもりではありますが。」
「そう…なの…?」
「私は、嘘は嫌いなんですよ?それに、これが嘘だとして、こんなにつまらない嘘、なんの意味がありますか?」
きゅぅと私の身体を抱き寄せる。その腕の温もりや彼の胸から感じる振動が、それを嘘ではないと伝えるようなものに感じられた。