「もう寝るんですから。早く行きましょうよ。」
「やだ。まだ入るの。」
「明らかにのぼせているじゃないですか。これ以上はダメです。」
「あ、や、やだぁ。」
霞を引っ張り出し、、熱く湯気の舞う風呂場を後にする。全身が火照って紅潮している彼女はむっと顔を顰めながら私のことを睨む。扇風機からの風を当てると目を閉じ、自然に口が開く。やはり彼女の身体は限界に近かったらしい。
「はぁ…」
「やっぱり熱かったんでしょう?」
「違う…けど…司令官ともっと入りたかったの…。」
「そんなこと言ってもダメなものはダメです。」
彼女が一際大きく口を開き、目に涙を浮かべながらその後に口を閉じて鼻から思い切り息を吐く。随分大きな欠伸である。仕事のせいもあってか疲労が蓄積していたようで、眠いのかも知れない。
「ほら、早くこれ着て。」
「…ん。」
虚な目と覚束ない足取りで危なげに服を着る。この単純な動作だけで心配させられるとは思いもしなかった。
「…ん。」
手をこちらに差し出して連れて行けと言っているような無言の圧がかけられている。いつの間にこんなに甘えるようになったのだろうか。別に構わないのだが。むしろ嬉しい。
「ふあ…んむ。眠い…。」
「今日はもう寝るばっかりですから。ゆっくり歩いてくださいね。転ぶと危ないですから。」
「司令官が助けてくれるから別にいいわ…。」
目を擦り、唇を尖らせながら不機嫌そうに付いてくる。向こうからはなぜか長門が歩いてきて、私たちを見て少し笑う。
「ふ…。一体どうしたんだ?」
「もう眠いみたいですよ。」
「昼間はあれ程恐ろしかった霞が今は見た目相応の弱々しさを見せるとはな。意外だ。」
「んー…」
「今はもう霞とは会話は難しいですよ。用があるなら、是非明日お願いします。」
「そうだな…別に用というほどでもないが、明日またこよう。ではな。」
随分と清々しい笑顔で私たちの脇を抜け、後から鼻歌も聞こえる。そんなに上機嫌になる程長門にとっては良いものだったらしい。
ベッドの上に霞を寝かせると、徐に私のことを抱き寄せようとする。抵抗をせずにそれに委ねていると、ぐっと強く引かれて勢いよくベッドに落ちる。
「司令官…すき…。」
「ええ。ええ。私も好きですよ。」
高い体温と上機嫌な喉から漏れる声が異常なまでに魅力的で、私の身体に絡みつく彼女の腕が細く柔らかいのがしっかり感じられる。頭を撫でるとどこから出しているのかわからないキュウと言う声もまたクルものがある。