「艤装なしで入る海とは新鮮だな。」
「何度か来てますけどね。それでも水面に浮かないのは少し抵抗がありますけど。」
素晴らしい快晴で絶好の海日和。この場の全員…腰をやった霞とその看病をするクソ提督以外の全員が水着を着て海に向き合っている。あたしはあんまり動きたくないからパラソルの下で他のみんなを眺めてる。
「曙、一緒にどうですか?冷たいですよ。」
「知ってるわよそんなの。楽しそうなあんたらを見るだけで十分。」
「…そうですか。」
加賀はあたしのことを諦めて翔鶴達の方に混ざりに行った。海水を手で掬って掛け合うだけのことでも随分楽しそうにしている。隣に座る大和からもらったラムネを飲みながら思考を青い空の中に放り込んでいると、雲の流れを感じ取れる。大和も、特に何をいうでもなく青葉と武蔵のことを見守っている。
「あんた、随分穏やかね。青葉のことずっと敵対視してるのかと思ってたわ。」
一瞬こっちを見た後、すぐに笑って口元を手で抑え、まるであたしがおかしなことを言っているかのような仕草をされる。
「ああ、すみません。別に青葉さんのことをそういう目で見ているわけではないんです。」
「じゃあ何よ。可愛い妹が取られちゃうんじゃない?」
「私は、武蔵がしたいことをしてくれるのが一番ですから。大和がその障害になるというのなら、いつでも離れる覚悟はできていますから。」
「覚悟ってことは本当は嫌なわけね。」
「それはそうですけど…。でも、武蔵には自由に生きてほしいんです。私たちは決戦兵器として生まれましたから、艦隊を組むことも、まして戦闘なんて殆どありませんでした。自由に海を駆けることは叶わなかったわけですから。最初はどれだけの期待を背負ったのかもわかりません。けれど、次第に用済みになっていって、最後は囮となって彼女は沈んでいってしまった。」
「…」
「私も、最後はここから遠く離れた海の底に沈んでしまいました。霞と同じ日、真っ二つになって。」
おかしい。こんな暗い話をするつもりはなかったのに。
「あー、悪いこと聞いたわね。」
「いえいえ。でも、結局のところ、離れたくないのは私の方かもしれません。」
「そりゃそうでしょうね。」
「…ですから、あの子に拒絶されたくありません。ずっと隣にいて、笑っていたいです。」
「なら行って来ればいいじゃない。絶対拒絶されないわよ。」
「そうとはわかっているのですが…青葉さんといる時の方が、なんとなく生き生きして見えて…近寄りがたいんです。」
「へぇ、超弩級戦艦サマもそんなこと思うのねぇ。」
「そ、そんなんじゃありません!」
大和は、結構揶揄うと面白いのかもしれない。今も必死に腕を振り回して否定しようとしている。
「ま、どっちでもいいけど、話せる内に話しておかないと損よ。いくらここが平和そうに見えるからって、いつ沈むともわからないからね。」
「…わかりました。お話聞いてくれて、ありがとうございます。ラムネ、置いておきますね。」
「ん、あんがと。」
そして、意気揚々と飛び出した大和がほんの数秒後に砂が熱いと文句を言いに戻ってきたのには笑いを堪えることはできなかった。