「たくさん買ったからどんなコーデにするか悩むわね…。」
「なんでもやってみるもんよ!」
既に3回目の衣装替えである。色々な服を着るのは新しい発見としてなかなか新鮮なものだったが、それはそれとして何か大切な尊厳が崩れていく気がする。彼女らの楽しみとして今は受け入れているものの、こちらとしては少々疲れたというのが本音である。
「いつまでやるんですか?これ。」
「まだまだよ!こっちも楽しくなってきちゃったし!」
「クソ提督は暫く休業よ!」
「まあいいんですけどね…。」
30分程経っただろうか。霞が、突然髪型を変え始めた。
「あなたの髪結構長いからなんでもできるわね。」
そういうと、三つ編みや、ポニーテールなど、服装や化粧ごとに変えていく。
ジリリジリリと据え置きの電話が突然鳴る。一旦辞めさせ電話に応答すると、後輩からだった。
「先輩!諸事情で今からそちらに向かいます!突然ですみませんがこれで切ります!」
ガチャリと切られ、応答する暇もないほどに切羽詰まっているように感じた。
「はい。ここまでで終わりにしましょう。一応今日は仕事の日ですから。ほら、着替え手伝ってください。」
「仕方ないわね…ほら、曙。軍服持ってきて。」
「はいはい。」
2人からあからさまに落胆の感情が見てとれる。
散らばった服を全て押し入れにしまい、軍服に身を包む。髪は霞がどうしてもというので三つ編みのままで応対することとなった。
程なくして地響きのような轟音が聞こえてくる。
「ちょっと!何この音!まさか地震!?」
「いえ違います。彼ですよ。」
そう言って窓を全開にする。
「彼?」
その瞬間。後輩が開け放たれた窓から飛び込んできた。ダンッ!という音に鎮守府全体が重く揺れる。
「ありがとうございます先輩。てあれ?髪型変えたんですね。」
息も切らさずすくっと立ち上がるその姿は神社にある立派な像のようだった。
「はい。霞がどうしてもと言うので。」
「ちょっと待ちなさいよ!なんで窓から来たの!?」
「ああ、気にしないでください。ちゃんと靴は脱いでます。」
「ここは土足OKよ!じゃなくて!普通に来なさいよ!」
「霞。彼は学生時代からこうです。諦めなさい。」
曙は体を硬直させ、目を見開いていた。
「ところで、なぜそんなに急いでたんですか?」
「そのことなんですけどね、今日、先輩の鎮守府に刺客がくるらしいんです!」
「「「は?」」」
「いや、電報で聞いたんです。軍曹殿がですね…」
『彼のところに私の精鋭の艦娘を送ってみるよ。面白そうだろう?はっはっは。』
「と言われまして…。」
絶句である。本当に言葉が出てこない。
「悪い冗談はやめにしませんか?ほら、彼女らも怯えてしまいますし。」
「いやいや、冗談じゃないんですって!決行はもうすぐだって…だから心配で手助けに来たんですよ!」
「まあ君なら深海棲艦も素手で倒せるほどの実力はあると思いますけど…」
「「えっ」」
「ほら!こんなことしてる間に艦載機の音が近づいてるんです!早く隠れてください!」
「音?別に聞こえないわよね…?」
「え、ええ。」
「2人とも。彼は身体能力が異常なんです。こういう時の彼には従った方が得策です。ほら、逃げますよ。」
間宮さんや妖精さんを呼び出し、とにかく隠れられそうなところに逃げてもらう。霞と曙には、艤装を展開させ、後輩の援護を任せる。
「いつでも上陸できますが…本当に行うんですか?」
『うむ。いつでも構わんよ。派手にやってしまいなさい。ただ、ここはかつて私や、君たちの居た、懐かしの鎮守府であるということは頭の隅に置いておきなさい。』
「…了解。」