※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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無我

海中にいるあたしを狙えるやつは、実は結構いる。航空戦艦の伊勢や扶桑、山城なんかは瑞雲を使って無理矢理対潜攻撃を仕掛けてくるし、霞や荒潮も爆雷でもっと的確に対処してくる。

(ま、荒潮が霞の方に流れたのは嬉しい誤算ってとこかしら。)

潜りすぎて肺活量が強化され、最近は数分程度なら問題はないくらいに成長してしまったので、曙型潜水艦になる日も近いのかもしれない。まあ、今はそんなことを考えていたらすぐにやられてしまうだろうけど。

(一旦上がって様子見を…)

ザァッと海を盛り上げながら浮上し、周囲を簡単に見回す。そして、やはりと言えば良いのか、翔鶴の艦載機が勢いよく向かってくる。あれに関してはまだ撃ち落とせる範囲ではあるけれど、それをすると私のことをずっとマークしていた金剛に照準を合わせられているので、対空砲火はできても一発はもらってしまう。息つく暇もないが、一旦潜って回避を…

「そうはいかないな。また潜られるのは面倒だ。」

膝まで沈みかけていた身体を無理矢理引き上げられる。何事かと思い後ろへ振り返ると武蔵だった。

「っ!離しなさいよ!」

「そうか。なら、離してやろう、か!」

一瞬浮遊感を得て、すぐ後に空中に放り出されたことを知る。艦載機の音が近いのにそれはどう頑張っても対抗できない後ろ側にある。爆雷は近すぎて自分も危ない。機銃は潜水のことも考えると搭載できないので今回は装備していない。

「曙っ!」

「加賀さん!?」

ゆっくりと動く視界の中を必死の形相で突っ込んでくる加賀が見えて、一瞬だけ目が合った。けれど、すぐ下の方で主砲を加賀に向ける武蔵がいるから、加賀があたしを見捨てないと二人も一気に失ってしまう。でも、それを伝えようにも口は動いてくれない。無慈悲に大きくなっていくプロペラの音が微妙な心地よさを演出する。

「か…」

背負っている艤装に衝撃が走り、そのせいで痛いくらいに反る。思い切り海に叩きつけられる前に武蔵に受け止められ、そこで意識が切れた。

 

「どう言うつもりかしら。」

「なに、霞の次に危険なんだ。真っ先に戦闘不能にするのが一番だろう。」

「たとえ演習用とはいえ、直撃するなど、危険だと言うことはわからなかったのかしら。」

怒気の籠った言葉が投げられ、しかし挑発するように煽る。練度は負けているが、今この状況においてはこちらが有利だと言うほかないだろう。負傷した曙が抱えられているので、下手な攻撃をすればこちらが盾にする可能性もある。もちろんする気は毛頭ないが、可能性があるだけ、相手は行動しづらい。

「どうした?向かってこないのか?」

「いいえ。曙を返してもらいます。」

ただ真っ直ぐに、一直線に突っ込んでくる。砲撃を当てればひっくり返るのはわかるが、それをしても避けられることはわかっている。だからこそ、こちらはギリギリまで待つ。

「瑞鶴、今よ。」

「ガッテン!」

突然急旋回した加賀の後ろから大量の艦載機が飛び出し、向かってくる。避けるのは容易だが、それは負けたような気がして悔しい。あえて正面から受けてやらねば。

「この武蔵の装甲は、伊達ではない!」

「ええ。わかっています。瑞鶴の練度では、あなたを貫けない。ですが、曙は頂きます。」

再び旋回した加賀にすれ違いざまに腕を引き寄せられ、曙が持っていかれる。まあ、被害を与えたくないからだろう。

「武蔵!避けなさい!」

大和から叫ばれ、しかしこれを避けると何かを失うような気がして、できない。これには、当たらなければいけない。曙にしたように、私もこれを受け、その上でこの海の上に浮かんでいなければいけない。

「大和よ、ここは、譲れない。」

今の私の顔はどうだろうか。大和は今の私をどう見ているだろうか。正面の瑞鶴は少なくとも顔を歪ませ、困惑している。それでいい。戦闘は相手を如何に倒すかではなく、如何に混乱させるか。魚雷が投下され、私も背を向ける。こちらでなければ意味がない。被弾した上で、勝たねば。

「ぐあっ!」

想像以上の威力が全身に広がる。視界が歪み、胴体の感覚が消えた。肩が溶け、脚が柔らかく崩れる。手先が痺れ、上手く呼吸することが難しい。

「…っ!武蔵!武蔵ぃ!」

大和の声も、次第に弱まる。だめだ。ここで倒れては。勝たねば。あの時とは違うのだ。今なら、戦えるのだから。胸がぐつぐつと煮えたぎり、全身から痛みが引いていく。呼吸を無理矢理して、発破をかけるように膝を叩く。多少痺れも残るが、立てはする。

「…ふむ。なかなかいい一撃…だな。」

「うっそ…まだ立ってんの?」

「流石に大和型。一筋縄ではないのね。」

正直限界だ。今すぐ眠ってしまいたい。だが、大和を置いて消えるなど、この武蔵にある矜持が許さない。加賀を睨み、砲を構える。艤装も動きが悪く、不快な金属音を鳴らす。あちらは射掛け方を変え、瑞鶴のような、どこかおかしな姿勢で、放つ。

「遠慮はしない…撃てぇ!」

「第一、第二主砲、斉射!」

頭に、大和の声が響く。目の前が霞み、何も見えない。加賀はどこだ?瑞鶴は?大和はどうなった?全てがわからないまま、不意に意識は途絶えた。

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