「ここが提督の今の鎮守府ですか。」
「案外綺麗なんですね。」
「ええ。だいぶ古いはずですけどね。」
「とりあえず工廠か例の艦のところに案内してもらっても?」
「もちろん。」
あまり見たくない光景を見た様な気がして、反射的に身を隠す。桃色の髪の女性と、水色の髪の女性を侍らせて帰ってきた司令官の顔はよく見えなかった。けれど不安感は消えなくて、嫌な妄想ばかりが広がる。
「曙…その…司令官がね、」
「あれがどうかしたの?というか、間宮さんに呼ばせるとかどういう了見なのかしら。」
「そうじゃなくて、なんか、知らない女の人と一緒に歩いてて…」
「…は?」
妖精さんに簡潔に説明したあと、早速点検作業に入る。小慣れた手つきでチェックし、バインダーに挟まった紙に次々と印をつけていく。少々顔に煤をつけながらこちらへ向かってくる。
「少し不味いですね。確かに妖精さん達のおかげで延命はできていた様ですが、それでも直せない箇所が目立ちます。今航海に出れば艦底がパックリ割れて浸水すると思います。」
「それほどですか。」
「もともとガタガタだったしね〜。ま、私たちにかかればすぐ直るわ!」
「それまではあそこにいる娘とお話でもして待っていてくださいよ。」
夕張の指差す方向には霞がいて、慌てて顔を壁の裏に隠したのが見えた。しかしそれでも隠れていないサイドテールが揺れ、その後再びゆっくりと覗き込む。仕草が見えた。
「では、お言葉に甘えましょうかね。」
「あ、一応お二人ともここにいてくださいね。何かあった場合にあなたがいるのが一番楽なので。」
彼女らに短く手を振り、霞を迎えに行く。壁の裏の彼女が段々と近づいて、もはやゼロ距離と言っていいほどの距離までくる。不安に駆られる彼女の目は少し潤んでいて、小動物の様な可愛らしさを感じる。
「司令官…あの人たち誰なの?艦娘みたいだけど…」
「工作艦の明石と軽巡の夕張ですよ。あの艦を治すためにわざわざ呉から来てくださったんです。おいで、一緒に見ていましょう。」
「え、ええ!?」
グッと手を引き、少し離れたところに椅子を置いて腰掛ける。霞は少し恥ずかしいのか水着を手で隠している。明石や夕張にも水着は着せられている…というか、あそこで久しぶりの再会の時も大淀や明石達は水着だった。一応出張という名目なので制服だが、本来ならば二人は今の時期、霞のように水着を着て作業しているというのだから実におかしい制度である。
「膝の上には座りませんか?」
「やらないわよ!そ、その…み、見られちゃうし…」
「惚気るのは構いませんけどもう少しお静かにお願いします〜。」
「これ以上湿度上げないでくださ〜い。」
霞の顔がポポポと赤く染まり、その様子を二人は面白そうに見る。無論私も霞のことを見つめる。しかし、掌で押し除けられ、機嫌の悪そうな顔をされたのが少し悲しかった。