実際話をするだけなら全然問題ないし、結構楽しいから、その分こちらも熱くなってしまうというのもあって、一方的になんのかんのは言えない。
「ねえ金剛…」
「ドウシマシタ?伊勢。」
「…いえ。やっぱりなんでもないの。」
「なんだか様子が変デスネ。体調が優れまセンカ?」
「違うわよ。私は大丈夫。」
察しのいい金剛には些細な変化を見逃さずにものを言う姿は流石。けれど、金剛のためにもこの事実は伝えてあげなければ可哀そうだ。
「…ねえ金剛、夜のお話のことなんだけど…。」
「ん?アレデスカ?えへへ、今日はちょっぴり特別なお茶を用意しようかと…」
「あれ、頻度を下げることはできないかしら。」
「…え」
そう言った瞬間時間が止まり、何一つ聞こえない静寂が響いた。徐々に目頭に水を溜め、細かく震え始める彼女の姿が嫌に幼く見えた。手に持っていた白色の綺麗なポットが机に落ち、中身が溢れる。
「ごめんなさい。私もこんなことは言いたくないけど、でもそれのせいで最近寝不足気味なの。私も長門も。だけど、辞めて欲しいわけじゃなくて…」
「ソウデスカ…ワカリマシタ。」
ハッと我に帰ったように溢れた紅茶を拭きながら悲しそうな顔を浮かべつつ、しかしこの提案に了承してくれる。
「あと…あなたと同じ部屋になってくれる子を探してるの。やっぱり…」
「ありがとうございマス…でも、大丈夫デス。私一人でも、大丈夫デス。」
「…そう。ごめんなさいね。少し、ひどいことを言ったわ。」
「そんなことないデスヨ。私の方こそ、すみませんデシタ。」
異常に気まずい時間が流れ、この部屋に居づらくなる。表面上は平静を取り戻した金剛が一生懸命に明るく振る舞おうとする姿は痛々しくて見ていられない。しかし、それほどにルーティンとして馴染んでいたんだということがはっきりとわかる。そしてそれをほとんど否定されたことの衝撃はそう簡単には収まらない。
「えっと…私、そろそろ行くわ。紅茶、美味しかったわ。ありがとう。」
「…ドウモ。」
部屋を後にした時の虚無感は、今までに味わったことのないほどに辛かった。もちろん、身構えていなかったわけではないけれど、いざその様子を見てしまうとクルものがあり、ちくちくと胸が痛む。罪悪感でいっぱいだった。
「ソウデスカ…あの時間は、二人とも迷惑だったんデスネ…」
虚無感に苛まれながら、ティーセットのお手入れをすると、なんとなく気分が紛れる気がして、ほんの少しラクになるヨ…。デモ、やっぱり悲しいネー。勝手に涙は出ちゃうし、止め方もわからないし、艦の頃はどんなに辛くっても泣かないで済んだのに…不便なカラダ。今日はちょっと…部屋から出る気にナリマセンネ…。確かに、私の我儘でお二人を巻き込むのは良くないデス。だから、こうやって言われるのは遅かれ早かれ言われてたわけで…デモいざ言われてしまうと…どうにも気持ちが落ち着きマセン。
「…金剛?」
目を開いて窓の方を見ると、太陽がほとんど沈んでいて、扉の外から聞こえた伊勢の声が聞こえマス。
「よかった…いたのね。」
「何かご用デスカ?」
「ううん。謝りにきたの。」
「…why?」
手を後ろに回して、複雑そうな顔でこちらに歩いてくるのが少し怖くて、けれど様子からしておかしなことをするようなものでないことはすぐにわかりマス。第一、悪いのは私なのになぜ謝るなんて…
「さっき、提督に相談してみたの。そしたらあの人、なんて言ったと思う?」
思い出し笑いを堪えながら言われてしまうと、それだけで興味を掻き立てられてしまいマス。けれど、全然imageが湧きまセン。
「ワカラナイデス。なんとおっしゃったんデス?」
「うふふ。提督ったら、『壁を破って一つの大きな部屋にしてしまえばいい。』なんて行ったのよ。」
「はえ?」
「で、私もそれは流石にって言ったの。」
「そりゃあそうデスヨ。」
「そしたらね?妖精さんに頼んで私たちの部屋の間の壁に扉をつけるように頼んでくれたんですって。」
「扉…?でもそんなの…あ。」
恐らく私が眠っている間に妖精さんがやってしまったと思われる扉はそこだけ真新しくて妙な光沢がありました。
「だからね、問題は解決しちゃったわ。」
「ソウデスカ…なら…」
「ええ。今夜もお話ししましょ?長門は少し難しいかもしれないけど。」
「長門が?例の寝不足デスカ?」
「違うの。少し出張に行ってたらしくて。」
「大変デスネェ。ハッ!そのうち私たちも…」
「あるかもしれないわね。」