「部屋割の変更ですか?」
「そうなの。金剛が最近ひどくて…」
伊勢曰く、金剛が毎日自分や長門を寝る前に誘って長時間話をするのに参っているらしい。なんでも一人は怖いだとかで、寝るまで延々続けるものだから困っているらしい。
「だから誰か金剛と一緒に過ごしてあげられる子がいればと思ってるんだけど…。」
「あなた方ではいけないんですか?」
「私たち基本一人に慣れちゃったし、お部屋の広さ的にも流石に難しいから。」
「ふむ…一旦皆さんに相談して、それでもどうしようもなければあなた方のどちらかが同じ部屋になるか、最悪もう一人建造で迎え入れるかしかないですよ。」
「そう…じゃあ相談してみるわね。」
少し肩を落としながら大きくため息をつき、チラリとこちらを見た後にもう一度ため息をして司令室を後にした。
「金剛にも困ったものね。一人じゃ怖くて寝られないなんて。」
「あなたもでは?」
「そんなことないわよ!べ、別に一人でも寝れる、し…。」
なぜか涙ぐみながら必死に否定され、それが無性にゾクゾクする。やはり彼女は素晴らしい。
「落ち着いてくださいよ。別に本当に一人で寝ろなんて言いませんから。」
「ちが…そういうことじゃないわよ!」
別の子とは言っても、誰がこれに了承してくれるかはわからない。まず除外の対象としては扶桑山城に曙と加賀。前者は絶対了承しないし、後者は恋人同士だし、流石に気が引ける。次いで難しそうなのは、大和武蔵と翔鶴瑞鶴。姉妹艦同士の部屋は変えない方がいいと思う。
「へぇ〜、そんなことがあったんですねぇ。」
「で、青葉たちに白羽の矢がたったわけですか。」
「そうなの。ごめんなさいね突然こんなこと言って。」
二人ともそれほど交流もなさそうだし、なんとなく相談もできるかと思ったから話してみた。
「私はどっちでもいいわよ〜?」
「ええと…私は今の荒潮ちゃんとの部屋から変えたくはないと思うのですが…」
「あらあら…うふふ。」
「そう、なら他をあたってみるわね。」
青葉の顔にははっきりと嫌だと書かれていて、荒潮はそれを見て口元を押さえながら細く笑みを浮かべている。すごく嬉しそう。
ダメ元で色々巡ってみたものの、全員良い反応は示さなかった。武蔵だけは構わないと言ってくれていたけど、大和がそれを許してくれなかったから諦めるしかなかった。原則として本人か同居人のどちらかが拒否すれば無理強いはしないことに決めていたから、そりゃあ見つかるのもほとんどないわけで。
「ねえ長門。金剛と同じ部屋になれたりするかしら。」
「…すまないな。難しいだろう。」
「そうよねぇ…わかったわ。ごめんなさい。」
一度金剛の部屋に行ってみようか。もしかしたら自分が入りたくなることがあるかもしれない。
「金剛、いるかしら。」
「ドウゾ。」
「お邪魔するわね。」
扉を開けた先に広がるティーセットにいつも驚かされる。どこからどのタイミングで仕入れたものなのかを教えてもらったことはない。
「何かアリマシタカ?」
「いえ…少しお話しでもと思って。」
その瞬間明らかに目の色が変わって、浮き足立ちながら紅茶の用意を始める。本当に、こういうところは可愛らしいのだけれど、いかんせんそれ以外の部分に残念なところが目立ってしまう。霞がいるのにわざわざ提督を狙ってしまうところなんかは特に。別にそんなことしなくてもいいと思ってしまうから余計そう見えるのかもしれないけれど。
「ハイ、少し熱いデスヨ。」
お茶を淹れるセンスもある。平常時は気立も良くて、それにかなりの美人さん。なのに今は金剛が原因で私たちが四苦八苦してしまっている。どうにも歯痒い。本当のことを伝えればこの眩しい笑顔は消えてしまうと思うとそれも気が引け、言おうとした言葉とは違うものが出てしまう。