「霞、もうそろそろ起きてくださいよ。」
肩を掴んで少し揺らす。すると、眉間に皺を寄せながら目を開いた。とろんと目が垂れ、照明の光が煩わしそうに目を細める。
「ん…寝ちゃって…あ」
目線を下に向け、なにやら焦りを見せている。理由は明白ではあるが、しかし焦る原因はすでに対処済みであるので、いくら探したとてそれが見つかることはない。
「どうしました?」
「あ、えっと、なんでもない…」
不思議そうに首を傾げ、膝の上から降りる。そして、さりげなく見た扉の鍵を見たことで、ぼふんと顔を赤くしたのを見逃すほど私の目は衰えていなかった。
「…今夜、どうします?」
「あう…」
湯気でも浮かんできそうな程に顔を真っ赤にし、俯く。
「と、取り敢えずお風呂行ってから!」
「…別に良いですけどね。」
明らかな動揺を必死に抑えながら脱衣所へ向かう霞を追う。
「へぇ…みんなでお風呂、ねえ。」
「姉さまのお身体を他のやつに見せるわけには行かないわ!」
「山城…私は別に…」
「Oh!テートクも一緒デスカー!?」
「む…私は構わないのだがな。」
「武蔵!お風呂行きましょうお風呂!あったかいんでしょう!?」
「わかっているからそう引っ張らないでくれ。」
やっぱりこうなるようで、皆それぞれ違った反応を示す。金剛はなぜか嬉しそうで、それ以外は困惑といった様子…いや、扶桑だけは満更でもなさそう。
「あんたら、嫌なら時間ずらすなりなんなりしなさい。あいつは霞以外見えてないから。」
「曙、早く行きましょう。ご飯が待っています。」
「先に風呂だっていってんでしょうが。」
「…外がうるさいわね。」
「どうせまた増えますよ。結構広いですから良いですがね。」
司令官が少し呆れた様子で話している。別に他の子を見ているわけではないから私は別に良いけれど、司令官のこの顔を見るによく思っているわけではなさそう。
「あれ?司令官の腕の話ってしたかしら。」
「してませんね。ですから結構驚かれるはずですよ。」
「…そ。」
そういえば司令官はこういう悪戯が結構好きだったような気がする。最初に曙と会った時もこんな感じの雰囲気で笑っていたし、結構楽しんでいるのかもしれない。
「霞はお風呂、好きですよね。」
「うん。あったかいもの。」
もちろんお湯も温かいけれど、司令官と触れ合うことによって感じる温かさも当然これに含まれている。
「テートクー!!!バーニングゥ…ラーブ!!!」
金剛が凄まじい速さで突進してくる。
「金剛、私の司令官よ。」
金剛の来ると思われる軌道上に拳を合わせる。ちょうどクリーンヒットして、金剛の身体が浴槽にバシャリと音を立てて落ちる。
「良い突きですね霞。しかし、『私の』とは…少し照れますね。」
「金剛、走るなと何度言えば…ん?」
「ダメでしょー。って、あら?」
長門と伊勢がタオルで身体の前面を隠しながら入ってくる。そして、司令官の左側を見て首を傾げた。本来そこにあったものが綺麗さっぱり無くなっているのだからそりゃあ驚くというもの。
「皆さん元気ですね!」
「困ったわ〜。」
「大和、落ち着け。」
「でもでも!もやもやが!すごいです!」
「山城?私は大丈夫だからね?」
「ダメです!一緒に入るなら、せめて私が姉さまの身体を護ります!」
一気に騒がしくなる。全員集合でいよいよ収集がつかない。そして、新しい戦艦のメンバーに少し遅れて入ってきた姉さんが司令官の異変を見つけた。
「あらあら〜。色々聞きたいことがあるわね〜。」
「別にやましいことなんてないわよ。」
「そういうことじゃないんだけれど〜。」
「翔鶴姉も早く入ろうよ〜。気持ちいいよ?」
「わかってるのよ?でもね、瑞鶴?流石に男の人と一緒に入るのは流石に…」
「大丈夫だって!あの人の目は霞以外見えてないもん!」
「曙、皆さんを落ち着けられますか?」
「加賀も抑えられてないあたしに頼むこと?それ。」
「…失礼しました。」
最初の頃とは全く違う、賑やかなお風呂。静かで孤独を感じていたここはもう見る影もなく消え去っている。