コンコン、コンコン、と一定のリズムで響く音で目が覚め、少しボケた思考が復活していく。音の出所は恐らくは新しく追加された扉。部屋の照明をつけて、そこへ向かう。
「どうしたの?もう遅いわ。…違う。早すぎるわ。」
「ソノ…怖い夢を見てしまって…一緒に寝て欲しいんデス。」
日付の変わって数時間。まだ夜は終わっていなかった時間帯に彼女はやってきた。よく見ると体の前に枕を抱いて、少し涙目のままそこに立ちっぱなし。可愛らしく着こなされた寝巻きとふわふわの茶髪により可憐さを演出されながらそっと迎え入れる。
「ここよ。ここ。」
「ヒエェ…暗いデース…」
「暗いところは嫌い?」
「ハイ…」
涙が止まらないのか未だに鼻を啜る音が聞こえる。
「ほら、泣き止んで。もう寝るわよ。」
「…what?」
「…あら?おかしいわね。ずっと啜り泣いていたんじゃないの?」
「ヒエ!?そ、そんなことしていま…」
その瞬間、ガタガタガタッと棚が揺れ、大きな音に突然のことで対処できなくなる。
「っ!何!」
「ウワァァン!」
「ちょっと、金剛、しっかりして!泣かないで!」
今度はしっかり金剛が涙を流していて、両腕で溢れないように必死に抑えている。長門は結局出張からは帰っていないから音が大きくて彼女が怒るということはない。それに、この部屋は他の子達よりも少し離れた場所にあるから、騒音としてはそれほどでもないし、逆に助けを求める際は、非常に使い勝手は悪くなる。
「い、伊勢…怖いデスゥ…」
「お、落ち着いて、大丈夫。大丈夫よ…」
しっかりと金剛を抱き留め、頭を撫でる。これでいいかは知らないけれど、何もしないよりはマシ。先ほどのような怪現象は一旦鳴りを顰め、しばしの静寂があった。電気をつけて棚を確認したところ、特段配置が変わっていたとか、何かが落ちてしまっているとかは起こっていないらしい。
「ふぅ…ふぅ…もう…大丈夫デスヨネ?」
「…まだわからないわ。きっと幽霊かもね。」
「Ghost!?い、イヤデス!コワイデス!タスケテホシイデス!」
幽霊なんてあまりに幼稚で馬鹿馬鹿しい妄想だけど、艦娘という謎に包まれた存在に自分がなっていると考えれば不思議はないかもしれないと無理矢理納得し、そしてここが昔も海軍の鎮守府として扱われていたことと、最近まで放置されていたことを思い出す。それくらいの歴があれば、幽霊の一つや二つ、現れても不思議ではない。
「まあ、こういうところに幽霊話ってのは、セットでついてるわよね。」
「アウアウ…」
そろそろ限界を迎えそうな金剛を優しく布団まで導いて、少し狭いながらも一緒に潜り込む。少し詰めればそこそこの余裕はあり、辛くはない。柔らかい金剛の枕を置いたものの、ずっと私の胸に顔を埋められているからあまり意味がない。
「ねぇ、金剛。」
「…どうかしたデスカ?」
「枕、使わないの?」
「伊勢のオッパイの方が柔らかいので今はいりマセン。」
そう言われ、両掌で胸の側面を何度か触られる。そして、気が済んだらまた胸に顔を埋められる。
「それ楽しい?」
「癒されマス…。」
「なら、私もやっちゃおうかしらね。金剛、触るわよ。」
「エ」
金剛の綺麗な形の胸を手で包み、撫で回すように触る。そうすると敏感なのか少し体が痙攣する。ふわふわで柔らかい胸を撫で終えて、すると存外気分がいいことに気づいた。
「ハゥ…伊勢、その…こういうコトは…まだ早いといいマスカ…」
「あら…?こういうこと…?」
なぜか恥ずかしそうに髪を握り込みながら胸を抑える彼女に困惑する。別に少しやり返した程度なのに。
「まあ、いいじゃない。そんなにここが良ければ、今日はもうここに埋まっちゃいなさい。しっかり寝て、明日に備えましょ。」
「あ…エエ…。」
物欲しそうな声が少し聞こえて、それから短く了承される。もう騒音は聞こえなくなってしまったし、金剛の涙も震えも停止した。お互いの体温が直に感じられる空間であり、そして狭い。明日は恐らく筋肉痛だろう。