「翔鶴姉!」
「あら瑞鶴。単身で来たの?」
「みんな忙しそうだからね!」
パァンと弓が音を上げ、艦載機が放たれる。空中で変化して、旋回しつつ不規則な動きで翔鶴姉に飛んで行く。
「良い動きね…これも、妖精さんたちと探したものなのね…。」
長門に向けて放った艦載機を着艦させて、どこか悲しそうにしながら私の飛ばした艦載機を見る。その顔がものすごく慈愛に満ちた顔で、さらに悲しそうだった。まるでそれに思いを馳せているかのような、懐かしむような目だった。
「…やっぱり翔鶴姉も覚えてるんだよね?」
「なんのことかしら?」
今度はシラを切る。
「私が勝ったら、本当のこと全部話してもらうから!」
「なら、負けるわけにはいかないわね。」
翔鶴姉が、いつも弓道場で見せるような凛とした姿で弓を弾く。そのすぐ後に真っ直ぐに美しく飛び上がった矢が次第に姿を変え、艦載機になる。私とは打って変わってきっちりとした隊列で、少しの乱れもない。
「私は勝つよ!何をしても!」
「なら、私は何をされても負けないわ。」
知ってる。翔鶴姉は私の装備を。今回は25mm連装機銃を積んでいるから対空に感して分があること。そして、その分艦載機同士の純粋な攻撃戦ならあちらに分があること。
「…悪いけど、私はまともにやり合う気はないから。」
翔鶴姉に聞かれないほど小さな声で言う。別に聞かれたって構わないけど、でも抑えた。理由はわからない。どこまでも真っ直ぐな瞳で見つめられ、一瞬の躊躇いが生まれてしまった。でも、やっぱり負けるのは嫌だ。だから、機銃を撃ちながら突き進む。艦載機は一斉に翔鶴姉へ向かい、魚雷を発射する準備を済ませている。
「瑞鶴、申し訳ないけれど、あなたの負けよ。」
「何言って…」
突然視界が回転した。後からじわじわと左半身が痛み、飛行甲板が使い物にならなくなっていた。
「どうもありがとうございます。金剛さん。」
「…本当によかったノ?」
「ええ。私では、この子に勝てませんから。」
空母の中破以上は、即ち艦載機の発着艦が出来なくなると言うこと。それを抜きにしても、左腕の痺れで弓を弾けない。脳がぐらんぐらんと動き回って痛い。
「瑞鶴…?」
ぼんやり聞こえたその声を最後に意識が飛んだ。
「加賀さん…。」
「…やるわね。瑞鶴を倒してしまうなんて。」
「金剛さんのおかげです。では、加賀さん。行きますよ。」
「やりマスカ!」
「残念だけれど、あなたたちは既に私の攻撃を受けています。」
真上から艦載機を飛ばし、相手の意識外から攻撃する。翔鶴と金剛は完全に油断していたから、当たった。
「っ…直上…」
「What…」
「警戒は怠らないことね。では。」