一度編成を組みなおし、改めて再開することとなったようだ。霞のいる方は少数精鋭。曙と加賀、更に瑞鶴と長門、5人だけだが十分な戦力が整っている。向こう側は大和を旗艦とし、残りの9人でやるらしい。流石に霞達と言えど厳しいのではないだろうか。
「あらまあ、随分偏りのある艦隊ですね。」
「間宮さん?珍しいですね。何かご用ですか?」
「いえ…今日は大本営に向かう日ですから。お昼ご飯は伊良湖ちゃんにお任せしていますから。」
「なるほど。では、お気をつけて。」
彼女を見送り、改めて演習を見守る。ちょうど始まったらしく、艦載機が飛び交っている。霞の方はあちらに比べて艦載機の数は段違いで、きっと制空権は勝ち取っているだろう。たとえ荒潮と青葉が対空特化の装備であっても、結果は変わらないだろう。
「姉さま…」
「私、しっかりなさい…」
山城の二人もしっかり見届けるつもりらしい。こちらとしてはどちらが勝っても成長が見込めると思っているが、やはり実力の低い方が勝ってくれた方がうれしくはある。
「扶桑も山城もいい艦です。あなたたちも知っているはずですがね。」
「それはそうですけど…」
「なら、息の詰まる思いで見るのではなく、ゆっくりと落ち着くことも大切です。もしかしたら彼女らに緊張が伝わってしまうかもしれませんしね。」
少し複雑そうな顔はされたものの、深呼吸を何度か繰り返し、何かを決意したように海に目を向けた。
【提督さん、伝言です。柳田さんがこちらに向かってくるみたいです。】
「そうですか。報告ありがとうございます。来た時にまた言ってください。迎えに行きますから。」
【了解です!】
ピシッと綺麗な敬礼を済ませ、どこかへふらっと飛んで行く。妖精とは実に不思議な存在である。と、こんなやりとりをしていると見逃してしまう。皆の奮闘を目に焼き付けなければ。
「長門は金剛や伊勢たちをお願い。砲撃が厄介だから速攻で機能停止させて。加賀と瑞鶴は艦載機で上手くばらけさせて。ま、その時に爆撃でもかましてくれれば言うことないわ。」
「了解した。」
「…そうですか。」
「おっけー。じゃ、早速やっちゃいますか!第一次攻撃隊、発艦!」
「曙、何をしてもいいから二人は落として欲しい。取りこぼしたやつは私が持って行くから。」
「そう、じゃあ海上のことは任せたわよ。」
そう言って、海の中へ潜っていった。やっぱり脅威として大きいのは曙の神出鬼没な魚雷と長門の火力が大きいはず。さらに制空権をこちらが持っているからあちらも思うように攻めにくい。隊列を乱しての戦闘は危険極まりないけれど、今回に限って言えば乱さないと勝てない。と言うか、馬鹿正直にみんなで列をなして戦闘していれば、蜂の巣になって終わり。数としてはあちらが圧倒的に多いわけだから、こちらが一人で何人かを相手する必要がある。私や曙、加賀なら十分できるし、長門も出張の時の話が本当であれば難しくはない。ただ瑞鶴に限って言えば、加賀や曙の近くにいてもらいたい。一人だけこう言う経験がないのはそれだけで弱点となる。
「あらあら…霞ちゃん、考え事かしら?」
「っと…危ないわね。でも、姉さん一人で私に勝てると思ってるの?」
「あらぁ…慢心は、だめよぉ?それに、ちゃんと電探で確認しないと。」
もちろん、姉さん一人で来ているわけではないことはわかっている。こういうのは、なんとなく言ってみたかった。反応的には青葉が裏に回り込もうとしている。確かに戦闘の仕方的にこれは十分効果的だと思う。
「まあ、これが私じゃなければ勝てたんじゃない?」
艤装を停止させ、海に沈む。直前の姉さんの顔はよく見えなかったけれど、相当驚いていたように見えた。だって、姉さんの目には私は一瞬で消えてしまったようにしか見えないのだから。
「…あらあら。びっくりしちゃったあ。でも、対策ができてないわけじゃないわぁ。」
すぐ後、艤装を再起動して、海を進もうとする。しかし、何かが投げ込まれる。爆雷か。もしかしたら、わたし一人と他六人で演習した時のことを覚えているのかもしれない。曙に対して爆雷で対処したことを、今まさに私にされている。
(少しまずいかも。)
速力を上げ、とにかくその場から離れる。爆雷が作動したことによる衝撃は思いのほか強く、直撃は免れたものの小破程度の傷は負ってしまった。ここで負けるのは、かなり癪だ。青葉から放たれたであろう魚雷を避け、こちらも二つの影に打ち込む。かなり見え辛く、速度もあるので避けるのは困難なはず。
「青葉さん…油断はだめよぉ?」
「もちろんです!」
後、3…2…1…
「っ!避けて!」
「っえ!?」
海上に勢いよく飛び出した魚雷が派手な爆発を起こす。振動が海の中まで響き、少し頭が痛くなる。呼吸のため浮上すると、二人が膝をついていた。判定は中破なものの、疲労としては計り知れない。
「どうかしら。」
「…まだ、元気いっぱいよぉ?」
「それに、顔を出したのは誤算でしたね…」
「扶桑ね?今、後ろから私を狙ってる。長門が抑えてるはずだけど、一基だけはずっと私に照準があってる。潜水した時もずっと。で、今手負いの私が都合よく全身を見せてる。こんなの…打つしかないわよね?」
一個だけ明確な殺意を持って打ち込まれた音を聞き、上体を逸らして避ける。水柱が上がり、二人が顔を背ける。そのタイミングで主砲を打ち込めば、二人とも大破する。そして、打ち込んだ扶桑はほんの少しだけ隙が生まれる。そこを狩れない長門ではないだろうという信頼でこの動きはできる。
「二人とも、危ないからはけたほうがいいわよ。」
「…毎回私たちが一番にやられてるわよねぇ。」
「もう少し切り込み方を変えれば何かあるかもしれませんね…」