「伊勢、金剛。」
「どうしたの?」
「何かアリマシタカー?」
やけに神妙な面持ちで長門が語りかける。つうと彼女の頬を汗が流れ落ち、理由もないのにこちらまで緊張してくる。やがて長門の口が開かれる。
「私たちは戦艦だよな?」
「え、ええ。そうだけれど。」
「当たり前のコトデース。」
「大和や武蔵、扶桑姉妹も私たちと同じ戦艦だよな?」
「何が言いたいデスカ?」
「まだわからんのか?」
「ええ。これっぽっちも。」
はあと深くため息をつき、遂に長門が本題を語り出した。
「この鎮守府は艦娘の総数に対して戦艦が多すぎる!」
「…は?」
「いや!事実そうだろう!全部で一四人だぞ!そのうちの七人が戦艦だ!これは由々しき事態だ!」
「…ソウデスカ。」
「いや、私と扶桑姉妹と大和は航空戦艦になれるけれど…。」
「最終的には普通の戦艦より航空戦艦の方が多いデース。」
長門の動きがピタリと止まって、私たちを見つめた。数秒停止した後、ハッと意識を取り戻して被りを振った。
「そ、そういうことではない!ともかく!私たちが改装されたとしても、結局のところ戦艦の候補がありすぎるということだ!」
「その点私は高速ですから使い所がハッキリシテマス!」
「そうねえ。金剛は今の所はハッキリ長所があるわね。」
「フフン!そうでしょうそうでしょう。」
得意気に胸を張る金剛と、それを握り拳を構えながら見つめる長門の対比がなんだか面白い。
「別に、個性を無理に作らなくてもいいんじゃないの?私たちには、それぞれ私たちなりに使い方があるじゃない。ね?」
「む…それはそうだが…。しかし元連合艦隊旗艦の私からすれば…」
「あ、皆さんどうもお揃いで。」
「提督か。」
「テートク!」
「お疲れ様です。」
「はいどうも。ええと、一応言っておきますけど、この艦隊でぶっちぎりの最強は霞です。あと、出撃はあまりありませんから、大体は演習をすることになりますよ。では。」
そのままスタスタと歩いて去っていく彼を止める者も、彼の発言を深追いしようとする者も、この場には誰一人としていなかった。そして、静かにこの会はお開きになった。
「姉さまぁ。」
「ねえ山城?あんまり近づかれると私も少し動き辛いんだけれど…。」
「申し訳ありません姉さま。こればかりは譲れませんので。」
「もう…困った子ね。」
山城の頭を撫でると、幸せそうに頬を染めるのが可愛らしくて、ついつい甘やかしてしまう。
「姉さまは…ここをどう思いますか?」
「どういうこと?ええと…まだここに来たばかりでよくわからないけれど…。山城が元気になれる場所なら私はいいと思うわよ?」
なんて、少し濁して言う。決してこの言葉が嘘なわけではないけれど、そう易々と答えられるような質問ではない。だから、そこでこの子を盾としてしまった。答えの出せない私のために彼女をダシにしてしまった。だから、少しだけ痛い。けれど、この子はあまりに素直だから、その言葉を信じてしまう。最初から最後まで、徹頭徹尾私の全てを受け入れてしまう。そんな危うさが、私はとても心配。
「いつか…みんなでここにいられるといいわね…。」
「…ええ。姉さま。」
あの海で沈んだあの子達を、いつか、迎えてあげたい。最期まで立派に闘い抜いたあの子達を、抱きしめてあげたい。一人遺してしまったあの子を、安心させてあげたい。そしてまた、みんなで。いつかこの海で。