「瑞鶴、大和と武蔵は轟沈判定よ。追撃の必要はないわ。私は曙を…」
「私が…いつ…轟沈判定を…?」
「うわっ!?」
…これは持たない。後数秒もすれば倒れてしばらく起き上がらない。艤装へは直接的な損害がないから沈むことはないけれど、しばらくは気を失うはず。武蔵の砲撃は明後日の方向に飛び、大和は私のことを我武者羅に撃っただけ。掠りもしていないので、ダメージはない。ありったけ艦載機を打ち込んだおかげで超装甲の大和も一撃で終わらせられた。
「さあ、いくわよ瑞鶴。」
「ええ…加賀さん、流石に可哀想じゃ…」
「まって…私は…まだ…」
「大和、あなたの負けよ。大人しく、眠っておかないと、今度こそ本当に轟沈しますよ?」
その言葉を聞いたのか、それともただ気絶しただけか、とりあえずは機能停止した。
「私は、艦載機が戻ってくるまでここにいます。あなたは長門の援護か、翔鶴を狙いなさい。」
「わ、わかった!」
「BIG7のあなたも、この数の戦艦は厳しいんじゃないデスカ?」
「くっ!」
伊勢や山城は少し遠くから狙ってくるが、それを妨害できないように金剛と扶桑が接近戦を仕掛けてくる。速力の差で扶桑には隙をついて攻撃したものの思うように動けず、しかし焦ればその隙を突かれてしまう。私の損害もかなり溜まっているから、早いうち対処しないとまずい。
「長門、加勢するわ。」
「霞か!助かる!」
「あら…二人はもうやられてしまったの?」
「残念ながらそうよ。」
こちらの状況は曙が倒され、逆に向こうは荒潮、青葉、大和、武蔵。若干の数的不利だが、致命的と言うほどのものではない。近距離の二人は霞に任せ、奥の二人へ向かう。
「Hey長門!私は、食らいついたら、離さないわ!」
私に向けられた砲口が爆音を轟かせる。しかしその弾が私に当たることはなかった。
「金剛…残念だけど、あんたの牙は私には遠く及ばないみたいね。」
「…OK。先に霞とケリをつけてあげまショウ。扶桑、あなたは長門を。」
「ええ。任せておいて。」
「あら、あんたのこと、逃すと思った?」
「扶桑姉さま!」
「ダメよ山城。言ってはダメ。ここで長門を相手取れるのは私たちしかいない。それに、扶桑はすごく強いじゃない。加勢なんてなくても、霞に勝てるでしょう?金剛もいるしね。」
「無駄話は、後にしてもらおうか?」
「なら、今夜のお茶会でいくらでも話してあげる。今は戦いましょ?徹底的に倒さなきゃ、勝ちとはいえないもの。」
練度としては私は新参の中でも割と高い方であると自負している。だが、負傷している自分とほぼ無傷の相手二人は動きが違う。
「長門、そろそろ休憩したら?疲れているでしょう?」
「そんなわけ、ないだろう!」
「無理は禁物よ?」
頭上には瑞雲が、前方は伊勢、後方は山城と、逃げ場は殆どない。左右へ避けようにも艤装の都合上膨らんでしまう。直角に曲がるのは今の私には厳しい。
「さあ、どちらか選びなさい!伊勢を撃って私に撃たれるか!私を撃って伊勢に撃たれるか!」
更に、翔鶴の艦載機も唸りを上げて向かってくる。八方塞がり逃げ場なし。どう動こうとよくて差し違えるという結果に変わりはない。正面の伊勢を狙うのが一番丸い選択だが、それは向こうも理解しているだろう。長考はできない。意表を突くために敢えて山城か?だが、それをしても殆ど意味はない。振り向く瞬間に主砲で終わりだ。
「…なるほど。」
「あら、諦めるの?らしくないわね。」
「そうか?私は全然その気はないんだが。」
艤装を全力で稼働させ、正面に斬り込む。主砲を一基ずつ前方と後方の盾にし、最低限の守りを築く。耳鳴りがするほどの轟音を受け、殆ど同時に衝撃も受ける。主砲が衝撃を吸収し、ボロボロにはなったが、私自身へのダメージは少ない。
「…捕まえた。」
伊勢の顔面を捕え、逃げないよう力を込める。戦艦が白兵戦をするのはなんともおかしいが、そんなことを言っている場合ではない。艦載機にそのまま向き直り、伊勢を盾にする。艦載機は蜘蛛の子を散らしたように隊列を乱し、翔鶴の元へ帰っていく。
「随分、卑怯なことをするのね。」
「生憎だが、私も勝ちたいのだ。」
「長門。伊勢を離しなさい。」
山城が主砲を向け、こちらに近づく。残った主砲で山城を狙い、伊勢の砲塔も向ける。可動域を考えれば私の方に向けるのはかなり難しい。今は、私が有利だ。
「…どうして私を倒さないのかしら?」
「決まっている。今お前を撃てば、装填中に山城に攻撃されて終わりだ。まだ、止めは刺さないさ。」
今まさに撃ち込もうとした瞬間、突然脚が崩れた。膝裏に衝撃を受け、思い切り倒れたのだ。
「私を先に倒すべきだったわね。」
「なるほど…作戦負け、か。」
「山城!今よ!」
「わかっているわ。」
胴体ではなく、残った主砲を撃ち抜かれた。攻撃ができないと判断され、艤装妖精から轟沈判定をされた。ここのルールでは攻撃が不可能になるほどの損傷を受けた場合、もしくは動力部が使えないと判断された時に轟沈判定がされる。今回は前者だ。
「ああ。悔しいな。それに、少し疲れた。」
「何言ってるのよ。長い間私たちを一人で押さえ込んでたのよ?」
「そうよ。それに、姉さまに一撃与えていたじゃない。」