特段することもなく、事件が起こるわけでもなく、雨が静かに降る夜を過ごす。ベッドの上に座っているとなんとなく思考がスッキリするような気がするのは私だけなのだろうか。
「早く寝ましょう。もう遅いですから。」
「まだそれほどじゃないわ。ね、少しお話ししましょ?」
掛け布団を捲る彼に食い掛かるように言う。一瞬硬直した後になぜか頭を撫でられた。
「ん…?」
「まだ寝たくないですか?」
「うん。もうちょっと。」
その後に頬も撫でられ、身体を預けるように倒すとしっかり支えてくれて、体温が伝わってくる。ぽかぽかする独特の感覚に酔う。解いた髪を結び直し、サイドテールではなくポニーテールにしてみる。しかし、慣れていないと言うこともあってか少し崩れてしまった。まあ、あまり気にしないでもいいか。
「で…何を話したいんですか?なんでも聞きますよ。」
「そう?じゃあ早速なんだけど…その、荒潮姉さんのこと…どう思ってる?」
「元気のいい子だと思いますよ。それに、結構優しいですしね。時々目に余りますが。」
求めていた返答ではなくて、少し複雑な気分。一応同型艦だし、それ以前に同じ駆逐艦ということで土俵は同じなわけで、だからこそ司令官の好みにはまってしまうんじゃないかとすこし危機感から出た質問だった。
「本当?本当にそう思ってる?」
「これが本心ですが…何か気に障りましたか?」
「ううん。ありがと。じゃあ、伊勢は?」
「まだ日が浅いのでなんとも。ただ、戦艦の中でも随分潤滑油として活躍しているみたいですね。この前は少しアレでしたけど。」
伊勢は、個人的にかなり警戒していて、理由はかなり単純だけど、身体つきが戦艦の中でもかなりすごくて、魅力があるから。それに、普段の会話からもなんとなくそういうことを匂わせるようなことを言っているのを聞いたことがある。
「翔鶴は?」
「瑞鶴の姉というだけあって似ているところもありますよね。性格は全くですけど。」
なんだか評価がやけにふわふわしていて、曖昧な感じで答えが返ってくる。今日見かけた格好は随分派手で攻めていたのが気になったけど、彼の眼中にはなかったらしい。
「じゃあ長門!長門は?」
「頼もしいですよ。この前も仕事を手伝ってもらいましたし。結構真面目ですからね。」
私の知らない情報が飛び出してきた。いつの間にそんなことをしたのだろうか。まあ、それはいい。きっと恋愛感情的なものは長門には向けていない。しかし、今挙げた子たちの中では間違いなくトップクラスに気に入っている。
「大和は?」
「大和も…特にありませんね。強いていうなら曙の運が強かったと…それくらいですかね?」
彼女はどこか箱入り娘的な危うさや無苦さが感じられる。それに、物腰も柔らかいし優しさも人並み以上にある。だから、そういうところにもしかしたらと思った。
「金剛はどうなの?」
「…何を探っているんですか?」
「なんでもないわよ。」
「…ええと、特にないというか…金剛という艦娘は基本ああいう感じとしか思っていないですから。今更評価がどうこうとは…。」
金剛のことはあまりいい風に捉えていなさそうに見える。私としては元気があるし、少し特徴的な話し方ではあるけど、それも個性として見れる。それに、呉のところの金剛と比べたら笑ってしまうほどの差があるから、結構興味深い。彼女の恋路の行方もそこそこ楽しみではあるし。
「なら扶桑は?」
「妹想いでいい子なんじゃないですか?あなたに砲塔を向けたのは許しませんけど。」
扶桑は、普段は基本的に自室に篭りきりで、妹の山城たちと過ごしている。あまり司令官の前に姿を現すことがないから印象が薄いのかもしれない。それなら…
「じゃあ山城は?」
「扶桑のことに一生懸命なところは流石ですね。艦娘でない山城二人も結構楽しく過ごしているようですよ。間宮さんや伊良湖さんからも評判です。よく朝食の仕込みを手伝ってくれるのだとか。」
こちらは扶桑とは真逆で結構知っているらしい。あんなに黒猫に怯えていた人と同一人物だとは到底思えない。それに、ある意味ではお互い猫嫌いだからもしかしたら気があっていたりするかもと思った。
「じゃあ…」
「もうよくないですか?なぜそんなにあの子たちの評価を気にするんです?」
「それは…あんまり言いたくない…」
だって、本当のことを言うのは少し気が引けるし、目的を知られて幻滅されてしまうのも嫌だから。けれど、真っ直ぐにこちらを見つめられると弱くて、つい口が滑りそうになる。
「これが最後!」
「…いいでしょう。」
「私はどう?」
「私はあなたのことを高く評価していますし、一人の艦娘として、そしてパートナーとして非常に頼りにしていますよ。一挙手一投足全てが気になりますし、あなたの思っていることを全て把握したい。それに、何事も一生懸命に取り組む姿もね。まあ、言ってしまえば好きです。一番。」
「…そう。」
途中おかしな言葉も聞こえたような気がしたけれど、最後の方なんかはかなり気恥ずかしいことを言われた。微妙に顔があたたかくなって、どうすればいいかわからなくなる。
「さ、早く寝ましょう。夜更かしは良くないです。」
「…もうちょっとだけ。」
座っている彼に抱きつき、離れないように少し力を込める。彼もまたそれに返すように包もうとしてくれて、でも片腕がないから少し変になる。でも、そこも含めて彼を愛しているから、別に構わない。