「重巡軽巡たちはやはりおとなしい人が多かったですね。ただ、酒を今の時間から飲むのは控えてほしいとも思いますが…。そこは彼の仕事ですから。私はここに来れただけで満足です。」
「そうなんだ。提督もう帰っちゃうんだね。」
「はい。今の私はここにいるべき人間ではありませんから。それに、恐らくはもうここにくることもないでしょう。なかなか楽しかったですよ。島風もここで頑張ってください。私は首を切られない程度には頑張りますので。」
「最低限じゃん…。まあいいけどね。じゃあ、またね。」
「ええ。また会いましょう。」
島風に別れを告げ、執務室へ向かう。
「どうも。今日は久しぶりに楽しかったですよ。ただ、昼から酒盛りをしている子たちをどうにかしてあげてください。」
「そんなことが…よく言っておくよ。」
その後、見て回って感じたこと、改善点などを諸々伝え、呉鎮守府を後にする。
「本日はどうも。なかなか面白かったです。」
「こちらこそ。自由に見て回れる人間が、その所感を教えてくれたんだ。しかも、艦娘に詳しい人間がな。こちらにとってもいい体験だった。車を手配してあるから、それに乗って帰るといい。」
「気を使わせて申し訳ないですね。お礼に接吻でもどうです?」
「あんたの今の格好じゃ冗談になってない。それに、俺はそう言う軟派なことは嫌いなんだ。」
「揶揄っただけですが、その反応を見るに、彼女らを任せても安心ですね。では今度こそ帰りますよ。」
彼は黙って敬礼で見送ってくれた。車の窓から見る太陽は、すでに水平線の下へと潜り始めていた。
「ただ今戻りました。」
「おかえり司令官。今日は遅いし、ちゃっちゃとお風呂入っちゃうわよ。ほら、それ外して。」
「結構楽しかったですが…やはりここが一番な気がしますね。前はあそこ以外考えられなかったのに。」
「それだけ今が楽しいってことじゃない?」
風呂の準備をしながら霞と話していると、安心しているのか肩が軽くなったようである。
「あなたの髪って結構綺麗よね。癖がないって言うか。」
「自分ではあまりわからないですね。悪い気はしません。」
「しっかり褒めてるから。ほら、髪流して。」
温かい風呂の中では、今日のことをゆっくりと振り返っている。門の前で吹雪に出会い、次は弓道場で麻雀をし、時雨と再会して、私が原因で倒れて、向こうの霞といくつか会話して、重巡軽巡たちが酒盛りをして、思い返した中でも時雨のことがとても重くのしかかる。さらに、島風はあの時、他にもいると言っていた。もしかしたら、その子たちに出会えなかっただけで、実はたくさんいたのではないか。そして、その子たちは私に対して何か言いたいこと、伝えたいことがあったのではないか。
「何下向いてるのよ。向こうで思うことでもあった?全部話してみなさいな。」
「…これは言えません。いくらあなたでも。第一、もう私が手を出して解決できるものではありません。むしろ、私が手を出すことによってさらに混乱を招く可能性があります。このことは、気にしないでほしいです。」
「…わかったわ。」
「すみませんね。わざわざ気遣ってくれたのに。」
「いいのよ。別に気にしてないから。」
間宮さんのところで晩御飯を食べ、自室へ戻る。布団の上には、なぜか曙が座っていた。
「曙?なぜこんなところに?」
「別に、ただちょっとあんたが疲れてそうだったから。」
「霞にもし見つかったら2人とも説教ですよ?」
「話はしてあるから大丈夫よ。」
「流石ですね。でも、大丈夫です。」
そう言って曙を帰らせようとする。
「私、今日は帰んないわよ。」
「何故?」
「ただの気まぐれよ。別に深い理由はない。だから、今日はもう寝ちゃいましょ?」
「私は清いお付き合いがしたいんです。そういうのはちょっと…」
「変なこと考えてんじゃないわよクソ提督。ほら、早く来なさいよ。」
「仕方ないですね…。」