※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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変わらない日

目を開けた時には日が登ることを宣言しているかのように窓がぼんやりと朱色に染まっていた。布団を剥がすと肌を覆う布があった。隣に眠る彼は少し呻き声を上げて、寝返りを一つうった。寝覚めに感じた喉の渇きを潤すために部屋を出る。備え付けられていないキッチンが恋しくて、少し苛立つ。窓の外へ目を向けると二つの影が見えた。目を凝らしても絶妙な暗さでよくわからない。一方は髪が短く、もう一方は長い。古くさびかけの、廊下の壁にぶら下がった蛇口を捻り、少し乱れる水柱を掌に受け止め、思い切り被る。冷たい水が脳を活性化させ、だんだんと意識がはっきりしてくる。そして、本来の目的である水分補給を済ませ、自室へ戻る。未だに眠っている司令官を横目に制服へ着替える。時計は早朝であることを示し、同時に暫く暇になることもわかる。やることがないからと彼を起こすのは忍びないので外へ行き、例の二人の様子を見に行くことにしよう。私しかいない廊下は静かで少し寒い。孤独感を演出する隙間風と同時に聞こえるくぐもった砂の音が耳に入る。雲の切れ間に太陽が覗く。水平線が赤と青に分かれ、柔らかな光が私を誘う。大きな扉を開けると二本の影が足を止め、こちらを見た。乾いた砂の上を走ってそちらへ向かう。武蔵と長門。なぜこんな時間に走っているのかと聞くと、曰くいつ戦闘が起こるかなどわからない、どんな時にも対応できるよう体力だけでもつけておきたいとのことだった。ならば今から演習でもするかと提案したところ、武蔵から全力で拒否されてしまった。長門は逆に嬉しそうに承諾した。結局武蔵も根負けして朝一番の珍しい演習をすることになった。武蔵と長門を同じ艦隊とし、私一人が攻めに行く。結果から言えば二人は呆気なく轟沈判定になった。武蔵からは少し加減してほしいと、長門からは何故それほどに強いのかと聞かれた。実戦では相手が加減することなどないし、強い理由なんて私にはわからない。強いていうなら、護りたいものがある。それ以外には思い浮かばなかった。潮で汚れた身体を洗い流しに風呂場へ。大分時間が経っていたようで、青葉や曙、荒潮姉さんに翔鶴姉妹らが既に湯船に浸かっていた。司令官は居ないかと聞くと、やはりまだ来ていないようで、そう言えば書き置きすらも残していなかったことを思い出す。ゆっくり湯船に身を沈め、一息ついてから早足で彼の元に向かう。扉を開けると涙目の司令官がいた。言い訳する暇もなく私の身体は彼に引かれて、すぐに身動きが取れなくなった。しっかりとホールドされて抜け出すことは叶わない。けれどそうする気は毛頭ない。ぐすぐすと呟く彼を私からも抱きつき返す。すると頭を撫でられて、くすぐったくて少し恥ずかしかった。もう勝手に居なくならないでほしいと釘を刺され、あんまり悲しい顔をされるものだから断るに断れない。結局受ける以外の選択肢などない願いを承諾し、司令官を着替えさせる。間宮さん達の元へ手を繋いで二人で向かう。今朝一番に歩いた廊下とは違い、今は明るくて、暖かく、そして満ち足りた気分で窓の外を見る。海鳥がちらほら飛んでいるのが見えて、それがまた新鮮で目が離せない。朝食は味噌汁と白米。それからすりおろされた大根が隣に盛り付けられた焼き魚。ついでに沢庵もついているそれはおよそ朝食らしくないボリュームで、しかし魅力的だった。皆が続々と集まり始め、私たちは少し早めに食べ進める。加賀をはじめとして、大飯食らいの艦娘が大量に着任したことによって、間宮さんと伊良湖さんの疲労はおそらく今までと比にならないほどに跳ね上がっていると思っていた。けれど、二人の様子を見ると、笑顔が眩しくて、少しも苦に感じていないようだった。楽しげな雰囲気は見ているこちらも元気になる。パチンと手を叩き、食器を下げ、最後の身支度を済ませ、司令室へと足を運ぶ。飽きるほどにいつもと変わらない日常が、今日も始まる安心感。

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