※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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喧嘩

「いくら青葉さんだからって武蔵は譲れません!」

「んな…!わ、私は別に武蔵さんのことは…」

「問答無用!です!」

なんと面白い組み合わせだろうか。私の姉と、信頼を寄せる仲間が言い争っている。しかし、その争うための原因が私にあるのだ。側から見れば訳がわからないだろう。現に私も理解できていない。二人の近くでじっと腕を組んで立っている。他は皆面倒くさくなることを見越したのかどこかへ行ってしまった。私が言って止まるものでもないので、ここは静かに見届けてみようか。

「確かに武蔵はすごい子です!でも、青葉さんの気持ちに応えることはさせられません!まだ早いです!」

「ですから、なんの話ですか!」

大和は無我夢中に謎の怒りを、青葉は赤面しながら必死に反撃に移る。しかし、私にはまだ早いとはどういうことだ?大和の方が詳しいことがあるとは珍しいな。

「武蔵!あなたはどう思いますか!?」

「そ、そうです!武蔵さん!この際はっきりさせてください!」

む…いきなりこちらに振られても、私にはさっぱりなのだが…。

「そうだな…取り敢えず勝負に勝った方が正しいと言うことにすればどうだ?」

「勝負?」

「もしかして…演習ですか?」

「いや、内容はなんでもいい。ただ、あくまで明確な勝利さえあればいい。簡単だろう?」

そうだ。揉めるなら、強い方の意見にすればいい。その勝負の内容がどうであれ。

「…勝負ですか。パッとすぐには浮かびませんね。」

「演習は…少し…遠慮したいですかねぇ…。」

大和は空を見つめ、青葉は苦虫を噛み潰したように私を見つめる。嫌がるのも無理はないだろうが、しかし勝負は勝負。大和は自慢の火力を、青葉は大和よりも高い練度と経験を活かせばいい。どちらにせよある程度白熱したものにはなりそうだ。

「は!いや…うーん…」

「これなら…いえでも…」

随分と長いな。私としては早めに済ませてしまいたいのが本音だ。戦艦の皆が海に出るのが見えたので、さっさとそれに参加したい。

「なあ、私が戻ってくるまでにどちらかの意見に決めておいてくれないか?私もあれに参加したい。」

演習組を指さしてそう告げる。二人はこちらに目もくれない。沈黙は肯定として受け取ろう。艤装を展開し、早速海へ向かう。天気、視界共に良好だ。

 

 

矢が空を切る音がピッと短く聞こえて、その少し後にバスッと的に直撃する。あたしはそれを少し離れた位置でお茶を飲みながら観察する。加賀の凛とした空気、翔鶴の丁寧かつ繊細な立ち姿、瑞鶴のかなりクセのあるフォーム。皆それぞれ個性が光る。けれど、矢を射る音と的に当たる音以外はこの空間には何一つ聞こえない。呼吸音は微かに聞こえるものの、いざ射るその瞬間には消え去り、一瞬で静寂を作り出す。束の間『ドッ』と音が響く。よく見れば瑞鶴が的を外し、脇の方に積み上がった砂に命中させたらしい。その瞬間に一気に緊張の糸が逸れ、和やかな雰囲気が広がる。

「わー、やっちゃった。」

「あなたの矢の打ち方は、わざとなのかしら。」

「んにゃ、違うよ。こうして身体を刎ねれば、私本体の的が細くなるでしょ。そしたらさ、相手からは狙い辛いし、私からすれば艦載機を射るだけでいいの。」

「…そうかしら?」

なんとなく最もらしい説明がされる。あたしにはイマイチよくわからない話だけれど、瑞鶴はかなり独特な射掛け方なのは素人目にも明らかだった。見ただけで詳しくは言えないけれど、加賀や翔鶴が両足を開き、腕を伸ばしながら弓を弾くのに対し、瑞鶴は身体をとにかく平行にしたり、無理に低い姿勢になって、そこから展開した艤装に弦をかけて矢を射る。随分器用かつ、的に当てる技術というのが余程洗練されたものだと思う。ついでに相手から軌道を読まれにくいというのも狙っているのかもしれない。けれど、それがどうにも複数の艦で行う戦闘向きかと言われれば、そうは思わない。どちらかと言えば、単艦で複数の敵を相手するようなイメージ?

「その射掛け方は理に叶っていないわ。早いうちに治しなさい。

「えーでも…」

「瑞鶴?あなたは、もう一人じゃないのよ?」

「…翔鶴姉?」

あたしは外野として、要らない意見は言わないつもり。でも、少し気になる。加賀と瑞鶴は昔の記憶がある。だから、腕にも自信があるのだと思う。しかし、翔鶴も弓の扱いはかなり上手い。

「あ、いえ…あなたを遺してしまったのを、少し引き摺っているんじゃないかって思っただけよ?」

慌てて訂正するが、まあ、大分遅いだろう。翔鶴も何かしらあるように思える。

「とにかく、瑞鶴。あなたは射掛け方を矯正する必要があります。どうしてもしたくないのであれば、あなた独自のその射掛け方で外さないよう訓練しなさい。」

「お、少しカチンときたよ。私はこの方法をあの時妖精さんと一緒に見つけたの。少しでも生き残れるようにって。だから、これにケチをつけるのは、いくら加賀さんでも許せない。」

「…悪かったわね。」

瑞鶴が珍しく怒りを前面に押し出す。あまりの気迫に加賀も少したじろぎつつ、短く謝罪をする。翔鶴は二人を宥めようと両腕を振り乱している。

「…取り敢えずあんたら、昼ごはんでも食べたら?もういい時間よ。」

こういう時になんとかできるのは部外者の私しかいない。そして、ちょうど全員がハッと我に帰り、一斉に食堂へ走る。気づかないうちに腹が減っていたということだろうか。先ほどまで揉めていたとは思えないほど息ぴったりな動きに少し笑みが溢れる。

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