「そんなに恥ずかしがることないですよ。」
「だってぇ…」
彼曰く別に何も起こしていなかったらしいけれど、それでももしかしたらと思って彼を直視できない。もう寝るばかりではあるのに来ない眠気のせいで羞恥心ばかりが大きくなる。
「ひあっ」
彼の手が私に触れて、頭をなでる。ほどいた髪が手櫛で梳かれて力が抜ける。耳朶を揉みこまれ、頭が変に浮き上がる。
「んう…くすぐったい、からぁ…」
「そんなことありませんよ。」
優しい指遣いでだんだん変な気分になってきて、奥の方がなんだか熱い。もっともっとと急かして、彼のことを求める。それを知ってか知らずか彼は更に私のことを弄ぶ。
「うぁ…ん…」
鳩尾のあたりが縮むように苦しくて、彼の服を掴む。突然廊下から足音が聞こえて、それと同時に話し声も聞こえる。彼は止める気配などなくて、むしろ私に声を抑えるようにと注意する。
「ふぇ…や…むりぃ…」
骨抜きになった私のことを見下ろす彼が、突然唇を重ねる。確かに声は抑えられるだろうけど、これは逆に私が耐えられない。脳から分泌される物質で一時的に全身が麻痺したような感覚を味わう。
「んふ、ふぅ…んっ!」
舌が絡み、尚も動かされ続ける指でまたおかしくなる。もはや、口を抑える本当の目的を見失っている。当の昔に足音は消えていて、少し遅れて唇が離れる。
「っあ…う…」
「そろそろ寝ますかね…」
そう言う彼の目には疲労が溜まっていて、そういえば別の鎮守府に応援に出ていたことを思い出す。昂まった気分を抑えつつ、彼と手を繋いでベッドに転がる。私は眠くないし、もっといえば後数時間は起きていられそうだった。
「おやすみなさい。霞。」
「ええ、おやすみ。」
彼が私を抱き寄せて、すぐに寝息を立てる。余程疲れが溜まったようなので、どうにか労わっておけばよかったと今更ながら後悔する。取り敢えず、今からでも頭を撫でるとか、私からも抱きつき返すとか、簡単なことでもしてあげたい。
「ん…!」
まずは、彼のことを目一杯抱き締める。暖かくて、安心して、少し危うい。彼の方も反射のせいか私の身体に弱い力で腕を回す。そして、一つ悪いことを思いつく。彼が寝てしまっているのなら、その間は何をしても起こさなければ彼にバレることはない。
「すぅ…はぁ…ん…ふ…」
思い切り彼の至近距離で深呼吸する。平常時なら絶対にできないけれど、今この瞬間は私しかこれを感知していないから堪能できる。けれど、どうやら眠気は一向にやってこないらしい。もう少しだけ、こうしていよう。