「呼ばれて来たが…何があったんだ?」
「いえ…来てくれてありがとうございます。荒潮の第二改装についてなのですが、長門がよく知っていると言われたので。」
扉を開けてすぐ要件を伝える。荒潮は良くも悪くも人に好かれるし、それを最大限利用しようとする。今回の改装はまさにそれが起きている。
「そんなことか。いや何、私が出張した際の報酬にあったんだ。改装設計図が。」
「あなたは使わなくて良かったんですか?」
「ああ。構わん。姉として、妹に遅れを取るのは面白くないだろう?私だって、陸奥がもしここにいれば、きっと対抗心を燃やしているだろうと思った。」
「感謝してるわ〜。」
長門という艦娘は、大体がやけに駆逐艦娘に甘い。というよりは、可愛らしいものに目がないと言った方が正しく、今回の件は、長門にとって荒潮が可愛らしい存在であると認識しているから起こったと見ていい。そして、今はそれほど焦って戦力強化を、それも我先にとするほどでもない。
「…今後は適宜報告をしてくださいよ。出張の報酬だって、私が把握できていないものですし。それに、先方はあなたに使って欲しいと思っていたんじゃないですか?」
「渡されたものを私がどう扱おうが私の勝手だろう。使い道を制限する方がよくないんじゃないのか?」
「それはそうですが…」
「うむ。この件は終わった。どうだ荒潮。演習でも。」
「いいんですかぁ?」
「もちろんだ。どれほど強くなったのか、見せてもらいたい。」
そう言って、さっさと二人とも出ていってしまった。少々勝手はされたが、別に行動を強制したいわけではない。最低限の物事の把握はしておかなければ腐っても鎮守府であるはずの場所を指揮することは難しい。戦力も把握するのは大切だ。
「…霞に会いにでも行きますかね。」
また伸びて来た髪が揺れ、珍しく曇った空に目を向ける。海鳥が数羽飛び立ち、その数秒後に二つ分の艦影が海上を滑っていった。
最近山城…正確には艦娘ではない山城の二人は焦りを感じていた。愛しの姉さまが最近、自分たちのことを蔑ろにしているのではないかと。無論扶桑はそのようなことはしていないのだが、艦娘でなくなってしまった自分たちは、必然的に艦娘の山城とは一緒にいられる時間が違う。演習で連携を取ることも、作戦行動を互いに見直すことも、負った傷を慰め合うこともできない。風呂も部屋も同じだが、先日の演習の後の無力感は辛かった。何もできなかった。
「と、いうわけでどうすれば姉さまのお力になれるかの会議よ。」
「私たちの中でも、私たちを建造した私が一番姉さまと距離が近いわ。」
「この会議、青葉は必要ですか?それに、結構ややこしいんですけど…」
「第三者からの意見も取り入れたいもの。」
こうして、危機感を覚えてしまった山城二人と改二のせいで浮き足立っている青葉ら三人による会議が始まる。
「…ふふ。ねえ山城。あの子たち、楽しそうな事しているわねぇ。」
「ええ、姉さま。」
しかし、それは全て姉である扶桑にはバレているのであった。
「伊勢?一体何を見ているんデスカ?」
「あ、金剛。ほら、そこ。面白そうなことしてるじゃない。勝手にナレーションをつけてみたの。」
「Narration?今日の伊勢は少し変デース。」