「うん。これなら退院してもらっても構わないよ。ただ、再発する可能性も全然あるから、暫く安静にしておくように。」
「はい。ありがとうございました。」
病院に別れを告げ、迎えにきた霞と曙と共に鎮守府へ帰る。
「しかしこの道、猫がいた道ですよね?私猫無理なんですけど。」
「知ってるわよ。だからもうちょっと歩いたとこにあんたのお気に入りの戦艦持ってあげたから。それに乗りなさいな。」
「お心遣いに感謝します。」
「脚とか大丈夫なの?」
「ええ。痛みもありませんし、違和感も特にないですね。ただ本当に謎なのがなんであの状態になったのかですよ。何かワケがあるはずですよね?2人なら知ってるかと思いまして…」
「「教えないから。」」
「ええ…。」
久しぶりにのる艦は安心感が違い、精神的にもかなり嬉しかった。鎮守府では、間宮さんが出迎えてくれたものの、少し距離を置かれているような気がした。
「あの、間宮さん?私、何かしてしまいましたか?」
「あっ、いえ、その、そう言う訳ではないとはいえないんですけど…」
「色々すいません。正直あの日のことを覚えていないんですよ。何があったか教えていただけます?」
「それは言えないです…。」
「あんまり間宮さんいじめちゃダメでしょ司令官。ほら、さっさと前回の続きするわよ。」
「えっ」
そのまま日が暮れるまで服を着ては脱ぎ着ては脱ぎを繰り返した……。
「2人とも、流石にもういいのでは?」
「うーん。まあ大体満足かな。」
「そうね。じゃ、ちゃっちゃと片付けてお風呂入りましょ。」
ようやく解放され、風呂へ向かう。そのままじっと湯船に体を沈めていると、だんだんと瞼が重くなったので、ザバっと勢いよく上がる。
「どうしたのよ突然。」
「いや、眠くなったので…。今日はもう寝ます。また明日。」
その日は泥のように眠った。
翌日、霞に起こされ目が覚める。
「手紙。大本営からよ。」
「またですか。暫くは懲り懲りですよあんなとこ。」
「文句垂れないの。ほら、早く読みなさい。」
くだらない内容ならばすぐに破り捨てるつもりだった。
『先日はすまなかった。本来ならば私がここに到着した時点で伝えるつもりだったのだ。本題に移ろうか。君に、前回勤めていた鎮守府へ向かって欲しい。ただ、彼女らの混乱を招いてはいけないので、必ず変装し君だとバレないようにして欲しい。向こうの鎮守府の提督の血縁者という体で話をしている。あとは君の了承に委ねられている。いい返事を期待させてもらうよ。』
内容は全く予想だにしていないことだった。
「前回の鎮守府に行けばいいらしいですよ。」
「へぇ。じゃあここは本当になくなるってこと?」
「いえいえ。あくまで視察に向かうだけですよ。恐らくは向こうの提督が指揮を取れないとかその辺でしょう。もっともそんなことになるとは思っていませんが。」
「そういうことだったのね。で、いつ行くの?」
「さあ。追って連絡が来るとは思いますよ。それと、変装して来いとのことなので、この前大量に買った衣服や化粧品で化けさせてもらえますか?」
「腕がなるわね。任せなさい!」
その時、突然司令室のドアをバンと曙が開けた。
「クソ提督!いいものできたわよ!」
「勝手に資源を使ってはダメですよ。ドアも優しく開けてください。」
「ごめんごめん。それより!これ!」
曙の手には人間の左腕が乗っていた。
「曙?これは?」
「何って義手よ!妖精さんに頼んでとにかく精巧なものを作ってもらったわ!外装はあんたがこの前つけてたマネキンの腕を参考にさせてもらったわ!」
確かに腕の付け根には固定するためのベルトのようなものが施されていた。
「どうも。早速付けても?」
「構わないわよ!」
肘のあたりに断面を当ててみると、ベルトが勝手に作動し、完璧な位置で固定された。試しに動かそうとしてみると、違和感はあるものの、問題なく作動した。
「すごいですねこれは。まるで腕が新しく生えたようです。」
「なかなか精巧にできてるじゃないの。すごいわね曙。」
曙はふふんと胸を張っている。
「ただ、日常生活ではあまり使わないかと。腕があるのは便利なんですけど、腕のない生活も慣れてしまったので。」
「そうだったの…。いらなかった?」
「決してそういうことではないです。今度前の鎮守府に行く時使わせてもらいます。」
「え?なにかあったの?」
「はい。視察に来て欲しいと言われたので。」
「最近のあんたはここを離れてばかりね。」
とりあえず手紙で了承する旨と、変装は好きにさせてもらうことを書き記した。