「ねえ山城。そろそろ話してもらえないかな?」
「…何をよ。」
「何って…僕に、いや。僕たちに隠していることがあるんじゃないかな?」
「…勘がいいのね。いいわ。時雨にだけよ。」
「うん。大丈夫。秘密は守るよ。」
それで、一応隠していたはずの、私二人がこの鎮守府を離れることを伝えた。他の艦娘とはあまり関わりはなかったけれど、それでも私たちにとっては離れ難い存在となっていたことや、時が経つにつれ二人の苦悩が増えて行ったことなど、ほとんどを話した。その間、時雨はただ黙って、時々相槌を打つ以外には何も反応を示さなかった。
「はい、もうおしまいよ。これ以上は何もないわ。」
「ありがとう。話してくれて。」
時雨の反応は、実に淡白だった。それもそのはず、この子と二人が出会ってまだ数十分程度しか経っていないから。この言葉は、ある種必然のようなもの。私が時雨の立場なら、きっと同じような反応をしていたはず。
「僕は、その話には何も口出ししないし、できない。二人が一生懸命考えて出した結論に、横から口を出すようなこと、したくない。だからさ、山城。二人が出ていくまでに、たくさん思い出をつくろうよ。ね?」
「…生意気ね。」
本当に生意気。でも、その心遣いをしてくれるのは、ありがたい。これほどの言葉を使えるとは、正直思っていなかった。時雨の表情は、口角を上げて薄く瞳を覗かせる。
「大丈夫。止まない雨はないさ。」
「麻雀…ね。」
「曙?どうかしたの?」
「ん、いや。なんでもない。」
「なんでもないってことはないでしょ?」
つい先ほどまで服を見ていた翔鶴が、いつの間にかあたしのすぐ横に来ていたのには驚いた。隠密性能はそんなに高かった記憶はない。
「…これよ。」
「麻雀…興味があるの?」
「まあね。値段も変えないって程じゃないから。」
「なら買ってみるのもありだと思うわよ。私だって、打てないわけじゃないから。」
「…じゃあ買ってくる。」
楽しみというか、なかなか面白そうなものだと、前に本で読んだ。心理戦というか、駆け引きというか…興味が惹かれた。あの漫画は、絵柄は特徴的だったけど、主人公の勝ち方はなかなか痺れた。最後の自分の血を賭けた勝負は、長かった割に見入ってしまった。それくらい、魅力的に見えたということだと思う。
「ん、お待たせ。」
「じゃあ、あなたの煙草を買って帰りましょう。」
「…先に買っても良かったんじゃないの?」
「買い方がわからなくて…」
「…そうよね。そりゃあそうだわ。」
結局手荷物はさっきの麻雀牌と翔鶴が購入した冬に使うであろう防寒着だけ。確かに少し肌寒くはなってきたけれど、少し早い気もする。
「ねえ、何を買ったの?煙草にも種類があるんでしょう?」
「ハイライトってやつ。」
つくづく、影響を受けやすいなと思う。