「…おや。」
「あ。」
汗を流すためにお風呂に入りに行ったら、曙と加賀がいた。別に珍しいことでもないけれど、この時間に会うと、ものすごく気まずい。お互いに特に何も言わない時間が過ぎていくことなんてざらにある。
「お二人もですか?」
「ええ。そんなところです。」
「仲のよろしいことで。」
「あら。あなたたちも同じなのでは?」
そう。こんな風に二人は話を展開してしまう。一方で私と曙は何も言わずにただ俯いている。顔が熱い。
「…さて、お二人のケッコンはなかなかイレギュラーですが、順調ですか?」
「なっ何聞いてんのよクソ提督!」
「おかげさまで順調よ。最近は曙から…」
「あんたも勝手なこと言ってんじゃないわよ!」
三人で仲良く言い合うせいで、せっかく静かな時間を満喫していたのにそれも終わってしまう。それに、同じ空間にいるのに疎外感を感じて寂しい。
「…もうちょっとだけ、静かにして欲しい。」
「あ、ごめん。」
「曙、少し声を抑えてください。」
「なっ…に言ってんのよ。」
「おお。よく抑えましたねあなた。」
「ったりまえでしょ。霞怒らせたら怖いのよ?」
「聞こえてるわよ。」
…まあ、こんな風に騒がしいのも悪くはない。でも、あまり大声を出すと他の子が起きてしまいそうだから、そこは不安。突然、ガタガタと何かが揺れ始める。
「…ん?この音、なに?」
「さあ。わかりません。妖精さんがなにかしているのでは?」
そして、今度は何かを巻き上げるようなキリキリという音が上の方から聞こえる。
「ほんとに変な音ね。」
「…流石におかしいですね。まあ、様子は見てみましょう。大丈夫。鎧袖一触よ。」
すると、風呂場を照らしていた明かりが消え、一瞬で真っ暗闇になる。
「しっ、しれ、か…くっくら、くらい…」
「おおお落ち着きなさい霞。ちょっと暗くなっただけよ問題ないわ。」
「…クソ提督はどう思う?」
「妖精さんの悪戯かと。」
そうか。今抱きついたのは加賀か。どうりで随分柔らかいと思った。けれど、抱きつく分には不安はないし、司令官とは別の意味で包まれているから怖くはない。
「っぴ!?」
「がっががが鎧袖一触ででででで」
またさっきのようなキリキリ巻き上げる音がして、思わず声が上擦って変な音が出る。
「しっしれいか、こわい、」
「がががが」
【どーですか!夜中お楽しみの皆さんだけが味わうことのできるように、妖精一同で作り上げた開く天井です!】
「ぴぁっ!?お、おばけ!?」
「そそそんなひ加賀く的なものがあるわけななな」
怖すぎる。どこからともなく高い声が聞こえて、温かいのに冷えるような恐ろしさがある。
【…余計でしたか?】
「いえ。これは風情があっていいんじゃないですか?酒でもあれば…」
「あんた呑めないんでしょ?ま、いい景色なのは同感だけど。」
「しっしししれ、しれいか、たひゅけ、」
「だめです霞離れてはいけませんっ!」
「あの二人はどうする?」
「面白そうなのでこのまま見ておきましょう。あ、妖精さんたちには明日、お礼にお菓子をあげましょう。」
【ほんとですかぁ!いやぁ、いろんなところから材料を集めるのに苦労しました!】
「いろんなところ?それってどこよ。」
【皆さんのお部屋を経由してスクラップなどからいろいろと!資材を使うのは勿体無いですから!】
「スクラップでこんなに立派なものを。素晴らしいですね。」