「ねぇ…」
「なんです?」
「くるしい。」
汗だくのまま冷房にあたるのは良くない、とのことで半ば無理矢理湯船に浸からされる。それも、逃げ出さないように後ろからしっかりと抱きつかれている。
「まあまあ。ゆっくり長く入ることも必要ですから。それに、暫くあの格好ですからね。」
「私は納得してないし…それにあんな…うぅ」
今思い返すと実に馬鹿馬鹿しい。けれど、恥ずかしい。心ではやめなければいけないことはわかっているのに、身体がそれをやめられない。彼を求める気持ちが強すぎて、どうにも自制が効かない。
「可愛いかったんですけどねぇ。」
「もうそんなの効かないから!」
「ふむ…では耳まで赤いのは、私の気のせいだと?」
「そ、そうよ!気のせいよ!」
急いで耳が隠れるように手で覆う。恥ずかしくてついやってしまう。そして、覆った耳の中で反響する心音が私に現状を実感させてくる。熱くて熱くて、抑えようのないそれを必死に抑え込むフリをする。
「じゃあ、もうやらないですか?」
「やらないってわけじゃ…」
身体を一回転されて、向き合う。まっすぐな瞳で静かに見つめられる。ゆっくり目を逸らして、どうにか視線を逸らしたい。けれど、今度は顔を手で固定されて、いやでも見なければいけなくなる。極度の緊張で喉の奥から絞るような掠れ声が漏れる。それを聞いて、見て、彼が嬉しそうに笑う。
「何よぉ…」
「いえ?なんでもありません。」
湯船から上げられて、熱が引いていく。
「あんまり長風呂もよくないですからね。」
「ゆっくり長く、なんて言ったのはどこの誰かしらね。」
「さあ。忘れましたね。」
まったく、調子のいい男である。しかしこれも惚れた弱みというヤツなのかもしれない。せっかく汗を流して、さっぱりしても着る服は変わらず水着のまま。そろそろやめたい。
「何か羽織りますか?」
「…うん。」
取り敢えずということで司令官の軍服を羽織る。すると先ほどまでのことを思い出して、これも含めて包容されていたことがまた恥ずかしくて、体温が上がる。
「どうです?」
「…ありがと。」
司令室の中は変わらず冷えていて、火照った身体が瞬時に冷える。流石に寒いかと思ったけれど、彼から渡された服のおかげで適度に体温が保たれる。
「あれ、膝の上は来ませんか?」
「も、もう行かない!」
「そうですか…」
露骨に肩を落とされると、私もなんだか悲しくなる。けれど、ここで彼の所に行くとまた、例の流れになってしまいそうだったから、グッと堪える。秘書艦容用の椅子に腰掛け、暫く使用していなかったから気付かなかった柔らかさに驚く。ぽふぽふと軽く跳ねてその感触を楽しむ。
「…」
「何?」
「別に…無邪気で可愛らしいなあと。」
目元を人差し指と親指で押さえながら天井を見る彼の顔はいつになく真剣で、鬼気迫るものがあった。
「そんな顔しながら言われても困るわ。私、何か悪いことしたの?」
「強いていうなら心臓に悪いだけです。」
「なんなのよそれ…」