「何故演習なのにあなた以外の全員が数時間規模の入渠が必要になるんですか?」
「みんな全力でやったまでです。MVPは霞ですから安心してください。」
「…まあいいですよ。別に。ただ、柳田君がいますから、霞が復活するまではあなたに秘書艦として着いてきてもらいますよ。」
「仕方ないですね。」
「随分やつれてますけど…何かあったんですか?」
柳田君に心配されているということは、よっぽど酷い顔をしている可能性が高い。
「ああ…まあ、なんでしょうね。加賀以外が全員入渠することになりました。」
「霞もですか?」
「はい。演習で転覆するわ気絶するわ血は出るわ…本当は実弾でも使っていたんじゃないですか?」
「それはありません。妖精さんがしっかり整備してくれたわ。」
突然加賀が立ち上がり、こちらを睨んでくる。あくまで安全な装備を使ったと言うことに間違いはないと言うことか。
「そう言う問題ではなく…はぁ、まあ、入渠で治る傷でよかったですよ、本当に。」
「あー…で、何か用があって来たんですよね?」
「え、ええ。大本営から電報が来まして。全鎮守府の風紀調査をするらしいです。」
「風紀を?」
前までそんなものあっただろうか。基本憲兵の方に任せていたはずだし、それでも殆どの鎮守府は摘発される輩はいなかったと記憶している。
「最近、艦娘への不適切な対応が問題になっているらしく、それを取り締まるとかなんとか。どうせ先輩のことですから、見ていないだろうと思いまして。」
「大正解ですね。花丸をあげますよ。」
「提督…霞に扱かれたのを忘れたんですか?」
「まさか。しっかりはっきり覚えていますよ。」
「それなら少しは…」
扉が壊れんばかりの音を出しながら開き、霞が飛び込んでくる。息が多少上がっていて、汗も滲んでいる。傷は癒えたらしい。
「司令官!」
「霞。入渠はどうしたんです?」
「高速修復材、使ってきた、から…あ、えっと…い、いらっしゃい?」
「ええと…お邪魔しています…?」
あまりに突然の出会いだからかお互いおかしな会話をし、更にそれが噛み合っている。実に面白い。
「霞、一旦落ち着いて。私は曙の様子を見てきます。ですから、提督のそばにいてください。」
「…うん…わかった…。」
それから、自然な足運びで私の膝の上に乗り、直ぐに心地良さそうな寝息を立て始めた。よっぽどの疲労があったと思われるが、こうなるのは初めて演習をした時以来だった。
「…あまりお邪魔するのも悪いですね。今日のところはこれで。」
「もう帰るんですか?」
「ええ。赤城が待っていますから。」
そう言った彼は微笑を浮かべながら部屋を後にした。少し筋肉が小さくなっていたように見えたが、気迫自体は以前より上がっているのに少し疑問もあったが、彼自体は何も変わっていないので安心した。霞の頭を撫でると、無意識に擦り寄られる。