※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

278 / 278
姉妹

「へえ、曙もいるんだね。」

「今は出払っていますが、元気にしていますよ。」

「霞のその指輪、司令官から貰ったの?加賀さんもつけてるけど。」

「そう。でも、加賀のは曙から。」

廊下を歩きながら、他愛もない会話を続ける。最上は曙のことをよく知っているらしく、懐かしそうにうんうんと頷いている。朝雲姉さんは最上と同じ艦隊に所属していたからか、結構距離が近い。

「…ね、もしかして加賀さんと曙って…」

「そう、夫婦みたいな関係ね。」

「夫婦…良い響きですが、字面がおかしいです。夫はいませんから。」

「哀愁漂う言葉だね!」

じゃあどう呼ぶべきだろう。カップルという安っぽい言葉は似合わない。なんだか難しい問題だから、ここでどうこう話しても結論は出せなさそう。

「じゃ、霞と司令官はしっかり夫婦ってことね。」

「そう…だけど…」

「もー、照れちゃって。」

無造作に頭を撫でられて、一瞬混乱する。だって、突然姉からそんなこと言われたらむず痒い。顔も熱いし、手汗も滲んでいるのがわかる。

「妖精さんが言うには、金剛の部屋にあなたたちの探している方が居るそうです。…霞も行ってみては。」

「加賀は?」

「もうしばらくすれば、曙も帰ってくると思いますから。出迎えをしに行きます。」

そう言って、正面玄関の方に歩いて行った。心なしか足取りは軽く見えた。

「加賀さんかっこいいなあ。僕もあんなふうにクールに決めたいよね。」

「最上には難しいんじゃない?」

「む、何さ。きっと僕だってなれるよ!」

「はい、そこまで。早く金剛の部屋に行くわよ。」

「「はーい。」」

まったく…素直なのかそうでないのかわからない。それに、道中聞いた限りでは他にも西村艦隊の人もがいるらしい。もしかしたら…

 

「満潮はとってもキュートネー。」

「…お世辞言っても何もしないわよ。」

「そう言うつもりじゃないと思うわよ?」

「あらあら。」

満潮は、伊勢や金剛に人気だった。山雲は静かに笑いながら、荒潮の隣に座っている。眼福というやつだ。駆逐艦の笑顔は、やはり素晴らしい。

「長門もそう思うヨネー?」

「む、ああ。そうだな。」

「…なんなのよ。意味わかんない。」

金剛はやけに満潮に構おうとする。髪型のことで親近感でも湧いたのだろうか。いじけている姿が可愛らしいから問題はない。

「長門さんは〜、荒潮姉と〜、仲良しさんですか〜?」

「もちろん。」

「そうね〜。今日も一緒にみんなを迎えに行ったものね〜。」

紅茶と茶菓子の香りの中で、何にせよ全員が笑い合える空間となっているのは、大変喜ばしい。似たような景色が、恐らくはあの街でも見ることができると思うと、胸が躍る。

『金剛、入るわよ。』

突然扉がノックされ、向こうから霞の声が聞こえた。声色は落ち着きがあるが、しかしどこか弾むような軽やかさを感じた。

「ドウゾ。鍵は空いていマスヨ。」

キ…と僅かにドアの軋む音を抜けて霞と最上、そして朝雲が入室した。

「山ちゃん!」

「朝ちゃんも来たのね〜。」

「もー。みんなはぐれちゃったから心配したよ。」

西村艦隊の面々は、やはり繋がりが他より強く思える。邂逅した際には、全員が嬉しそうに抱き合っていたのは、そういうことだったらしい。そして、霞は満潮の方をじっと見つめて、満潮はそんな霞を不思議そうに見ている。

「満潮ちゃん、霞ちゃんがお話ししたいみたいよ〜。」

「えっ…あ、そうじゃない…けど…その、私行くところがあるから…」

そのまま駆け足気味で逃げるように行ってしまった。霞は人見知りが激しい。例え姉でも、緊張すると途端にダメになる。しかし、そんなところも可愛らしい。

「…なんなのよあの子。」

「きっと恥ずかしがってるのよ〜。」

「サア満潮!Let's goデース!」

「え!?はぁ!?」

「バイバイネー。」

と、荒潮と金剛に背を押され、なし崩し的に部屋を追い出された。まあ、霞はまだそれほど遠くに行ってないだろう。案外、ドアのすぐ横でうずくまっていたりするかもしれない。

 

「…行くところって、まさかこのドアのすぐ横?」

「えっと…その…」

私の目に映る小さくかがみ込んでいる霞は、私の知っているあの子とは全然違う。もっとガツガツ踏み込んでくるような、自分にも周りにも厳しい子だった。…左手薬指を見る限り、外的要因でその考え方が改まったと考えるのが一番早そう。

「大丈夫。別に怒ってないから。ゆっくり話しなさい。」

「…ありがとう。」

ああもう。世話の焼ける子。でも、悪い気はしない。

「…会いたかった。」

「私も。会いたくないなんて、あるわけないじゃない。」

「でも…会ってみたら何を言えばいいかわかんなくて…」

「だからって逃げることないでしょうに。しっかり目を見て話してくれれば、私だって邪険にはしないわ。」

「うん…」

くすんくすんと静かに泣く妹は、末っ子らしい幼さがある。背中を摩ってあげると、少し落ち着いたのか肩の震えは小さくなる。

「どう?話す気になった?」

小さく頷いて、ちょっとだけ顔を上げる。私の顔をじっくり確認して、きゅっと抱きしめられた。

「ちょ…」

「大好き。」

「ん…もう。何言ってんのよ。」

私の肩に頭を擦り付けながら言われると、なんとなくやりづらい。それに、後ろの方から不穏な視線が…

「霞…?」

声的に、司令官だと思う。多分…というか、十中八九霞に指輪を渡した張本人。妙なタイミングで出会した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【R18】『神符大戦 ──世界大会決勝で負けて底辺に堕ちた男、TCGの勝敗が全てを決める異世界で美少女達を調教しながら盤面制圧を目指す──』(作者:シキセ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

「カードゲームで勝てば、世界が、権力が、あるいは至高の美少女(カード)が俺のモノになる」▼TCG『神符大戦』の世界大会決勝であと一歩で敗れ去り、底辺に堕ちた男が、カードの勝敗がすべてを決める異世界で無双する、ダーク・カードバトルファンタジー!▼【あらすじ】▼現実世界でブラック企業に使い捨てられ、人生を賭けたTCG『神符大戦』の世界大会決勝ではあと一歩で敗れ去…


総合評価:624/評価:8.33/連載:118話/更新日時:2026年08月25日(火) 12:00 小説情報

提督に転職したら想像以上にブラックだった件(作者:Sh1Gr3)(原作:艦隊これくしょん)

ごく普通のサラリーマンから【提督】に転職した男が、慣れない業務と想像よりもブラックな環境に四苦八苦しながらも、なんとか頑張っていくお話の予定。▼※しっくりこないのでタイトル変えました。ご容赦ください。▼前タイトル:転職先がブラック鎮守府だった件


総合評価:3142/評価:8.52/連載:41話/更新日時:2026年07月12日(日) 18:02 小説情報

【R18】のび太になってしまった私(作者:六本線)(原作:ドラえもん)

昼寝から目覚めた瞬間、知らない天井と縮んだ身体。▼そして目の前には――青い猫型ロボット、ドラえもん。▼自分は成人男性のはずなのに、どう見ても“のび太”の身体に入っている。▼混乱しながらもドラえもんに事情を説明すると、どうやら未来の道具「入れ替えロープ」が暴走したらしいことが判明する。▼ドラえもんは原因究明のため未来へ向かうが、なぜか戻ってこない。▼残された“…


総合評価:1232/評価:8.54/完結:10話/更新日時:2026年08月30日(日) 13:00 小説情報

【R18】ポケモン世界に転生したらハーレムができていた件(作者:天野蒼夜)(原作:ポケットモンスター)

男は車に轢かれそうになった子供を庇ったことで命を落とした。男は特典によってポケモントレーナー“レム”としてポケモン世界に転生することになるが、事あるごとに女の子と出会いを重ねた末、ひとつ屋根の下で暮らすことに!?▼男1人に女の子複数、これはどう見ても男が一度は夢見るハーレムそのもの。そんな状況で何も起こらないわけなく……レムは女の子達とエッチな第2の人生を送…


総合評価:421/評価:8.4/連載:14話/更新日時:2026年09月25日(金) 05:50 小説情報

離島鎮守府再建記(作者:フェレッ党)(原作:艦隊これくしょん)

庁舎全壊、人員ゼロ、艦娘ゼロ、物資少々、食料ほぼなし。▼離島の鎮守府に着任した艦娘提督の新任少尉に突きつけられる現実。▼そんな中で襲い来る深海棲艦。一縷の望みをかけた高速建造の結果、現れたのは――▼これは、1人と1隻から始まる、鎮守府を建て直す物語。▼


総合評価:2840/評価:8.79/連載:52話/更新日時:2026年09月13日(日) 22:29 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>