自然に目が覚め、身体を起こす。隣で寝ていた瑞鶴は私の動きに反応したのかゆっくり目を開けた。
「あ、霞。おはよう。」
「ん。おはよう。」
少しぼーっとするけど、急いで着替えないと流石にまずいかもしれない。枕を持ってさっさとこの部屋を出る。
「またあとでね。」
「んー…あとで弓道場来れる?提督さんも一緒でいいからさ。」
「わかった。」
あんまり行ったことはない弓道場は、浸水が酷かったことくらいしか覚えていない。多分もう改善しているはずだけど、どうなっているかはちゃんと見ておきたい。自室に戻っても司令官の姿はなく、ただ布団は綺麗に畳まれているし、書き置きも残っている。既に朝御飯を食べに行ったらしい。さっさと制服を着て食堂に。勝手に急足になるのは不安からかもしれない。
「霞か。廊下は走らない方がいいぞ。」
「ごめん…急いでて…ところで、大和はどうしたの?」
「まだ眠っているだけさ。私は今朝の走り込みが終わったから、ちょうど呼びに行くんだ。」
益々どちらが姉かわからない。武蔵の方が随分しっかりしている。
「そう。じゃあ、また会いましょ。」
「ああ。」
短く言葉を交わし、すぐに解散してしまう。武蔵に気を抜ける時間があるかはわからないけれど、本人がなんとも言わないなら、あまり心配する必要もないだろう。食堂の扉を開けて、軽く見回す。司令官の姿はなく、おそらく既に食べ終えてしまったと思われる。
「あら、霞ちゃん。おはようございます。朝御飯、できてますよ。」
「伊良湖さん…おはようございます。もらってもいいですか?」
今日は珍しく伊良湖さんが話しかけてくる。間宮さんはどこに…?まあ、司令官や伊良湖さんは事情を知っているだろうけど。
「Good moaning霞ー。」
「霞、一緒にどうだ?」
金剛と長門。伊勢は飲み物を取りに行っている。この三人は、結構仲がいい。それこそ毎夜雑談するだけの時間を過ごすほどに。
「いいわよ。ちょっと待ってて。」
二人を適当なところに座らせ、伊良湖さんから料理を受け取る。米。味噌汁。焼き魚。沢庵。こういう食事がやっぱり一番落ち着く。
「珍しいな。霞がこの時間に来るのは。」
「デスネェ。いつも私たちより早いデスカラね。」
「ちょっと寝過ぎちゃっただけよ。」
伊勢が戻るまで適当に時間を潰す。霞は飲み物はいらないと言い、そのまま座った。運んできた食事の量が私や金剛たちの量より随分少ない。本当に足りているのか不安になる。
「ごめんね三人とも。すっかり待たせちゃったみたいね。」
「いや。そんなことはない。」
「待ってないわよ。」
「Thank youネー!」
ついに食事が始まる。金剛は朝食に限っては緑茶を好み、伊勢は一品を集中的に食べる。私は特に順番も比率も決めていないため、よく誰か一品だけが余ることがある。霞は所謂三角食べのような、バランスよく一定に食べ進め、たまに沢庵に手を伸ばす。
「昨日の演習、すごかったわよね。」
「私は一人も倒せなかったがな…」
「何言ってるのよ。長門が長いこと抑え込んでてくれたから私たちが余裕を持って戦えたのよ?」
「Nice toughnessデシタ!」
「そう言ってもらえるとありがたいな。」
「加賀がとっても強くて驚きマシタ。気づいた頃には負けていマシタ…。翔鶴もいたのデスガ、あっという間に…」
「単体なら加賀の方が私より強いのかも。」
「そんなになのか?」
「普通に考えて駆逐と重巡の相手をした後、戦艦三隻と戦って中破止まり。しかもそのうちの戦艦は一隻を残して全て倒しているなあなたの方が強いと思うのだけれど。」
「結局最後まで勝たなきゃ意味ないわ。加賀は無傷だったわけだし。」
「ところで…曙はいつやられてんだ?」
「武蔵に海から引き摺り出されて、翔鶴の艦載機の魚雷に直撃らしいわよ。加賀も相当怒ってた。顔には出してないけど。」
それからも、しばらく演習についての話をした。途中から何故か恋愛の話になり、ケッコンカッコカリをするとどうなんだ、どんな生活をしているんだと霞に質問攻めだった。途中までは頑張った霞だったが、結局顔を真っ赤にして逃げ出してしまった。