ぼやけた意識がだんだんはっきりしてきて、視界も少しわかるようになる。私の目の前には司令官が…司令官?
「あ!」
「どうかしましたか?」
「いつの間に帰ってたの?」
「つい先ほどですかね。随分長いこと待たせてしまったようで。」
記憶が曖昧で、なぜ彼の腕の中で眠っていたのかわからない。それに、心なしか身体が熱い。でも、それを聞くのはあまりしたくない。なぜかはわからないけれど、半ば勘のようなもの。
「おかえり。」
「ただいま。」
頬を撫でられ、ほわほわと温かい何かで心がいっぱいになる。彼を待つ間ずっと物足りなかったものが解消されて、すっきりする。頬から手が伸びて、彼の指が私の耳に絡まる。
「ふわ…」
肩が跳ねて、衝撃に少し驚く。彼はお構いなしに続け、私はその刺激にピクピク痙攣する。そして満足したのか手が離れ、額を包むように手で撫でられる。
「んぅ…司令官…」
バクバクと心臓がやかましくて、上気する顔が熱い。彼の首の後ろに手を回し、無理矢理顔を近づけようとしたその瞬間だった。
「ゴホン。」
どこからか咳払いが聞こえる。それのせいで一気に冷静になって、音の出どころを探るために首を動かす。その先にはなぜかみんながいて、こちらを興味深そうに見たり、顔を背けたり、さまざまな反応を見せている。さらに、よく見るとここは浴場で、明らかにおかしかった。司令官の方を見ると、あからさまに嫌そうな顔を向こうに向けている。
「そう言うのは部屋でしなさい。」
「あなた方が余計なことさえ言わなければよかったものを…」
恥ずかしさで体温が酷く上がって、慌てて彼と距離を離す。一気に身体中に酸素が巡り、脳だけは揺れ続ける。私を見る目線が嫌に生暖かくて、それに耐えきれず思わず顔を手で覆い、逃げるように彼の背後に回る。
「そこに隠れても意味ないと思いますけど。」
「なん…なんでお風呂…?」
「流石に入らずに寝るのはダメかと思いまして。」
まっすぐな淀みのない眼差しが刺さる。
「寝てる時の霞はそりゃもうすごかったよ。まさかあんなに…ねぇ。」
「瑞鶴…?え?何?私何かしてたの?ねえ、ねえってばぁ!」
「それは流石に可哀想だしなー!みんながいる前で言うことじゃないもんなー!ねえ翔鶴姉!!」
「…そうね。あんなことをしていたんですもの…。」
二人が新しいオモチャを見つけたように細く口を開く。どんどん不安が膨らんでいって、どうにかなってしまいそうだった。
「青葉、気になります!後で詳しくお話しよろしいでしょうか!」
「いいよ!」
「だめ!」
「揶揄いすぎると泣くわよ。」
「その通りですよ。あなたたちも悪い冗談はやめにしなさい。」
「ふう。ま、面白かったしこの辺にしとこうかな。」
どこからが本当でどこからが嘘なのかがわからない。あそこまで息ぴったりに言われると全部が本当のような気がして、けれどそれも全員が口裏を合わせたものかもしれないと疑り深くなる。
「一旦落ち着いてください。とりあえず瑞鶴翔鶴青葉は風呂から上がった時に"詳しく"話を聞かせてもらいます。」
司令官の雰囲気が変わって、重くのしかかるプレッシャーを放つ。先ほどまで笑っていた三人が縮こまるように萎れて、加賀に抱かれた曙はそれを見て呆れたように首を振る。大和と武蔵はとっくに上がって、扶桑と山城三人は乳繰り合っていて、荒潮姉さんは私の方にじっと視線を向け続けている。何を考えているのか分からなくて、少し怖い。長門と金剛と伊勢は変わらず私たちを生暖かい目で見る。