「軍曹。なぜか柳田がおりますが。」
『面白そうだったからな。彼も呼んだんだ。かなり強いからな?君たちでも無事では済まんかもしれん。』
「加賀さん。上陸はいつ頃に?」
「艦載機で音響弾を鳴らしてからよ。タイミングは赤城さんに任せるわ。」
「では早速…攻撃隊、発艦してください!」
勢いよく飛んでいく艦載機が一番被害の少ないところで音響弾を発破させる。
「では、上陸を。空母の私たちは再び終わりの合図を送るまではここで待機しますので。」
第六駆逐隊らを筆頭に、数十名の駆逐艦や軽巡艦が乗り込んでいく。偽装は最低限だが、並の人間ではまず力負けする精鋭達を送り込んだ。
「しかし、面白いという理由でここまで軍を動かせるのは尊敬します。」
『聞こえているが?』
「聞こえるように言ってるんです。」
『まあいい。とりあえず、電には怪我をさせるな?』
「最善を尽くしますが、保証できかねます。」
「第六駆逐隊!柳田と交戦中!増援を!」
鬼神の如き力で艦娘達を退ける後輩は、頼もしく感じるとともに恐ろしくも思う。工廠の資源置き場に妖精さんらと間宮さんとともに身を隠しているものの、ここから身を乗り出せばどうなるのか面白そうで仕方ない。後輩の闘い方はあくまでも艦娘を傷つけず無力化していくもので、鮮やかに行われていった。いつもは大型犬のような優しい雰囲気の彼がこんなにも暴力的に振る舞う姿は初めてみる。
霞や曙らは固まって動いているらしく、曰く
「襲撃なら迎え撃たなきゃ。」
とのこと。突然、館内放送で、
「桐原、聞こえているかな?貴様がこちらの終了の合図を出すまで逃げ続ければそちらの勝利だ。頑張ってくれたまえよ。」
「ちょっとあのジジイ殺ってきます。」
「落ち着いて!出ていくのは不味いです!」
「いや、あいつだけは確実にとどめを刺さなければいけないんです。」
「ダメですー!!!」
突然なる館内放送は軍曹の声で、同時に司令官の名前を知ることができた。
「あいつって桐原っていうんだ…。」
「なんで名乗らなかったのかしら?」
「…さあ?」
廊下の窓から外を見ると後輩提督が次々くる艦娘達を単独で押さえ込んでいる。演習用の装備ではあるものの、当たれば人間なら骨まで衝撃のいくはずのものを意に介さずただ蹂躙していく。しかし電だけは腕の中で拘束している。つまり、彼は片腕で渡り合っているのである。
「あの人だけは怒らせちゃダメね…。」
「同感よ。」
「霞達を発見しました!これより戦闘に入ります!」
声のする方に体を向けると、榛名が立っていた。
「榛名は大丈夫です!」
「私たちは大丈夫じゃないわよ!」
主砲をとにかく打ち込む。
「榛名は大丈夫です!」
全く同じセリフでズドンと重い一撃を打ち返してくる。やはり戦艦の装甲は堅牢で、ダメージが通っていない。
「霞!どうすんのよ!」
「どうするったってさっきの館内放送聞いたでしょ!あいつが捕まらなければいいの!私たちは別にこいつらに勝とうが負けようがどうでもいいの!ここは逃げる一択よ!」
「あ!ちょっと!置いてかないで!」
「高速戦艦の名に恥じない速さで追いかけちゃいますよ!久しぶりに楽しいことができるんですから!張り切っちゃいます!」
こうして鎮守府襲撃騒動が始まる。