「もう出ますよ私は。霞はどうします?」
「私はまだもうちょっと…」
「そうですか。では。」
腰にタオルを巻いて扉へ向かう司令官を眺めていると、突然魚雷のような勢いで何かが突っ込んできた。その衝撃で吹っ飛んだ司令官は床に倒れ、勢いの正体である金剛が司令官に馬乗りになっていた。
「Heyテートクー!ドーデスカ!新しくなった私は!」
「…また後で見せてもらいますから早く退いてもらってもいいですか?」
「もう金剛った、ら…?」
「少しは落ち着きを…」
金剛の後から入ってきた二人が注意しようとしたところ、なぜか金剛の背中の少し下あたりを注視している。
「霞は行かなくていいの?」
「金剛ってああいう子だし。今更怒ってもどうしようもないわ。」
「そうじゃないと思いますよ?」
「?よくわかんないけどいいの。ね、瑞鶴、膝かしてよ。」
「別にいいよ。」
瑞鶴はなんとなく司令官に似ているから、膝に座ると結構しっくりる。それに、優しく撫でてくれるから安心する。司令官以外では瑞鶴が一番いい。あと、司令官に唯一優っている点は、頭を置く位置が胸元だから柔らかいということ。
「提督…前を隠してもらえるとありがたいんだが…」
「待って長門。もう少し観察…」
「私は食らいついたら、離さないワ!」
「邪魔だと言っているでしょうが。いい加減退かないと怒りますよ。」
顔を真っ赤にする長門と、しゃがみ込んでわざわざ見続ける伊勢。状況を知らずにまだ馬乗りになる金剛と、そろそろ苦しそうな司令官。
「あらあら…じゃあ手助け、してくるわぁ。」
姉さんが髪を束ねて湯船から上がった。ゆっくり司令官の方へと歩き、金剛を立たせて、腰にタオルを被せた。
「どうも。」
「いいえ〜。」
一瞬、姉さんも司令官の腰に目を見開いていたけれど、すぐに帰ってきた。残った三人は各々体を洗い始めた。
「霞ちゃんってすごいのね〜…」
湯船に入り直して開口一番意味不明なことを言われる。何がすごいと言うのか。
「ねえ荒潮、どんくらい?」
「…言えないわねぇ。」
「っかぁー。こりゃ相当なモノこさえてたんだ。顔真っ赤だし。」
いつも余裕を持ったふうにしている姉さんがなんだかしおらしく見える。本当に何を見たのか。ふと、青葉が視界に入った。青葉は翔鶴に狙いを定めていて、頭を撫でてもらっていた。
「霞はさ、私のことどう思う?」
「瑞鶴は瑞鶴よ。」
「違う違う。どれくらい信用をおいてくれてる?」
「えっと…」
正直結構気に入ってる。でも本人にそのまま直接伝えるのも気恥ずかしいし、少しぼかそう。
「頼りにしてるってとこかしらね。変なことを言わなければだけど。」
「へぇ〜。そっか〜。んふふ。」
何だか嬉しそうで、わしゃわしゃと頭を無造作に撫でてくる。わ、と声が漏れ、くしゃくしゃになった髪を直すようにまた撫でられる。
「いつの間にあんな仲良くなったのかしら。」
「さあ。曙と私も、案外似たようなものかも知れませんよ。いつの間にかあなたと…」
「絶対違うわ。」